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2009年10月 3日 (土)

H22概算要求-中SAM改

現時点の22年度概算要求には、今年度の予算化に失敗した03式中距離地対空誘導弾(改)の開発が含まれています。

ただし、21年度の要求では「一層の合理化・効率化への取組」に含まれていましたが、22年度要求では「巡航ミサイル攻撃等の対応」に含まれています。
内容も変わっていて、取得価格の低減を目指しているだけではなく、他システムのセンサ等との連接により、中SAMのレーダーでは捕捉できないマスクエリア内の巡航ミサイルなどを対処できるものとして開発することになっています。

この変化は、取得価格の低減だけでは予算化が難しいと考えた結果かもしれませんが、どうもそれだけではないように見えます。
20年度の事前の事業評価資料を見ると、21年度の概算要求にさえ含まれなかった「対空戦闘指揮統制システム」という項目があります。
事前の事業評価 政策評価書(要旨)
これは、「師団対空情報処理システム(DADS)、現有高射指揮所装置(MTQ-1)の後継として、方面隊、師団等の高射特科部隊等に装備し、対空戦闘における方面隊、師団等の指揮・統制を実施するために使用」するための装備で、開発も終了しています。
これの調達は、21年度の要求にも載らなかっただけでなく、結局22年度の要求にも載っていません。

一方で、22年度要求の中SAM(改)の開発に盛り込まれた機能を実現するためには、この対空戦闘指揮統制システムと共通する技術が必須になります。
恐らく陸幕は、この対空戦闘指揮統制システムの調達を断念し、その技術の大半(電子的な連接による目標情報のキューイングなど)を中SAM(改)の開発要求に忍び込ませることにしたのでしょう。

対空レーダーのマスクエリア内目標の撃墜が出来るということは、従来のSAMの限界を超える機能であり、戦術的には非常に高い効果があります。
作戦計画の作成などにおける防御火網の構成にあたり、その限界には苦心しましたので、今回の中SAM(改)開発要求には目を見張るものがあります。
ですが、この機能を盛り込むことで、中SAM(改)の開発費用はずいぶんと高くなっています。21年度要求時の所要経費は26億円、試験まで含めた7年間の経費総額が185億円でした。それが、22年度要求では所要経費66億円、同じく7年間の経費総額が393億円と、2倍になってしまっています。

おそらく、もともとの目的であった取得価格の低減効果も、限定的にならざるを得ないのではないでしょうか。
もっとも、DADSの運用要員なども減らせる可能性がありますが、これだけ費用をかけるのであれば、そこまで算盤を弾いた上で合理化が可能だとアピールしなければ、実際に予算を通すことは難しいのではないでしょうか。少なくとも、私が財務の役人や民主党の先生ならそう考えます。

いくら北澤防衛大臣が防衛費の削減に否定的とは言え、全般情勢を考えると、ちょっと空気を読めていない要求に思えます。

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コメント

何事もチャレンジ

KOREA様

まあ、どの道仕切りなおしになる概算要求ですしね。
予想が外れて通ったら喜ばしい話です。

中SAM(改)にして機能を増やして、コストを削減すると
いうのが不思議です。
開発費は増えたにせよ、機能が増えれば製品代が増える
のは普通のような気がするのですが。。。

やん 様
詳細がわからないので、確たることは言えませんが、概算要求資料を見る限り、「確かに取得コスト低減を図った」と書かれていますので、一応価格は下がるのでしょう。
パソコンでも、処理速度の向上を図りながら価格が落ちるということはありますから、そういう事ではないでしょうか。
もっとも、機能付加をしなければもっと下がるのでしょうけど。

数多久遠様
返信ありがとうございます。
なるほど! ソフトの価格が結構な割合を占めるという話も
聞いたことがあります。
勉強になります o(_ _)oペコッ

やん 様
この新規機能の取り入れには、通信関係を主体にして、ハードの変更も入っているはずです。
ソフトの比重が年を経るごとに高まっているのは確かですが

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