概算要求の変更点
民主党政権下での防衛省概算要求の変化について見てみます。
なお、つい先日まで、新概算要求のポイントに併記する形で、旧概算要求資料も公開されていましたが、そちらは既に削除されてしまってます
分かり易い数字として、両者における主要な装備品の調達数で、変化のあった部分を拾ってみると、次の通りです。
(防衛省公開資料の記載順)
UH-60JA 5機→3機
P-1 2機→1機
SH-60K 5機→4機
MCH-101 2機→1機
F-15近代化改修 4機→2機
F-15自己防御能力の向上 4機→2機
F-2空対空戦闘能力の向上(機体改修) 4機→1機
音響測定艦(AOS) 1隻→0隻
91式携帯地対空誘導弾(B) 30セット→22セット
01式軽対戦車誘導弾 100セット→39セット
ペトリオット・システム改修(LS改修) 6式→0式
12.7mm重機関銃 128丁→126丁
新戦車 58両→16両
96式装輪装甲車 19両→17両
軽装甲機動車(空自) 40両→26両
基本的に、軒並み減っている感じですが、項目として消えたものは音響測定艦くらいです。
音響測定艦が消えたことは中国配慮のようにも見え、非常に嫌な感じです。
また、陸自に関して見ると、新戦車や対戦車誘導弾が大幅に減り、機甲戦能力については大鉈が振られた感じです。
逆に、変化のなかったものを拾って見ます。
OH-1 4機
CH-47JA 2機
新練習ヘリコプター 1機
T-5 4機
TH-135 3機
F-2空対空戦闘能力の向上(レーダー改修) 28機
F-2へのJDAM機能の追加 35機
CH-47J 1機
E-767レーダー機能の向上 3機
E-2Cの改善 1機
DDH 1隻
SS 1隻
むらさめ型護衛艦の短SAMシステムの換装 1隻
03式地対空誘導弾 1個中隊
96式多目的誘導弾 5セット
中距離多目的誘導弾 13セット
9mm拳銃 1004丁
89式小銃 10012丁
対人狙撃銃 105丁
5,56mm機関銃MINIMI 195丁
81mm迫撃砲L16 5門
120mm迫撃砲RT 4門
99式自走155mm榴弾砲 9両
軽装甲機動車(陸自) 100両
87式偵察警戒車 3両
NBC偵察車 11両
目玉の一つだった新DDHは残っていますし、F-2の能力向上などが残っており、若干海空重視にシフトしているように見えます。陸自関係で残っているものは、小火器、NBC偵察車など特殊部隊による攻撃に備えるものが主体となっています。
これらの調達数量変化は、資料1ページ記載された概算要求の基本方針に沿って策定されたものです。
その中で、1「我が国の平和と国民生活の安全・安心の確保」の項を見てみると、次の通りです。
①「事態への即応、実効的対処による我が国の防衛・安全確保」では、弾道ミサイル攻撃、テロ・特殊部隊による攻撃、サイバー攻撃、大規模・特殊災害、パンデミックなどへの対応を重視すると書かれています。
これは、逆を書くと分かり易くなります。大規模な侵攻対処に必要となるような戦闘機の戦闘能力向上を意図した改修は削られてますし、同様に機甲戦能力も削られいます。
②「地域環境・秩序の一層の安定化」では、平素からの情報収集・分析、警戒監視等の能力向上を図るとされており、AWACSやE-2C改修はこの線に沿ったものでしょう。
ただし、この方針の通りなら、前述した音響測定艦ははずせないはずなので、やはり中国に阿っている感じは拭えません。
③「グローバルな安全保障環境の改善」では、国際活動基盤を充実・強化するとうたっており、陸自の軽装甲機動車や小火器類が維持されたのもこの方針に沿ってのことと思われます。
基本方針の2項目は、「効率化・合理化の更なる追求」として、①「事業の優先順位の見直し」、②「人的資源の効果的効率的活用」、③「装備品などの集中調達」を行うとされています。
前述したように海空(陸の対空能力も含む)重視、陸はテロや特殊部隊対処重視という優先順位が付けられたことで、優先順位を見直した、ということのようです。
人的資源については、DDH1隻を整備する替りに4隻の護衛艦を早期除籍して実員確保による充足率維持を図っているようです。
装備品の集中調達については、当初の概算要求と比較し、NBC偵察車、OH-1、F-2のレーダー改修が維持され、確かにその方針は維持されてますが、集中調達の目玉であったはずの新戦車58両は、わずか16両に削られ、この項目での言及から外されています。
以上、民主党政権下での防衛省概算要求の変化を一言で言うと、民主党の意に沿わないものを削っただけです。
時間がなかったということもありますが、新たに追加されたようなものはなく、官僚に頼らないなどと言いながら、官僚の作ったものを一部削って、お茶を濁したモノと言えそうです。
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数多久遠様
素人考えですが、私も音響測定艦は必要だと思います。
音響測定艦を使って情報収集しておかないと、またFSXの時の二の舞になるかも
しれません。
それとパトリオットLSが、バッサリ切られたことも納得できません。
以前PAC2弾がPAC3のRSで運用できることを数多久遠様からご教示戴きましたが、
LSを改修しないとPAC3弾を運用できない訳ですから、北朝鮮の弾道ミサイルに
対処できる手段を少なくしているようなものです。
防衛は「国家百年の大計」ですから、民主党にはしっかりと筋を通した考えを持って
もらいたいものです。
投稿: やん | 2009年10月25日 (日) 23時40分
LS改修は、まだPAC-3弾が少ないので、急ぐ必要はないと判断したのかもしれないです。
ただ、やった方がいいのは当たり前ですが。
私はむしろF-15とF-2の改修が削られた方が以外でした。
これももしかすると中国配慮なのかもしれません。
投稿: 数多久遠 | 2009年10月26日 (月) 23時20分
数多久遠 様
なるほど! PAC-3弾の数がまだ少ないんですネ。
F-15も近代化と言いつつ、何年経過してるんでしょうか。。。
投稿: やん | 2009年10月27日 (火) 00時00分