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2009年10月12日 (月)

2度目のPAC-3試射

昨年に引き続き2度目のPAC-3試射が行われました。
がしかし、北朝鮮のミサイル対処などで注目されるかと思ったものの、初めてだった昨年と比べ、メディアの注目度はガタ落ちでした。
時事と毎日新聞が報じた他は、記事にさえなっていません。
国産PAC3発射試験に成功=広域で部隊展開、米国で空自」(時事通信09年9月17日)
PAC3、せん光放ち命中=発射試験の画像公開-防衛省」(時事通信09年9月17日)
PAC3:発射成功 日本で生産分」(毎日新聞09年9月17日)

これらの記事では、あまり詳しい内容が報じられていないので、朝雲に期待して記事を書くのは待っていたのですが、その朝雲も結果的に時事と対して変わらない内容です。
PAC3発射試験 2回目も成功! 米射場で4高群など ライセンス国産弾初使用
模擬ミサイルを見事迎撃
」(朝雲ニュース09年10月1日)

メディアの扱いはちょっと寂しいものでしたが、今年は動画も公開されています。(昨年もTVニュースではちょびっと流れていました)
時事が配信していたのですが、重いせいか既に消されてしまっています。
幸い、消される前にDLしていたのですが、かなり重いデータで、うまくブログに貼れませんでした。
やり方がわかれば(たぶん有るんでしょうが、私のスキルが付いていってない)、別途処置します。

さて、では今回も、試射の実態と意義について検討してみます。
最初に、報道されている事実関係(時事、毎日、朝雲)の整理です。
・実射場所はニューメキシコ州のホワイトサンズ射場
・実施は9月16日午前8時46分(日本時間同午後11時46分)に標的を発射
・参加は、飛行開発実験団司令(宮脇俊幸空将補)以下、高教隊と4高群の隊員約100人
・使用されたPAC-3弾は国内でライセンス生産されたもの(昨年は輸入品を使用)
・リモートランチ端末を使用し、リモートランチ方式による迎撃を実施
・レーダーとランチャーファームの距離は、数10キロ
・試験費用は約12億9千万円で、データ解析費用など米軍への支払分は約10億7千万円
・模擬目標の発射は120km先から
・迎撃のため発射されたPAC-3弾は2発
・1発目が、標的発射から2分後に迎撃(インパクト)成功(2発目は自爆)
・迎撃高度は約十数キロ

次に、報道内容では報じられていないものの、公開されていた動画から読み取れる事実関係です。
・ターゲット(模擬目標)は、昨年同様PAC-2パトリオット(プログラム)改造弾
・ターゲットは、ほぼ発射直後の角度を維持したまま、直線的に上昇(7秒程度まで、その後は映像がなく不明)
・PAC-3弾は、2発とも発射直後の初期旋回でサイドスラスターを下方に1回噴射し、急角度で7秒以上上昇(その後の映像は一旦途切れている)
・その後、急角度な上昇から浅い角度への上昇に旋回(ロケットモータの噴煙が曲がっている)
・旋回から7秒以上はロケットモーターの作動が継続
・ロケットモーターの作動停止後約3秒で迎撃(インパクト)
・迎撃(インパクト)直前にサイドスラスターが作動して最終機動(動画はスロー再生と思われ、時間は不明)
・迎撃はヘッドオンに近いが、完全なヘッドオンではなく、ターゲットの方がより浅い角度

以上が公開されている情報となる訳ですが、最後に防衛省発表の報道内容と動画から読み取れることを推測で補い、今回の試験内容をまとめてみます。

動画は、PAC-3の飛翔後7秒程度で一旦切れていますが、旋回後も7秒以上はロケットモータの作動が継続しているため、カットされている時間はせいぜい数秒です。
となると、PAC-3弾は、発射後に急角度の上昇となり、高度10km程度で、浅い角度で落下する目標のコースに入り、ほぼヘッドオンでの迎撃コースに入ったことが分かります。
迎撃は、ロケットモータの燃焼完了後3秒程度後であり、いくら大気の薄い高高度とは言え、ロケットモータの燃焼終了後は急速に速度の低下と共に、誘導能力も低下してゆくため、最大射程に近い遠方での迎撃だったと考えられます。
ここから考えると、高射隊と模擬目標の発射位置が120km程度だったということですので、高射隊とランチャーファームの距離が30kmと仮定して、そこに加えてPAC-3弾の飛翔距離が20km弱とすると、模擬目標のPAC-2弾は、120-(30+20弱)で、70km強飛翔したことになります。
かなり誤差もある数値だと思われますが、目標発射から迎撃まで2分だったとの報道ともさほど矛盾しません。(模擬目標の平均水平速度が約マック1.8ですので、最大速度マック5強と言われるパトリオットの性能からすれば妥当な数値)
昨年の射撃時には、動画がなかったので、弾道弾模擬ということで45度程度と想定して考えましたが、今回の目標の落下角度は、迎撃時の映像からすると比較的浅いと思われます。それも加味すると、やはり目標の速度はマック2.5もなかったでしょう。
ノドンとは比べるもない低速度であり、2年目もこの程度で良いのか?とは思いますが、防衛省とすれば昨年度と比べれば国産弾使用で、かつリモートランチ方式とすることで良しとしたのだと思われます。
国民の手前、まだ失敗するわけには行かないという点もあるのでしょうし、予算や射場の制約でそれ以上の目標を準備できなかったのかもしれません。

という訳で、日本が備えるべきノドンクラスの弾道ミサイルに対しては、今年の試射結果でも、まだまだ実効性には疑問符が付いたままです。

来年はもう少し、せめてマック6程度の目標を準備し、迎撃試験をして欲しいものです。
マック6というのは、SRBMの速度に該当し、中国が宮古島や下地島など先島諸島攻撃に使用する可能性がある弾道ミサイルのスペックです。
いきなりノドンクラスの試験をする訳にはゆかなくても、この程度の試験をしておかなければ、PAC-3が本当に実効性があるとは言えません。

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コメント

おっしゃる通りですネ。
官僚は間違えないということをベースとして考えるから、
結果がおかしくなります。
優秀な方々ですが、間違いがゼロということはあり得ない
と思います。
特に、新規に開発するものが失敗ゼロと考えることが、
あり得ない発想です。

F-22は素晴らしい戦闘機ですが、開発段階では墜落したり、
形状を変更したりして、10年ぐらいの期間を掛けて開発した
戦闘機だと聞いたことがあります。
US-1でも、海自の多くの尊い犠牲があってこそ、世界最先端の
技術が開花したという事例があります。
PAC-3でも、実験段階で失敗を重ねてでも、実戦の前にそれなり
の結果を残すことが最優先だと思います。

やん 様
こういう点については、自衛官も官僚なんです。
「お前は先輩が間違っていたと言うつもりか!」なんて怒られたこともありました。
間違いは当然あるはずなんですが、それは認められないんです。
本当は、トライアンドエラーで良いはずなんですけどね。

数多久遠様
トライアンドエラーでないと、最先端の技術は開発できませんネ。

話は変わりますが、F-2選定の時にF-18が選定漏れになって
ますから、今回のF-XではF-18はなさそうですネ。
個人的にはF-18が良いように思っていましたが・・・・
同一機種を運用するのが難しいとすると、F-15SEも可能性は
低そうですネ。 空自が一体何を選定するのか、興味が尽きま
せん。

どう受け取るかについてはご自由に。という感じですが、
絶句するという言葉を体感したのは今日が久しぶりの事でした。

やん 様
F-18は、私が在職していた頃から人気はなかったですが、売り込みは非常に活発でした。以前と比べれば可能性は高くなっているかもしれません。
F-15SEは、F-15が飛行停止になると飛べる機体がF-2だけという事態もありえるので、過去の空自の考え方からすると可能性は低いでしょうね。
ただ、現時点ではまだなんともでしょう。
個人的にはF-2の追加生産で良いと思ってます。もちろんAAM-4搭載可能にしてですが。

さむざむ 様
公開されている限られた情報から書いてますので、ズレてしまっている部分もあるかもしれません。その辺は、ココは論理的におかしいとでも言っていただけると助かります。

数多久遠 様
F-18も選定漏れしたのはF-18A/Bでしたので、現在のF-18E/Fはほぼ別物になると
思います。  F-2(改)も面白いですネ! 国内の生産技術維持の観点から、有効
だと思います。

はじめまして。いつも勉強させていただいております。
ところで、弾道飛行する演習標的の落下時の経路角を浅くするためには
経路角45度で落下する場合よりも大きな速度が必要ではないでしょうか。

TFR 様
はじめまして。

おそらく「ミサイル入門教室」などを見てらっしゃるかと思いますが、経路角を浅くすると大きな速度が必要になるというのは、同一距離を、違う性能(速度)のミサイルで飛翔させた場合の話です。

同じ性能(速度)のミサイルで経路角を変えた場合、速度は基本的に変わってこないので、特に大気中を飛ぶ比率の高い短射程のミサイルの場合、経路角を浅く取ると空気抵抗による影響が大きくでることになります。
PAC-2を弾道飛翔させれば、今回の実験以上の距離は余裕で飛翔できるので、私もビデオを見るまでは。「ロフテッド弾道で飛翔させて高い速度で実験をしているのでは?」と思ってました。
ビデオにはタイムカウントなどが載ってませんし、撮影角度などもハッキリとは分からないため、読み違えている部分もあるかもしれませんが、ビデオを見る限り、模擬目標としたPAC-2はいわゆる弾道飛翔ではなく、弾道ミサイルと高高度巡航ミサイル中間のような飛翔だったのではないかな?、と思ってます。

もう少し情報を出してくれると考え易いですが、ちょっとこれ以上は難しいでしょうね。

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