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2009年12月16日 (水)

航空労組

古い話で申し訳ありませんが、今年の夏のある日、銀座の真ん中で怪しい方々を拝見しました。

Koukuurouso
ちょうど、街宣活動終了の所に出くわしたため、写真は撤収中のものです。
「憲法9条を守り安全な空を!」だそうです。
実施していたのは、航空労組連絡会。
イラン・イラク戦争の最中、テヘランの在留邦人の危機に際して、チャーター機の運行に反対した方々ですね。(この時、トルコが国営のトルコ航空を使って日本人の輸送をしてくれた話は有名です。)

アジは終わりの挨拶しか聞けませんでしたが、配っていたビラはゲットしました。
Img_4728
片面は、「憲法9条を守って平和な社会を」というタイトルで、内容はステロタイプな主張なので省略します。
推して知るべしです。

Img_4725
その裏はちょっと注目です。
「テロを招く民間航空の軍事利用反対」とあります。
小項目が3点
「迷彩服で自衛隊が民間機に搭乗」
「軍事利用の既成事実を重ねる防衛省」
「平和あっての航空産業」

まず最初の「迷彩服で自衛隊が民間機に搭乗」ですが、イラク派遣の帰国時や海賊対処のためジプチに移動する際などに、自衛隊員の輸送のため、日本航空がチャーター便を飛ばせたことが書かれています。そしてその際に、隊員が迷彩服を着用していたことを問題視しています。
問題の部分を転載すると次の通りです。
「自衛隊が迷彩服を着用して搭乗すると言うのは、まさしく民間機の軍事利用に他なりません。民間機の軍事利用は、国際民間航空条約に違反し、安全運行に関する条約の保護を受けられず、テロ攻撃などの危険性にさらされます。」
テロリストが条約に縛られる訳ないだろ!、と言いたいところですが、それは置いておいて、この主張が誤っている点を書いておきます。
国際民間航空条約(通称シカゴ条約、この条約に基づき国際民間航空機関ICAOが設置されている。)には、第35条(貨物の制限)に軍需品又は軍用器材を運送してはならないと記載されています。この点で、確かに民間機の軍事利用は規制されています。
しかし、条約のどこにも軍人を運んではいけないとは書かれていません。

迷彩服を着ようが制服を着ようが、自衛官が民間機に搭乗してもなんら問題はないのです。
それをあたかも条約違反であるかのように、レトリックを弄して主張しています。
自衛官(軍人)の輸送は、条約で言う民間機の軍事利用ではありませんが、さもそれに該当するかのように思わせる文章として書いているのです。

それに、自衛官が搭乗していれば、たしかにテロリストが狙う動機は高まるかもしれませんが、テロが行われる可能性はむしろ低下するでしょう。
今や陸自は言うに及ばす、航空自衛官でも全員が徒手格闘という自衛隊流の格闘術を訓練しています。迷彩服がぞろぞろ乗り込んでいたら、ハイジャックを計画しているテロリストが搭乗していても、計画を断念するでしょう。

次の「軍事利用の既成事実を重ねる防衛省」には、「民間機を利用する自衛隊の一連の行動は、民間航空の軍事利用の既成事実を積み上げ、なし崩しに拡大しようとする意図が見えます。」と書かれています。
自衛隊が民間機を利用する理由は、自前で輸送機を飛ばすより安いからですが、そこに迷彩服や制服で搭乗する理由には、確かに自衛隊が活動していることを国民に知らしめたいという考えはあります。
私は、迷彩服で搭乗したことはありませんが、制服での搭乗は何度もしました。その際も、やはり制服を見せることで広報の一環にしようという指揮官の意図はありました。
正直な所を言うと、制服や迷彩服など、一目で自衛官とわかる格好だと、いつも人目を気にせねばならず、隊員とすると結構キツイものがあります。

最後の「平和あっての航空産業」には、憲法9条の改正により、日本の民間機もテロの対象となりかねないと書かれています。
一般の搭乗者の不安をかき立て、9条護持の方向に持って行きたいということは容易に見て取れますが、9条を維持すれば民間機がテロの対象にならずに済むなぞ、テロや防衛問題に詳しくなくとも分かる話です。
飛躍した論理にどれだけの人が賛同するというのでしょうか。

労組は何処も同じような考えなのかもしれませんが、こんな考えの方が航空産業界に巣食っているようでは、やはり在外邦人の輸送は自衛隊にさせるつもりでないとまずそうです。

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コメント

こいつらですか、救援機を飛ばさせなかったのは。
せっかく元自衛官の機長が手をあげたのに、寸前で労組(複数)のどれかが反対して、ぽしゃったんですよね。

当時、うちの会社はイラン、イラクを含む中近東に30人近く出張させてたと記憶します。
イラン組(6人かな)は、結局、陸路でトルコ国境を渡ったそうです。
台湾も韓国も特別機を飛ばす中、キャンプで肩身が狭かったと言ってました。酒席の話ですが(笑

わたしは、日航がナショナルフラッグとは思いません。鶴のマークも変えちゃったし。
今回、税金を投入したら、あの頃反対した連中の企業年金に回るのだと思うと不愉快です。

>やはり在外邦人の輸送は自衛隊にさせるつもりでないとまずそうです。
はい。
わたしが乗ってたら、たとえ落ちたとしても諦めがつきますね。

肩身が狭いというか、情けなかったんでしょうね。
今の日本の繁栄に、国外のそれも過酷な土地で活躍しているビジネスマンがどれだけ貢献していて、非常時に彼らをどう遇するか、ということに関して国民が無関心すぎることも問題なんでしょう。

日航の経営危機の原因は良く知りませんが、組合のせいもあるみたいですし、私も、安易な税金投入は支持されないと思います。

いつも大変興味深く記事を拝見させていただいております。学生時代に国際政治学を専攻し、今も安全保障問題に興味があります。実は私も航空会社の社員でして、乗員組合の組合員です(日本航空ではありませんが笑)
航空労組などの団体がこうした主張を繰り返すたびに、私自身大変恥ずかしく、残念な思いにとらわれてなりません。実態を申し上げますと、近年少なくとも私が勤務している航空会社内の乗組には政治色はほぼ皆無(日本航空は分かりませんが)です。中にはそういう方もいらっしゃいますが、少数派ではあります。こうした偏った考えの方は主流派ではないことをお伝えしたく投稿させて頂きました。
数多さんのブログ記事は、実際に実務を経験された視点大変興味深くいつも楽しみにしております。

でゅーく 様
日教組も地盤沈下が激しいとのことですし、航空業界も労組は政治色を薄めているでしょうね。
冷戦時代と違って、ロシアから資金提供もなくなっているでしょうし。

今後とも宜しくお願いします。

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