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2009年10月

2009年10月31日 (土)

くらま衝突事故の報道

くらまの衝突事故について、くらま側には問題がなかったことがほぼ明らかになって来ました。
私は艦船の航行などについては詳しくないですし、週刊オブイェクト様などが詳しく報じているので、事故原因については書きません。
ただ一つ、気になった報道があったので、それについて書いておきます。

問題の報道は、産経新聞の記事です。
【護衛艦衝突・炎上】狭い海峡、船の難所 任務後…イージス事故と類似?」(産経新聞09年10月28日)
事故が27日午後8時頃、そしてこの記事が28日の1時23分ですので、事故後5時間半程度しか経過しておらず、事故原因を推定するための有力な情報は、まだ出てきていない時点の報道です。

記事の内容は、タイトルを見ても分かる通り、今回の事故が、あたごの事故との類似性があることを指摘して、海自側に問題があったことを匂わせるモノです。
「「隊員の気の緩みが原因でなければいいのだが…」(防衛省幹部)との懸念もある。」などというコメントも引き合いに出しながら、またもや自衛隊の不祥事、とでも言いたげです。

センセーショナルな記事を出したいという発想かもしれませんが、もはや憶測による先走り記事であったことは明らかです。
私企業とは言え、新聞は国民の知る権利に貢献するという公共的な性格を持っています。具体的な情報もなく憶測記事を垂れ流すようでは困ります。
今時、ブロガーだってこんな無責任な記事はそうそう書きません。
しかも、反自衛隊的な偏向姿勢の見える毎日や朝日なら分かりますが、これを書いたのは産経だったとは、もうトホホです。

2009年10月28日 (水)

普天間の代替候補地条件

民主党が政権を取った以降、普天間移設問題が揺れています。日米間で合意されたキャンプ・シュワブ沿岸案を破棄し、新候補地を策定しようとしていますが、軍事的な合理性を理解しているとは考えがたい候補地案を出し、日米関係を悪戯に悪化させてます。
普天間移設で年内に新候補地策定 「県外は断念」米側に打診へ 」(産経新聞09年10月23日)

産経の記事中にも出てきている代替候補地は、沖縄県外、嘉手納への統合案、下地島空港、伊江島補助飛行場が上げられています。この内、下地島空港や伊江島補助飛行場案は地元の反対で断念したとありますが、これらはどの案も米軍が納得する訳はありません。
民主党は、単に別の飛行場を用意すれば良いと思っているようですが、米軍は軍事的合理性に則ってモノを考えている訳で、それに拠れば、これらの案はいずれも論外です。

軍事的な観点で言えば、普天間飛行場には大きく2つの意味があります。
一つは、海兵隊戦力の投入拠点です。そしてもう一つは、嘉手納に所在する航空機が緊急時に利用する飛行場としての意味です。

海兵隊の投入拠点としては、飛行場さえあれば何処でも良いと思うかもしれませんが、海兵隊と言えど重装備もありますし、実際の戦闘には大量の物資を必要とします。つまり、近隣に使用可能な後方のインフラと港湾があることも重要です。
この点で、下地島や伊江島は不適切です。キャンプ・シュワブ沿岸であれば、シュワブの施設が使えますし、ホワイトビーチ(勝連)が近く、那覇港へも車両で簡単に移動できます。
また、もちろん位置も重要で、回転翼機(ヘリ)が台湾に空中給油なしで到達できる場所でなければ空港を置く意味がありません。この点で沖縄県外は論外です。逆に、近すぎてもリスクが高くなります。下地島は、中国沿岸からSRBM(DF-11A、DF-15)が到達するほどですし、防空戦力も展開しないと航空攻撃を受ける可能性も高くなります。

一方、嘉手納統合案は、嘉手納所在機の緊急飛行場という観点でアウトです。
もし、嘉手納に統合されてしまえば、気象状況や攻撃による被害で嘉手納に航空機が降りれなくなった際、近隣には那覇くらいしか飛行場がありません。そしてその那覇は超過密です。
そうなると、岩国や新田原に向かうことになりますが、距離がありすぎ、到達できない航空機が多くなる可能性があります。

まとめて言うと、米軍とすれば、軍事的な観点から、沖縄本島内に嘉手納以外の飛行場が絶対に必要ということです。
別にキャンプ・シュワブに拘る必要はないですが、新候補地を探すなら本島内で探さないと米軍は納得しません。

2009年10月26日 (月)

サマータイム

何年も前から噂には出ていたサマータイムが、導入の方向に向かっているようです。
韓国、夏時間の同時導入を日本に提案か 9日の首脳会談で」(産経新聞09年10月7日)

航空自衛隊も他の航空業界と同様、運用部門は世界標準時Z(ズル)タイムを使用しています。
Zタイムはサマータイムが導入されようとされまいと変わってくるわけではないですが、勤務員のシフト体制や運用以外の部署は日本標準時I(アイ)タイムで仕事をしているため、これがサマータイムが導入されると、今までZタイム=Iタイム-9Hと覚えていたものが、Iタイム-8Hとズレてしまいます。
この先ずっとズレるなら、ある意味構いませんが、夏が過ぎれば、また元に戻ります。

こんなめんどくさい制度は、自衛隊に限らず世界標準時で仕事をする人間にとっては邪魔なだけです。
やめた方が良いと思います。

2009年10月24日 (土)

概算要求の変更点

民主党政権下での防衛省概算要求の変化について見てみます。
なお、つい先日まで、新概算要求のポイントに併記する形で、旧概算要求資料も公開されていましたが、そちらは既に削除されてしまってます

分かり易い数字として、両者における主要な装備品の調達数で、変化のあった部分を拾ってみると、次の通りです。
(防衛省公開資料の記載順)
UH-60JA 5機→3機
P-1 2機→1機
SH-60K 5機→4機
MCH-101 2機→1機
F-15近代化改修 4機→2機
F-15自己防御能力の向上 4機→2機
F-2空対空戦闘能力の向上(機体改修) 4機→1機
音響測定艦(AOS) 1隻→0隻
91式携帯地対空誘導弾(B) 30セット→22セット
01式軽対戦車誘導弾 100セット→39セット
ペトリオット・システム改修(LS改修) 6式→0式
12.7mm重機関銃 128丁→126丁
新戦車 58両→16両
96式装輪装甲車 19両→17両
軽装甲機動車(空自) 40両→26両

基本的に、軒並み減っている感じですが、項目として消えたものは音響測定艦くらいです。
音響測定艦が消えたことは中国配慮のようにも見え、非常に嫌な感じです。
また、陸自に関して見ると、新戦車や対戦車誘導弾が大幅に減り、機甲戦能力については大鉈が振られた感じです。

逆に、変化のなかったものを拾って見ます。
OH-1 4機
CH-47JA 2機
新練習ヘリコプター 1機
T-5 4機
TH-135 3機
F-2空対空戦闘能力の向上(レーダー改修) 28機
F-2へのJDAM機能の追加 35機
CH-47J 1機
E-767レーダー機能の向上 3機
E-2Cの改善 1機
DDH 1隻
SS 1隻
むらさめ型護衛艦の短SAMシステムの換装 1隻
03式地対空誘導弾 1個中隊
96式多目的誘導弾 5セット
中距離多目的誘導弾 13セット
9mm拳銃 1004丁
89式小銃 10012丁
対人狙撃銃 105丁
5,56mm機関銃MINIMI 195丁
81mm迫撃砲L16 5門
120mm迫撃砲RT 4門
99式自走155mm榴弾砲 9両
軽装甲機動車(陸自) 100両
87式偵察警戒車 3両
NBC偵察車 11両

目玉の一つだった新DDHは残っていますし、F-2の能力向上などが残っており、若干海空重視にシフトしているように見えます。陸自関係で残っているものは、小火器、NBC偵察車など特殊部隊による攻撃に備えるものが主体となっています。

これらの調達数量変化は、資料1ページ記載された概算要求の基本方針に沿って策定されたものです。
その中で、1「我が国の平和と国民生活の安全・安心の確保」の項を見てみると、次の通りです。
①「事態への即応、実効的対処による我が国の防衛・安全確保」では、弾道ミサイル攻撃、テロ・特殊部隊による攻撃、サイバー攻撃、大規模・特殊災害、パンデミックなどへの対応を重視すると書かれています。
これは、逆を書くと分かり易くなります。大規模な侵攻対処に必要となるような戦闘機の戦闘能力向上を意図した改修は削られてますし、同様に機甲戦能力も削られいます。
②「地域環境・秩序の一層の安定化」では、平素からの情報収集・分析、警戒監視等の能力向上を図るとされており、AWACSやE-2C改修はこの線に沿ったものでしょう。
ただし、この方針の通りなら、前述した音響測定艦ははずせないはずなので、やはり中国に阿っている感じは拭えません。
③「グローバルな安全保障環境の改善」では、国際活動基盤を充実・強化するとうたっており、陸自の軽装甲機動車や小火器類が維持されたのもこの方針に沿ってのことと思われます。

基本方針の2項目は、「効率化・合理化の更なる追求」として、①「事業の優先順位の見直し」、②「人的資源の効果的効率的活用」、③「装備品などの集中調達」を行うとされています。
前述したように海空(陸の対空能力も含む)重視、陸はテロや特殊部隊対処重視という優先順位が付けられたことで、優先順位を見直した、ということのようです。
人的資源については、DDH1隻を整備する替りに4隻の護衛艦を早期除籍して実員確保による充足率維持を図っているようです。
装備品の集中調達については、当初の概算要求と比較し、NBC偵察車、OH-1、F-2のレーダー改修が維持され、確かにその方針は維持されてますが、集中調達の目玉であったはずの新戦車58両は、わずか16両に削られ、この項目での言及から外されています。

以上、民主党政権下での防衛省概算要求の変化を一言で言うと、民主党の意に沿わないものを削っただけです。
時間がなかったということもありますが、新たに追加されたようなものはなく、官僚に頼らないなどと言いながら、官僚の作ったものを一部削って、お茶を濁したモノと言えそうです。

2009年10月22日 (木)

サンダーバーズ来日記念テレカ

マル秘ミリタリーグッズの第2回です。

先ごろ、15年ぶりにサンダーバーズが来日しました。(訂正:数年前にも来てたみたいです。)

今回紹介するグッズは、15年前の来日時に作られた三沢航空祭の記念テレホンカードです。
Thunderbirds_2

共演となったブルーインパルスは、まだT-2の頃です。サンダーバーズはこの時既にF-16ですから、考えてみれば結構長いこと同じ機体を使っていることになります。

このテレカがどういった経緯で作られたものなのかは覚えていません。当然、官費で作るわけはありませんので、防衛協力会とかが作ったのかもしれません。

入手した経緯も、ハッキリは覚えてはいないのですが、航空祭に協力した関係でもらったものだったはずです。
恐らく、かなりレアな品でしょうし、サンダーバーズとブルーインパルスの共演記念というマニア受けするプリントとなっているため、もし値段を付けたら結構するのではないかと思います。

航空祭は、例年でも人が多く集まりますが、この時はサンダーバーズのおかげでもの凄い人出でした。三沢から遠く青森市まで渋滞が続いたことを覚えています。

今年の来日も盛況だったようですが、今度はブルーエンジェルスにも来て欲しいところです。

2009年10月20日 (火)

防衛省がマニフェストと言うな!

民主党政権の発足に伴って、概算要求のやり直しが行われました。
防衛省も慌てて作業したためか、新概算要求については、ポイントだけ公開されています。
自民党政権時の概算要求資料もそのまま載っていますが、新しい資料は、現時点ではコチラのポイントだけです。

自民党政権時の概算要求に比べ、細かい中身については、結構あちこち変わっているようですが、パッと見た感じではそれほど劇的な変化は感じません。

ただ一つ度し難い部分があったので、今回はその点だけ書いて詳細は別の機会にします。

さて、その度し難い部分ですが、ポイント資料の1ページ目、平成22年度概算要求の基本方針の冒頭、「我が国の平和と国民生活の安全・安心の確保」という項目です。
長くないので、次に全文引用しておきます。
********************
厳しさを増す安全保障環境のもと、我が国の平和と国民生活の安全・安心を確保するため、マニフェストを踏まえつつ、必要な防衛力の整備を着実に推進し、各種の事態を抑止するとともに実効的に対処できる態勢を構築する。
********************

「マニフェスト」とは何事でしょう。
民主党が政権を取った以上、民主党のマニフェストに書かれていた方向で施策を講じてゆくことは当たり前です。
ですが、あれはあくまで民主党のマニフェストであって、防衛省のマニフェストではありません。自民党にもマニフェストはありましたが、そのそれをもって「防衛省のマニフェスト」などと言っていたことはありません。

この単語を入れさせたのが防衛大臣の意向であることは容易に推察できますが、だとすれば北澤防衛大臣の政府と党との関係の認識は問題です。
政権をとったら、政府機関が民主党の持ち物となるわけではありません。自民党は党と政府の線引きをしっかりしていましたが、民主党はこの点で問題ありです。
官僚に言うことを聞かせる、という考えがあるのかも知れませんが、党の責任と政府の責任は違います。

日本は、党と政府が一体になった中国とは違うはずです。それとも民主党は中国のように政府の全てを党の意向に従わせるつもりでしょうか。

2009年10月17日 (土)

統制は緩んでいる?

北朝鮮から、海路での亡命者が韓国に渡ったそうです。
北朝鮮住民11人、海路で直接韓国に亡命=韓国軍当局者」(ロイター09年10月2日)

この手の話題を逐一フォローはしていないので、事例はあったのかも知れませんが、個人的には、今まで海路で韓国に直接亡命した例は聞いたことがありません。

11人というと、小型の漁船で渡ったことが予想されますが、小型の漁船が渡れる程度の沿岸部は、北朝鮮による監視が厳しく、亡命者がこの監視網を潜り抜けることは困難だと思われてました。
また、船を使える人間は、当然思想的にも監視されていたと思われます。

それにも関わらず亡命に成功したということは、北朝鮮による住民統制が緩んでいる証拠かも知れません。

今年は、北朝鮮国内のとうもろこしなどが非常な不作だとも伝えられており、瀬に腹は変えられず危険を承知で亡命に及んだのかもしれませんが、そのギャンブルに成功したということは、やはり監視・統制が緩んできている証左であると言える可能性があります。

最近は、北朝鮮というと核やミサイル問題ばかりが注目されていますが、後継者問題もからみながら、統治体制(むしろ態勢か?)も注目しておかないと、何か起こるかも知れません。

2009年10月15日 (木)

PAC-3動画

PAC-3試射の動画は、防衛省が公開していたものですから、転載しても問題はないと思うのですが、思った以上に容量が大きかったりしてうまくゆきません。
これから「見たい!」という方は、メールでも下さい。
メアドはプロフ欄にあります。

2009年10月14日 (水)

ミスは0にはならない

以前の記事「ハイテクも大事だが」で、不発手榴弾が手荷物検査をすり抜けたことを問題視しましたが、日本だけでなく、テロの最大の標的アメリカでも、それ以上の事があるようです。
成田到着便、手荷物に拳銃 持ち込み容疑で米国人逮捕」(朝日新聞09年10月7日)
成田空港で実弾装てん拳銃発見、米国人逮捕」(読売新聞09年10月7日)

ダラスから成田にトランジットで立ち寄ったアメリカ人の手荷物から、実弾が入った拳銃が発見されたそうです。
リボルバーではなく、オートの拳銃だったそうで、検査の際、銃が少しでも横を向いてなければ、他のものに見えてしまうケースも有るかも知れませんが、それにしても、というニュースです。

コレは、うっかりでは済まされないものの、やっぱりうっかりなんでしょう。
ミスは0にならないという良い例かもしれません。

それにしても、機内に持ち込んだ理由がスゴイ。「バッグに入れていたまま忘れていた」だそうです。
如何にもアメリカ!

2009年10月12日 (月)

2度目のPAC-3試射

昨年に引き続き2度目のPAC-3試射が行われました。
がしかし、北朝鮮のミサイル対処などで注目されるかと思ったものの、初めてだった昨年と比べ、メディアの注目度はガタ落ちでした。
時事と毎日新聞が報じた他は、記事にさえなっていません。
国産PAC3発射試験に成功=広域で部隊展開、米国で空自」(時事通信09年9月17日)
PAC3、せん光放ち命中=発射試験の画像公開-防衛省」(時事通信09年9月17日)
PAC3:発射成功 日本で生産分」(毎日新聞09年9月17日)

これらの記事では、あまり詳しい内容が報じられていないので、朝雲に期待して記事を書くのは待っていたのですが、その朝雲も結果的に時事と対して変わらない内容です。
PAC3発射試験 2回目も成功! 米射場で4高群など ライセンス国産弾初使用
模擬ミサイルを見事迎撃
」(朝雲ニュース09年10月1日)

メディアの扱いはちょっと寂しいものでしたが、今年は動画も公開されています。(昨年もTVニュースではちょびっと流れていました)
時事が配信していたのですが、重いせいか既に消されてしまっています。
幸い、消される前にDLしていたのですが、かなり重いデータで、うまくブログに貼れませんでした。
やり方がわかれば(たぶん有るんでしょうが、私のスキルが付いていってない)、別途処置します。

さて、では今回も、試射の実態と意義について検討してみます。
最初に、報道されている事実関係(時事、毎日、朝雲)の整理です。
・実射場所はニューメキシコ州のホワイトサンズ射場
・実施は9月16日午前8時46分(日本時間同午後11時46分)に標的を発射
・参加は、飛行開発実験団司令(宮脇俊幸空将補)以下、高教隊と4高群の隊員約100人
・使用されたPAC-3弾は国内でライセンス生産されたもの(昨年は輸入品を使用)
・リモートランチ端末を使用し、リモートランチ方式による迎撃を実施
・レーダーとランチャーファームの距離は、数10キロ
・試験費用は約12億9千万円で、データ解析費用など米軍への支払分は約10億7千万円
・模擬目標の発射は120km先から
・迎撃のため発射されたPAC-3弾は2発
・1発目が、標的発射から2分後に迎撃(インパクト)成功(2発目は自爆)
・迎撃高度は約十数キロ

次に、報道内容では報じられていないものの、公開されていた動画から読み取れる事実関係です。
・ターゲット(模擬目標)は、昨年同様PAC-2パトリオット(プログラム)改造弾
・ターゲットは、ほぼ発射直後の角度を維持したまま、直線的に上昇(7秒程度まで、その後は映像がなく不明)
・PAC-3弾は、2発とも発射直後の初期旋回でサイドスラスターを下方に1回噴射し、急角度で7秒以上上昇(その後の映像は一旦途切れている)
・その後、急角度な上昇から浅い角度への上昇に旋回(ロケットモータの噴煙が曲がっている)
・旋回から7秒以上はロケットモーターの作動が継続
・ロケットモーターの作動停止後約3秒で迎撃(インパクト)
・迎撃(インパクト)直前にサイドスラスターが作動して最終機動(動画はスロー再生と思われ、時間は不明)
・迎撃はヘッドオンに近いが、完全なヘッドオンではなく、ターゲットの方がより浅い角度

以上が公開されている情報となる訳ですが、最後に防衛省発表の報道内容と動画から読み取れることを推測で補い、今回の試験内容をまとめてみます。

動画は、PAC-3の飛翔後7秒程度で一旦切れていますが、旋回後も7秒以上はロケットモータの作動が継続しているため、カットされている時間はせいぜい数秒です。
となると、PAC-3弾は、発射後に急角度の上昇となり、高度10km程度で、浅い角度で落下する目標のコースに入り、ほぼヘッドオンでの迎撃コースに入ったことが分かります。
迎撃は、ロケットモータの燃焼完了後3秒程度後であり、いくら大気の薄い高高度とは言え、ロケットモータの燃焼終了後は急速に速度の低下と共に、誘導能力も低下してゆくため、最大射程に近い遠方での迎撃だったと考えられます。
ここから考えると、高射隊と模擬目標の発射位置が120km程度だったということですので、高射隊とランチャーファームの距離が30kmと仮定して、そこに加えてPAC-3弾の飛翔距離が20km弱とすると、模擬目標のPAC-2弾は、120-(30+20弱)で、70km強飛翔したことになります。
かなり誤差もある数値だと思われますが、目標発射から迎撃まで2分だったとの報道ともさほど矛盾しません。(模擬目標の平均水平速度が約マック1.8ですので、最大速度マック5強と言われるパトリオットの性能からすれば妥当な数値)
昨年の射撃時には、動画がなかったので、弾道弾模擬ということで45度程度と想定して考えましたが、今回の目標の落下角度は、迎撃時の映像からすると比較的浅いと思われます。それも加味すると、やはり目標の速度はマック2.5もなかったでしょう。
ノドンとは比べるもない低速度であり、2年目もこの程度で良いのか?とは思いますが、防衛省とすれば昨年度と比べれば国産弾使用で、かつリモートランチ方式とすることで良しとしたのだと思われます。
国民の手前、まだ失敗するわけには行かないという点もあるのでしょうし、予算や射場の制約でそれ以上の目標を準備できなかったのかもしれません。

という訳で、日本が備えるべきノドンクラスの弾道ミサイルに対しては、今年の試射結果でも、まだまだ実効性には疑問符が付いたままです。

来年はもう少し、せめてマック6程度の目標を準備し、迎撃試験をして欲しいものです。
マック6というのは、SRBMの速度に該当し、中国が宮古島や下地島など先島諸島攻撃に使用する可能性がある弾道ミサイルのスペックです。
いきなりノドンクラスの試験をする訳にはゆかなくても、この程度の試験をしておかなければ、PAC-3が本当に実効性があるとは言えません。

2009年10月 9日 (金)

H22概算要求-離島侵攻対処

新DDHや新戦車のおかげなのか、あまり注目されてはいませんが、22年度の概算要求には、離島対処のための陸上自衛隊方面隊実働演習が含まれています。
平成22年度概算要求資料

当面の間、自衛隊が実際に直面する蓋然性の高い事態は、テロや特殊部隊による攻撃以外は離島対処くらいでしょう。
そのため、離島対処を念頭にして、海空自衛隊の協力を得て実施される陸自方面隊の実働演習は非常に意義深いものがあります。

しかし、概算要求資料(7ページ)を見る限り、想定が変です。
イメージとして示されている図では、第1段階として「空自航空機及び海自艦艇との協同による展開」が描かれており、空路では熊本から、海路では鹿児島から、沖縄本島への機動が演練されることになっています。
沖縄本島は、作戦の根拠地として付随的に攻撃対象となることはあっても、直接対象となった危機が発生する蓋然性は極めて低いと考えられますから、この段階で既に変です。
その上、発地、着地とも十分なインフラがある、この程度の機動でしたら、出来て当たり前です。離島対処として本当に演練しなければならないのは、沖縄本島より先への機動です。
加えて、第2段階の演習は、「九州本土を含む対処要領の訓練」となっており、九州に敵の陸戦戦力が襲来することを想定しているようです。
実際の場所として九州地区の演習場を使用しながら離島を想定した訓練をするなら理解できますが、沖縄本島から九州地区に侵攻する陸戦戦力を想定するなど、北海道に旧ソ連軍が侵攻することを想定していた冷戦期以上です。

大きな演習の場合、多数の部隊を状況に入れる必要性が発生するため、「少し」無理な想定をすることは良くある話ですが、これは不自然過ぎます。

自衛隊がいろいろな制限の中で訓練をしていることは十二分に分かっているつもりですが、想定の段階からあまりにおかしいと、何のための訓練なのか分かりませんし、成果も上がってきません。
防衛省として、中国を仮想敵国としていることが明白な訓練は、政治的にやりにくいでしょうが、例えば自衛官しか居住していない某離島を訓練場所として、離島への機動や対処を訓練するなど、やりようは幾らでもあるはずです。

「合理化のための創意工夫」は決まり文句のハズですが、ちょっと足りないのでは?

2009年10月 7日 (水)

日本人は発砲炎が好き?

今回も今月号(10月号)の軍事研究誌ネタです。


毎号、「ワールド イン フォーカス」と題して、フォト・ジャーナリストの菊池雅之氏がコラムを書かれています。5Pほど(写真が多いので、記事自体は3P分程度)の記事ですが、なかなか視点が面白く、毎号楽しみにしているページです。

今月号の「ワールド イン フォーカス」は、陸自広報マンのカメラの腕と日本人はどういう訳か発砲炎(の写った写真)が好きだというものでした。
他国軍隊のHPと比較し、確かに日本人は発砲炎が好きであることが述べられてます。
そう言われてみると、確かにその通りのようです。雑誌を見ても拳銃、火砲、はてはミサイルに至るまで、発射直後の炎が写っている写真が多いですし、自衛官だった頃の事を思い出しても、記録写真に関してまで、そういう写真を撮ろうと努力していました。

ですが、記事にはその理由までは書かれていません。
私も確証が有るわけではありませんが、日本人が発砲炎を好きな理由は、そこに「音」が写っているからではないでしょうか。
日本人は、他の民族が心地よいとは感じない自然界の音を心地よく感じるそうです。虫の音しかり、小川のせせらぎしかりです。
発砲の際、消音機付きの小火器でもない限りは轟音を発します。腹に響く轟音は、和太鼓の鼓動にも通じるところがあるように思えるのです。
発砲以外、例えば航空機の飛行時にも音は発しますが、状況により音の聞こえ方はさまざまです。写真を見てその時の音を当てられる人はいないでしょう。ですが、発砲時の音ならある程度判別が付きます。

そういう意味で、発砲炎には「音」が写っています。
轟音が写っている写真には、迫力があると思うのです。

2009年10月 4日 (日)

BJOCC

今月号(10月号)の軍事研究誌に、福好昌治氏が「対テロ戦争を戦う在日アメリカ空軍」と題して、在日アメリカ空軍の体制などについて書いています。


この記事を読んだ方は、非常に混乱させられたという印象を持ったのではないでしょうか。
しかし、福好氏の記述がマズイと言いたいわけではありません。
空自もそうですが、空軍の指揮統制、特に軍令系統の作戦統制関係は非常にコンフュージングです。
空自と米空軍でも違いがありますから、私も米空軍についてはちゃんと理解できている訳ではありません。

ですが、分かり易い例を挙げられるケースもあるので、今回は、その辺りを紹介したいと思います。

この記事の中で、BJOCC(ビージョック)という言葉が出てきます。これは、Bilateral and Jpint Operations Cordination Centerの略で、(日米)共同統合運用調整所と訳されます。
Airとか航空とか言う言葉は入っていませんが、基本的に航空作戦に関する調整所で、航空総隊司令部と在日米軍司令部の間で設置されます。航空総隊司令部が府中にあるので、以前は府中か横田に設置されるものでしたが、総隊司令部が横田に移動になれば、横田で設置されることになるでしょう。
演習の場では、度々設置され演練されており、指揮所の一角で、双方の幕僚が作戦行動の調整を行う場となっています。
「調整」といってもイメージし難いと思いますので、例えばこんな会話(調整)が実施されるということをシナリオ風に書いてみます。

自衛隊幕僚:「やあ、少佐。ちょっといいかい?」
米軍幕僚 :「なんだい?」
自衛隊幕僚:「ここにある弾薬集積所を攻撃したい。」
(地図を指さしながら)
自衛隊幕僚:「ウチの方で、三沢からF-2を2個エレメント(4機編隊)出して空爆する考えなんだが、それにあたって、この手前にある敵のSA-11サイトが邪魔になる。」
米軍幕僚 :「そうだな」
自衛隊幕僚:「そこで、このSAMサイトを黙らせて欲しい。」
米軍幕僚 :「何時実施したい?」
自衛隊幕僚:「なるべく早くだ。」
米軍幕僚 :「そうか。それなら、SEAD(敵防空網制圧)とDEAD(敵防空網破壊)、どちらが希望なんだ?」
自衛隊幕僚:「F-16(ワイルド・ウィーゼル)を出すんじゃないのか?」
米軍幕僚 :「今すぐ使えるF-16はないんだ。SEADで良ければ(海軍の)EA-6を飛ばすし、DEADが希望なら、併せてF-15Eを出す。」
自衛隊幕僚:「こちらが弾薬集積所を爆撃する間だけ黙らせてくれればいいので、SEADでOKだ。」
米軍幕僚 :「OK」
(時計とフライト可能な航空機のリストを見て)
米軍幕僚 :「EA-6が進出してECMをかけられるのは03:10以降だな。」
自衛隊幕僚:「分かった。それなら、F-2のTOT(Tome Over Target:攻撃目標上空への到達時刻)を03:30に設定する。03:10から03:50まではECMを頼む。」
米軍幕僚 :「OK。大丈夫だ」

とまあ、こんな感じの会話が交わされ、空自と米空軍だけでなく、海軍や海兵隊の戦力まで含めて有機的に連携した作戦が実施可能になります。
指揮所の中に設置されると聞くと、肩に星を幾つも付けた高級幹部が円卓を囲んで会議をするようなイメージかもしれませんが、それがないわけではないのですが、大抵は上記の様な中佐、少佐級の幕僚がメインになります。

日米共同は、共同ではなく協同ですが、実態的には結構進んでいます。

2009年10月 3日 (土)

H22概算要求-中SAM改

現時点の22年度概算要求には、今年度の予算化に失敗した03式中距離地対空誘導弾(改)の開発が含まれています。

ただし、21年度の要求では「一層の合理化・効率化への取組」に含まれていましたが、22年度要求では「巡航ミサイル攻撃等の対応」に含まれています。
内容も変わっていて、取得価格の低減を目指しているだけではなく、他システムのセンサ等との連接により、中SAMのレーダーでは捕捉できないマスクエリア内の巡航ミサイルなどを対処できるものとして開発することになっています。

この変化は、取得価格の低減だけでは予算化が難しいと考えた結果かもしれませんが、どうもそれだけではないように見えます。
20年度の事前の事業評価資料を見ると、21年度の概算要求にさえ含まれなかった「対空戦闘指揮統制システム」という項目があります。
事前の事業評価 政策評価書(要旨)
これは、「師団対空情報処理システム(DADS)、現有高射指揮所装置(MTQ-1)の後継として、方面隊、師団等の高射特科部隊等に装備し、対空戦闘における方面隊、師団等の指揮・統制を実施するために使用」するための装備で、開発も終了しています。
これの調達は、21年度の要求にも載らなかっただけでなく、結局22年度の要求にも載っていません。

一方で、22年度要求の中SAM(改)の開発に盛り込まれた機能を実現するためには、この対空戦闘指揮統制システムと共通する技術が必須になります。
恐らく陸幕は、この対空戦闘指揮統制システムの調達を断念し、その技術の大半(電子的な連接による目標情報のキューイングなど)を中SAM(改)の開発要求に忍び込ませることにしたのでしょう。

対空レーダーのマスクエリア内目標の撃墜が出来るということは、従来のSAMの限界を超える機能であり、戦術的には非常に高い効果があります。
作戦計画の作成などにおける防御火網の構成にあたり、その限界には苦心しましたので、今回の中SAM(改)開発要求には目を見張るものがあります。
ですが、この機能を盛り込むことで、中SAM(改)の開発費用はずいぶんと高くなっています。21年度要求時の所要経費は26億円、試験まで含めた7年間の経費総額が185億円でした。それが、22年度要求では所要経費66億円、同じく7年間の経費総額が393億円と、2倍になってしまっています。

おそらく、もともとの目的であった取得価格の低減効果も、限定的にならざるを得ないのではないでしょうか。
もっとも、DADSの運用要員なども減らせる可能性がありますが、これだけ費用をかけるのであれば、そこまで算盤を弾いた上で合理化が可能だとアピールしなければ、実際に予算を通すことは難しいのではないでしょうか。少なくとも、私が財務の役人や民主党の先生ならそう考えます。

いくら北澤防衛大臣が防衛費の削減に否定的とは言え、全般情勢を考えると、ちょっと空気を読めていない要求に思えます。

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