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2009年9月

2009年9月30日 (水)

H22概算要求-MD

平成22年度概算要求資料のトップ項目は、「弾道ミサイル発射への対応」として、MD関連予算となっています。
中身としては、再三お伝えしているパトリオットの全高射群PAC-3化とイージスの日米共同開発です。

パトリオットのPAC-3化の意義等については、以前の記事「PACー3化の軍事的合理性」などをご覧下さい。
ここでは、PAC-3化と併せて予算要求されているパトリオット部隊の運用能力強化について、見てみます。

この件は、以前から計画されていた項目ではないため、事前の事業評価等の資料がありません。そのため概算要求資料から読み取るしかない状況です。
概算要求資料では「迅速に機動展開し、長期間にわたる任務を的確に実施するため、機動展開車両、展開隊員の待機用テント等を整備」とあります。
今までにも、訓練等でなんども問題視されながら、要求しても通らなかった後方関連器材が要求されているので、これは良いことだと思います。
ただ、テント等は分かりますが、機動展開車両という言葉が具体的に何を指すのかは不明です。
見学に来た陸自隊員が目を見張る待機車等(待機車1号、待機車2号、自活車)のことか、あるいは各器材に乗車するだけでは移動しきれない隊員を輸送するためのバスの事だと思われます。
もし前者だとしたら、指揮所運用隊や群本部用か、あるいは高射隊のリモートランチ用でしょう。
後者なら各部隊共通かな。

イージスの日米共同開発については、「指揮官・オペレータ支援機能及びシステムの抗たん性を向上させる機能を付加」とあります。
こちらは、事前の事業評価資料が出ています。
政策評価書(要旨)

政策評価書(本文)
政策評価書(参考)
指揮官・オペレータ支援機能の付加とは、MDと対艦ミサイルへの対処など同時に複数の任務を実施する際に、指揮官やオペレータの戦術判断がシビアになるため、これを助けるソフトウェア改善のようです。
参考として出ている運用構想図を見ると、鳥瞰図などを表示させる機能のようです。
抗たん性向上のための機能を付加についてもソフトウェア改善のようですが、詳細は分かりません。イージスシステムの抗たん性について、なにか問題視される事項があるのでしょう。

実際に予算として通るかどうかですが、イージスの日米共同開発については、アメリカによる開発に乗り遅れるわけには行かないので、民主党としても削ることはできないでしょう。

パトリオットのPAC-3化は、民主受けする要求ではありますが、果たして通るかどうかは疑問です。
ただし、産経にリークがあった際、メディアでの論調も反対基調ではありませんでしたし、民主からも拒否的の反応はなかったので、こちらもすんなり通るかもしれません。

と思っていたら、北澤防衛大臣は予算減額の考えはないと述べたそうです。
少なくとも大臣としては概算要求の額は妥当だと考えているようですし、PAC-3化など新たな装備についても、「トータルの額に影響が内容工夫されている」と褒めていたようですので、どうやら実現しそうですね。

2009年9月28日 (月)

対等な関係は対等な義務の履行から

立て続けに北澤防衛大臣ネタです。
前回も取り上げた日経新聞の記事で、北澤防衛大臣は日米地位協定の改定について、日本政府が求める犯罪容疑者の起訴前の身柄引き渡しは、「(日米両国は)民主主義国家なので十分な理解が得られると思う」と大アマな見解を述べてます。

鳩山首相は、「対等な日米関係」という言葉を良く使います。
それ自体は望ましいことだと思いますし、個人的にも、犯罪を犯した米兵の身柄引き渡しはされてしかるべきモノと考えてます。

ですが、アメリカからすれば、これこそ「対等な日米関係」があってこそのモノでしょう。
条約が片務条約なまま、対等を語るなど矛盾にも程があります。
日本が集団的自衛権の行使について解釈を変え、アメリカに向かう弾道ミサイルを打ち落としたり、米軍艦艇を防護して初めて、身柄引き渡しも要求できるでしょうし、アメリカも認めざるを得ないでしょう。

対等な関係を主張するなら、対等な義務を果たしてからです。

2009年9月26日 (土)

中国の冒険を助長する

北澤防衛大臣は、与那国への陸自配備に否定的な見解を述べています。
陸自与那国配備を否定「隣国刺激する」 防衛相きょう来県」(沖縄タイムス09年9月25日)
与那国島への陸自配備を撤回 防衛相インタビュー」(日経新聞09年9月24日)

北澤防衛大臣は、「いたずらに隣国を刺激する施策はいかがなものか。今、緊急にそういうことをする情勢にはない」と発言したそうで、与那国への陸自配備の意義を全く理解していないようです。

仰るとおり、陸自配備に緊急性はありません。ですが、与那国への陸自配備は、中国軍の行動に合わせた緊急対応ではなく、先島を防衛するという国家の意思を示すためのものです。
国家百年の計と部隊の作戦行動を混同しているようでは、先が思いやられます。

また、大臣は「隣国を刺激する」の意味を取り違えてもいます。確かに「いたずらに隣国を刺激」する事は良くありませんが、それは、刺激することによって相手の軍備拡張を招き、我が不利になる場合のことです。
与那国への配備が検討されている部隊は、沿岸監視を任務とする部隊であり、攻撃的な性格はもっておらず、中国の軍拡を招くような性質の部隊ではありません。

こう言ったことを理解せずに、相手におもねるような発言をするようでは、中国の冒険主義を助長させます。
今後、中国による日本の活動を懸念するような発言が増えるでしょうし、尖閣を含む先島地方での海洋観測や領海侵犯など、日本の様子見を行う中国軍の活動は活発化するでしょう。

2009年9月24日 (木)

民主党にも受ける

今回は、思いっきり手前みそな記事です。

先日「PAC-3化、民主対応か」という記事をUPしてますが、PAC-3化は、実際に記事で書いたとおり「民主党にも受ける」として、内局主導で決められていたとの記事が東京新聞で報道されています。
防衛省 PAC3追加要求 変わらぬ官僚主導」(東京新聞09年9月15日)記事内容は末尾に転載

記事の論調としては、PAC-3化が、消極的だった航空幕僚監部を内局が押し切った形で盛り込んだモノであることから、官僚主導から政治主導へという流れに反して、官僚(内局)が幅を利かしていることを非難したものとなっています。

基本的に、制服(自衛官)は軍事的合理性でモノを考えます。
そのため、「PACー3化の軍事的合理性」で書いた通り、空幕とすれば蓋然性が高いと考えられる北朝鮮による世論の揺さぶりを企図する弾道ミサイル発射に対して、PAC-3化が大した意味を持たないことから、費用対効果の点でコレに反対することは当然のことです。

一方、内局は軍事的合理性は踏まえつつ、政治的な判断をすることを期待され、置かれています。
民主党が政権を取りそうなら、それに合わせた施作を推進してゆくことは当然のことです。
その意味で、内局の判断は決して間違ってはいません。
国会で通りそうにない予算項目を上げ、削られるばかりで防衛費総額の減少が予想されるなら、少しでも通りそうな項目を上げることが適切でしょう。

今回の件は、内局が内局なりの仕事をした結果だと思います。

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防衛省 PAC3追加要求 変わらぬ官僚主導
 前年度比3%増という積極的な二〇一〇年度防衛費の概算要求を打ち出した防衛省。弾道ミサイル迎撃(MD)に使う地対空ミサイル「PAC3」の追加配備について、「民主党にも受ける」として、「背広組」と呼ばれる内局主導で決めていたことが分かった。MD導入自体が官僚主導で決まった経緯があり、変わらぬ体質が浮き彫りになった。

 防衛省の予算は、「制服組」と呼ばれる陸海空の各幕僚監部がまとめ、大臣官房、防衛政策局などの内局が承認する。PAC3は消極的だった航空幕僚監部を内局が押し切り、九百四十四億円の追加配備費を計上した。

 内局関係者によると、今年四月、北朝鮮が弾道ミサイル「テポドン2」を発射した際、民主党議員からも「地元へのPAC3配備」を求める声が出たという。

 PAC3は、〇四年十二月に閣議決定された〇五年度以降の「防衛計画の大綱」の別表で、「基幹部隊」「三個高射群」と明記されている。

 高射群は侵攻する航空機を迎撃する目的で全国に六個あるが、弾道ミサイル対処のPAC3は埼玉、岐阜、福岡各県の三個高射群に限定して置かれている。

 追加配備は北海道、青森、沖縄各県が増え、「六個高射群すべて」となるため、「防衛大綱の修正が欠かせない」(外薗健一朗空幕長)。だが、民主党は今年十二月に予定される防衛計画の大綱の見直し作業を先送りさせる方針だ。

 関係者は「部分修正なら民主党も応じるはず」というが、「まず空気を読め」と批判する制服組幹部もいる。政権政党となる民主党は「官僚支配の打破」を打ち出しており、防衛省の思惑通りにいきそうもない。

 もともとMDは官僚主導で導入が決まった。事務次官だった守屋武昌被告(収賄罪で有罪判決、控訴中)が「米国は開発に十兆円を投じた。同盟国として支援するのは当然だ」と自民党を説き伏せ、〇三年十二月の閣議で導入が決定した。

 日本のMDは、飛来する弾道ミサイルを洋上のイージス護衛艦が発射する艦対空ミサイル「SM3」で迎撃し、撃ち漏らしたら、PAC3で対処する二段階方式。防衛省は米国からの導入に約八千五百億円を投じている。
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2009年9月23日 (水)

配役に違和感

NHKがスペシャルドラマとして放映する「坂の上の雲」の配役が決りました。
舘、渡・東郷の参謀で念願の海軍軍人役」(朝日新聞09年9月16日)

主役の秋山真之は、「おくりびと」でオスカー俳優となった本木雅弘で良いのですが、連合艦隊参謀長の島村速雄が舘ひろし、東郷平八郎が渡哲也だそうで、こちらの配役にはなんとなく違和感があります。
個人的な感覚かもしれませんが、石原プロが出ていると、どうしても西部警察のイメージのおかげで、考証無視の荒唐無稽な話に思えてしまいます。
「坂の上の雲」は、ドキュメンタリーではありませんが、基本は史実の通りです。

好きな作品がドラマ化されるだけに、ちょっとばかり残念でした。

2009年9月22日 (火)

北澤防衛大臣、さっそく問題会見

北澤防衛大臣が、就任したばかりの17日、臨時記者会見を行っています。
http://www.mod.go.jp/j/kisha/2009/09/17.html
その中で、早速何点か問題な発言をされています。

まず、前回の記事でも書いた、幕僚長や報道官による情報発信に対して、「新しい見解を官の当事者が発言するということは行き過ぎである。(中略)大臣のところまであげて、その上で皆様方にお伝えをしていく」と言っています。
つい先日まで在野にあった者とは思えない専制的な物言いです。
各幕僚長は、防衛大臣の指揮監督を受け、隊務と隊員の服務を監督する立場ですから、大臣の見解と異なることを部隊に実施させてはいけません。
ですが、幕僚として軍事的合理性に基づき政治上の判断とは異なる助言をして行く必要があります。
あくまで「やってはならない」のであって「言ってはならない」のではありません。

次に、専守防衛について聞かれた際、「「戦争というものはするべきものではない」、「戦争は絶対にしない」と発言されてます。
これは裏を返せば、攻勢作戦を実行すれば戦争を起こすことになる、という考え方です。防衛大臣の認識が反戦左翼と同じとははなはだ問題です。
専守防衛というのは、防衛の方策であって目的ではありません。
それに、「私は、終戦の時に小学校1年生でした。「戦争というものはするべきものではない」という基本的な考え方をもっております」と発言されていますが、小学校1年生の時の発想で大臣をやってもらったのでは困ります。
また、これに関連し、防衛計画の大綱と中期防の見直しも専守防衛を基軸として進めるとも言われています。
北朝鮮による弾道ミサイルや特殊部隊による攻撃、中国による南西諸島での活動と軍事力の強化という懸念がある中、冷戦期の遺物を変わらず錦の御旗とするとは考え物です。

また、既に各所で話題になってますが、インド洋での補給活動について、「極めて限定的なところでそういう(高い)評価になっていると私は認識しております。」と発言とされています。
防衛大臣にとって、自衛官は部下です。トップが、部下の士気を考慮していない発言をすることは、思慮が浅いとしか思えません。
なおこの際、「「成果が上がっている」「感謝している」という声も良く聞きますけれども」と発言しており、良く聞くなら評価は高い訳ですから、発言が自己矛盾になってます。

ちょっとびっくりな発言もありました。
小沢幹事長の米国のプレゼンスは第7艦隊だけで十分だ発言に対して、「聞いてないのでよく分からないです。第7艦隊も見たことないです。今度よく勉強しておきましょう。」と発言されてます。
いくら大臣就任直後とは言え、この物言いはないでしょう。そもそも、この方は参議院の外交防衛委員長をもう2年も務めていました。良く分からないでは、通用しません。

最後に、集団的自衛権の問題に関して、そのことに精力を使うことは生産的でない旨の発言をしています。
北朝鮮の弾道ミサイルを考えれば、焦眉の急であるはずの問題について、こんな事を言うようでは、アメリカ、特にアメリカ国民からどう思われるか不安です。

総じて、北澤防衛大臣は思った以上に専制的で左翼的なようです。
果たして、日本の防衛は、この人で大丈夫だろうか・・・・

2009年9月20日 (日)

新防衛大臣に北澤氏

新防衛大臣に、北澤俊美氏が就任しました。

一時は、防衛問題に理解があるのかないのか訳が分からない亀井静香氏が就任するというお話もあったようですが、防衛大臣の重要性から、民主党とすれば連立しているとは言え他党となる国民新党の人間を防衛大臣にすえるのはマズいという判断がされたようです。

北澤氏は、元長野県議会議員の参議院議員で、自民党、新生党、新進党、太陽党、民政党と渡り歩き、現在は民主党所属となっています。
この辺の経緯としては、選挙区が同じ長野県にあるという繋がりから、羽田孜氏について行ったという所のようです。
羽田氏同様に、一貫して選挙による政権交代を目指して来たという姿勢が、北澤氏のHPトップにもある「信念を貫き政権交代を!!」という言葉にも表れています。
北澤
俊美公式HP

もともと自民党出身であり、左翼という訳ではなさそうですが、父親は社会党、民社党を経て無所属となった長野県議会議員のようですし、地盤である長野県が左寄りであることから、保守系左派というところでしょう。
まあ、民主党自体がそうであるとも言えるので、取り立てて問題視しても仕方のない範囲かと思われます。

防衛関係の知見としては、平成19年9月から現在に至るまで参議院の外交防衛委員長をつとめており、それなりの識見はあると思われます。
ただし、それ以前の経歴では、めぼしいものとして羽田政権での農林水産政務次官があるだけで、防衛関係につながるモノは有りません。

防衛大臣として問題かもと思われる点として、民主党の日中経済交流促進議員連盟に加盟している外、北京オリンピックを支援する議員の会幹事をつとめており、若干中国寄りの思想を持っている可能性があります。
ただし、これらに付いても国会議員であれば多かれ少なかれこう言うものはあるので、さほど大したことはないかもしれません。

個人の経歴以外から、多少なりとも推察できる点は、議論好きと言われる長野県民であり、所属する党が少数であっても一貫して選挙により政権交代を目指したと言った所から、教条主義的、あるいは原理主義的な発想を持っており、大臣として必要な現実的な判断が出来ないのではないか、という危惧もあります。

実際、米国から継続を強く求められているインド洋での海上自衛隊の給油活動について、代替案を明示しないまま活動を延長しない方針を明らかにしています。
北沢防衛相、給油活動を延長しない方針明言」(読売新聞09年9月17日)
これは、民主党として主張してきた点なので、北澤防衛大臣一人に帰すべきものではありませんが、とにかく打ち切り、という方針はやはり教条的という印象を受けます。

しかし、一方で、良識があると思える点もあります。
鳩山政権は官僚による記者会見を禁止する方針ですが、北澤防衛大臣は、自衛隊トップの統合幕僚長と陸海空各自衛隊の幕僚長の会見は継続させる方針を明確にしています。
官僚の記者会見、原則禁止…官邸が省庁に通知」(読売新聞09年9月17日)
自衛隊トップの会見は存続 防衛相「実務的」理由に」(西日本新聞09年9月17日)

なんにせよ、過去に防衛関係で目立った発言もないようですので、評価はこれからという所です。

2009年9月18日 (金)

漫画家ツアー

漫画家を対象とした自衛隊ツアーが好評だったそうです。

漫画家対象の「空自」見学ツアーが好評-漫画を描くヒントを提供」(市ヶ谷経済新聞09年9月6日)

救難機を見学する漫画家
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シャツにサインをしてもらった隊員も
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参加漫画家8人のサイン寄せ書き
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各写真共に市ヶ谷経済新聞より

「企画として成り立った後に部隊見学を受けることはあっても、企画のヒントを与えるために著名な方を集め部隊見学ツアーを組むのは今回が初めて」だそうで、今後も同様の企画を計画してゆくとのことです。
これは良い企画ですね。
記事では、漫画家の方に受けた事を評価していますが、それよりも、これを契機として漫画の中で自衛隊が取り上げられ、しかも好意的に描いてもらえれば、広報効果は非常に高いものになります。

漫画家だけでなく、今後は映画関係者や小説家、ゲームクリエイター、ついでに私のようなブロガーなどにも対象を広げて行ったら如何でしょうか。

2009年9月16日 (水)

H22概算要求-概観

民主党が選挙で圧勝したため、そのまま出すのか疑問がありましたが、防衛省も来年度の概算要求を上げました。
http://www.mod.go.jp/j/library/archives/yosan/2010/yosan_gaiyou.pdf
仕切り直しになることは間違いないので、実現可能性は別として、平成22年度に防衛省が何をしようとしていたのかについて、公開された概算要求資料を見てみます。

細かいことは、別に記事にするつもりなので、今回は概観のみです。

資料をプリントして、まず感じたことは、資料が厚くなっていることです。
比べてみると、H20年版が35ページ、H21年版が40ページ、H22年度版は43ページ(各年度版とも表紙等を含む)と、年々厚さが増してます。
22年度の要求は額が増えているということもあるでしょうが、より詳細な説明がされるようになってきているということでしょう。

さて、では大項目を見てみます。
最初は「事態の抑止・実効的対処による我が国の防衛・安全確保」となっており、周辺の軍事バランスの悪化を踏まえて、質的にも量的な面でも、対処能力の向上を意図した書き出しになっています。ちなみに、要求額自体が低下していたH21の概算要求では質的向上だけがうたわれています。

次の2項目が「地域環境・秩序の一層の安定化」と「グローバルな安全保障環境の改善」となっており、事態の抑止という直接的なアプローチではなく、国際的な協力の中で、環境自体に影響を与える間接的なアプローチも採ってゆくことが書かれています。

4項目めは、以前まで小項目だった宇宙関連が大項目に格上げになり、「宇宙関連事業及び気候変動対策等への取組」となりました。宇宙関連を重視していこうと言う姿勢の表れです。

昨年、トップ項目だった「防衛省改革」は、5項目めにやっと出てきます。本格的な改革はこれからですが、喉元を過ぎたという所でしょうか。

6項目めは、「人的資源の効果的・効率的活用」です。ここ10数年、人を増やすことをなく部隊や任務を増やしてきましたが、護衛艦の火災などの問題の背景に実員不足があることから、やっと充足率の向上やメンタルヘルスに積極的に取組むことにするつもりのようです。

7項目めは、「教育・研究体制等の強化」ですが、これは毎年念仏のように唱えられているだけで、実態を伴っているのか疑問です。

8項目めは、「合理化・効率化への取組」となっており、装備品の集中調達などです。防衛産業への影響が多きいですが、集中調達は、完全に固定化した感じですね。

9項目めは、「米軍再編への取組」。
10項目めの「基地対策等の推進」と相まって、目新しいモノは少ないものの、はずせない項目というところでしょう。
米軍再編への取組の内、昨年度は要求しながら落ちてしまった「民活事業」というのが、少し気になります。これってPFIでしょうか。

全体として見ると、中国の海空軍力の増強に対応してか、海空関連のモノが目に付きます。
陸関連は、新戦車の装備が新たに新規として要求されてますが、それ以外は訓練の実施などソフト面の施作がほとんどです。

冒頭に、「平成22年度概算要求の考え方」というページが付いたことも、従来と異なっている点です。
総額が上がっていることや、防衛費の圧縮を主張する民主党政権の発足を見越して、より省といての主張を理解してもらおうとする姿勢の表れでしょう。
こうした努力が実を結び、防衛問題が国民にとって、より身近なものになってくれると良いのですが、果たしてどうなりますやら。

2009年9月14日 (月)

スバルの反乱

富士重工業がアパッチの発注中止に伴い、防衛省にライセンス料などの支払いを求めるそうです。
戦闘ヘリ発注中止「500億円払え」 富士重工、請求へ」(朝日新聞09年9月2日)記事内容は末尾に転載

先日、関連する記事「朝日に心配してもらうとは・・・
を書いたばかりですが、中小下請けではなく、大手企業が防衛省にたて突く事態が生じるとは驚きです。

正直アパッチの発注中止経緯について十分に承知している訳でもないので、その点についてのコメントは差し控えますが、どうも富士重工のビジネスの進め方が間違っていたようなお話もあるようで、構造的な問題ではないようです。
ですが、富士重工が民事訴訟まで視野に入れて支払いを求めるということは、最悪のケースでは、防衛省から干されて防衛装備の生産から撤退することも覚悟しての事でしょう。

ヘリに関しては、最近は防衛省も欧州機の輸入が広がっているため、富士重工としては市場が圧迫されるという認識もあっての事だとは思いますが、他にもT-7なども製造している訳ですし、防衛装備生産の大手(富士重工のサイトには、防衛装備についての言及がほとんどないくらいなので大手とは言いかねるかも知れませんが、少なくとも有名企業です。)にまでこんな決心をさせてしまうと言うことは、防衛省の対応にも問題があったのでしょう。

以下、朝日の記事内容の全文転載
********************
戦闘ヘリ発注中止「500億円払え」 富士重工、請求へ
2009年9月2日3時0分
 富士重工業は1日、戦闘ヘリコプターを発注した防衛省に対し、500億円弱の支払いを求める文書を提出する方針を固めた。米国企業に払った生産ライセンス料を発注機数で割って国から回収しようとしたが、同省が当初計画数に達しないまま発注を中止。回収できなかったライセンス料などは、本来国が負担すべきものだと主張する。

 文書は月内に防衛相あてに出し、2~3カ月間で支払いの意向が得られなければ、民事訴訟を起こす構えだ。機密管理の必要性などから、国と少数の企業が「蜜月」関係を保ってきた防衛業界で、企業側が国に「反乱」を起こすのは極めて異例だ。

 防衛省は01年、戦闘ヘリ「AH64D(愛称アパッチ・ロングボウ)」を62機導入することを決定。生産を担う富士重と関連部品メーカーは、米ボーイング社へのライセンス料など四百数十億円を払った。富士重は、これを62分割して1機ごとの代金に上乗せし、国から回収する予定だったが、防衛省は02~07年度に計10機を発注した後、発注を打ち切った。1機約80億円という購入費に対し、政府内で高額だとの批判が上がるなどしたためという。

 富士重はその後、防衛省に「ライセンス料などの初期費用は本来、国が支払うべき経費。業界の慣行上も国が支払ってきた」と主張。一方、防衛省側は「国会の承認に基づいて単年度ごとに契約しており、富士重に何らの債務も負っていない」と反論。話し合いは平行線をたどってきた。

 10年度の概算要求でも防衛省がアパッチの予算計上を見送ったため、富士重は「今後の受注が復活することはない」と判断。未回収のライセンス料約400億円に加え、すでにボーイング社から購入した3機分の部品代金100億円弱も請求する。(大日向寛文)
********************

2009年9月13日 (日)

1ヶ月で辞任

先日、このブログでも取り上げた森本大臣補佐官ですが、わずか1ヶ月で辞任ということになりました。
http://www.mod.go.jp/j/kisha/2009/09/11.html

と、言っても不祥事があったわけでもなんでもなく、自民党の敗北と内閣の辞職に際して、森本補佐官の方から辞職の申し出があったとのことです。
「民主の下でなんか、やっていられるか!」なのか、あるいは首を切られる前に自分から辞したというところかもしれません。

辞職に際して、防衛大臣が所感を述べてますが、こちらが印象的でした。
「結果論なのです。選挙でこういうことになると思っていませんでしたし、中略、我々の不甲斐なさで、今回このような結果になって、大変申し訳なく思っております。」

2009年9月11日 (金)

横田基地フレンドシップフェスティバル2009 その4(オマケ編)

このシリーズ最終回として、会場で見つけた面白いモノなどをまとめてみました。


ゲート前のコンディションなどを表示する表示板
普段から外から見えるところに表示しているので、ことさら隠す必要はないと思いますが、この日は外されていました。

続いて、インテークカバーなどの部隊マーク等のコレクション



F-16


A-10だったか?


F-15


F-18


RF-4


F-22


E-3

続いては、やはり広報には野郎よりも女性が良いと考えているのか、やたら目に付いた女性クルー集


F-15の女性パイロット


F-18


こちらもF-18ですが、こちらはパイロットではないもよう。
1カットに2人も写ってます。


MC-130Pのクルー
給油が主任務とは言え、結構危険な場所にも進出するはずですが、彼女たちも搭乗するのだろうか。(聞けば良かった)

お次は、ターミナル横にある横田基地の空からの玄関
日本庭園です。


結構値も張るはずのビジョン付き(常設)

Home of the Samurai Warrior

日本語のウイング・マーク

E-3のパイロット(だったか?)


お昼は、航空祭などではすっかりおなじみとなった感のある佐世保バーガー
でかいです。
これと比べたら、マクドナルドのクォーター・パウンダーなんてミニですね。バーガーキングのワッパーはかなり大きいですが、それよりも更に一回り以上大きいです。これ1個だけで十分。
知名度が高くなったせいか、1時間以上並んで待ちました。

最後に、少しマジメなネタを

軽装甲機動車などを展示していた防空指揮群隊員のTシャツ
背中には大きくJASDF(航空自衛隊の英語略)の文字
空自でCANPの単語を使用しているのは初めて見ました。
航空総隊司令部と防空指揮群が横田に移動する準備として、既に横田に常駐している分遣隊があるようです。
Communications & Electronics Squardronとあるので、通信電子隊ですね。

以上で、4回シリーズとなった横田基地フレンドシップフェスティバル2009レポートは終了です。
さて、他にも出撃するかな。

2009年9月 8日 (火)

横田基地フレンドシップフェスティバル2009 その3(警備編)

その3は、個人的に興味のある警備編です。



ゲートに設置されている車両の突入防止装置
せり上がると同時にスパイクでタイヤをパンクさせるものと、プレートが跳ね上がる形式の2段構え。
厳重ではありますが、所詮は人が運用するもの。これがあっても数年前には車両がエプロンまで進入する事案も発生してます。


保全上の要求の高いF-22とE-3は、他の機体と離して展示され、警備の要員がついていました。


両端に車両も配置しています。


装備はM4と拳銃、無線機など
水も必需品


M4はレーザーポインター付き。
やはり撃つ場合も、致命傷は与えないように精密な射撃をするためでしょう。
しかし、この取り付け位置で、ちゃんと見えるのか?


こちらは、会場全体を見回す警備クルー。
監視カメラも見えます。
結構気を使う仕事です。


最後に、空自の展示品
軽走行機動車、運転席に乗り込むこともOKでした。
この他、防弾チョッキとヘルメットの試着もやってました。

あと、他のブログを見て知ったのですが、警備犬を含めた警備の訓練展示をやっていたそうです。ちゃんとプログラムを見ていなかったので見逃した!

その4ではオマケ編をお送りする予定です。

2009年9月 6日 (日)

横田基地フレンドシップフェスティバル2009 その2(他展示機編)

今回はF-22以外の地上展示機について紹介します。

まず、警備の厳重さに見られるように、F-22並みに重要でありながら、周囲にはまばらな人しかいない哀れなE-3AWACS。


F-22と並べられていたのは、警備上の観点からでしょう。
この2機種だけは、銃を携行した警備の人員が張りついています。



朝方だけ、特徴的なロートドームが回ってました。



テールコードはZZ。嘉手納の機体です。



コックピット後部に、最新式のブロック30/35に特徴的な張り出しがあります。ESMアンテナなどを収めており、これによってパッシブ捜索も可能になります。


EYES OF THE PACHIFIC 太平洋の目

続いて、マニア以外にはたぶん注目されない珍しい機体MC-130Pコンバット・シャドウ特殊作戦機
主な任務は、特殊作戦を行うヘリへの給油です。

輸送機であるC-130とは異なり、機体周辺には立ち入れないようになってました。


両翼下に装着されている共通型スリップウェイ搭載空中給油装置(UARRSI)(たぶん)


機首下の航法関係機器?

後は注目機体がなかったので、一気に行きます。


F-16 WP(クンサン)、OS(オーサン)共に韓国から



三沢からも。こちらはコックピットも公開


A-10も韓国オーサンから


F-15は嘉手納の機体



F-18 岩国のマリンコ


KC-135は中も公開してましたが、列が長いので入らず。


C-5


C-17




C-130 空自機と比べると、最近装備されたらしい自己防御用装備が豊富


C-12J


UH-1N


UH-60A


セスナ172

つづいて自衛隊機

F-2 三沢からかと思ったら岐阜の機体でした。


RF-4


海自のLC-90


C-1に


T-4


百里に移動したF-4EJ改。
米軍機、空自機ともに、2日に渡るスケジュールのためか、トラベルポッド(カーゴポッド)を付けている機体が多かった。


海自P-3C


U-125A


C-130H


CH-47JA(陸自)


SH-60K(海自)


UH-60JA(陸自)


UH-60J(空自)


UH-1J


OH-6D

これで全機です。

次回は、警備関係をまとめてみます。

2009年9月 2日 (水)

横田基地フレンドシップフェスティバル2009 その1(F-22編)

横田基地で8月22日、23日の2日間に渡って開催された日米フレンドシップフェスティバルに行ってきましたので、そのレポートです。

プログラムは両日で大差ないので、行ったのは2日目の23日日曜日、1日だけです。
横田基地ウェブサイトを見ると両日で17万人超の来場者があったそうです。
Friendship Festival draws more than 170,000

飛行展示はほとんどないにも関わらず、スゴイ人出です。
なにしろ、今年は目玉中の目玉がありました。



第1戦闘航空団第94戦闘飛行隊のF-22ラプター2機です。
この2機は、現在ラングレーから沖縄嘉手納基地に展開中で、先月行われた嘉手納のアメリカフェスト2009に続き、アメリカ以外では2回目の公開となるものです。


当たり前ですが、インテークなど重要な部分は隠されており、実機を目にしたからといって性能について語れるほどの材料は得られません。

それでも、今まで写真で見ていた以上にキャノピーの色が濃いことは印象的でした。



コックピット内にレーダー波が入り込み、乱反射することを抑える意図があるんでしょう。
F-16なども多少色が付いていますが、比べて見ると歴然とした差があります。


F-16

F-18
在来機のキャノピーに色が付いている主な理由は、自然の放射線からの乗員の防護です。ステルス性という訳ではありません。

その他感じた点としては、やはり表面の処理が丁寧なこと。ビス頭もほとんど見えません。



この辺りが、整備コストの高さに繋がってくるんでしょうね。
アンテナ類も埋め込みになっている訳ですが、はたしてどうなっているのか?興味が湧くところです。


拡大しないと分かり難いですが、他の機体では派手に描かれている緊急時の救出用レバーの位置表示などもロービジ塗装となっています。
また、部隊のマークもさり気なく描かれてました。



2名のパイロット、ともに右肩に日本語の入ったワッペンを付けています。嘉手納への展開にともなって作ったんでしょう。

F-22そのものは、もちろん興味深いものでしたが、もう一つ興味深かった点は、その注目度の高さです。
群がる人の多さはもちろんダントツです。
加えて、一眼レフを構えたマニアだけでなく、コンパクトカメラはおろか携帯写メで写真を撮っているギャルもいるなど、知名度の高さも感じさせられました。
「カッコイイ」なんて声を上げている人もいました。純粋に外観はカッコイイわけじゃないと思うんですが、最強と聞くとそれがかっこよく見えるんでしょうね。

次回はその他の地上展示機編です。

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