H22概算要求-概観
民主党が選挙で圧勝したため、そのまま出すのか疑問がありましたが、防衛省も来年度の概算要求を上げました。
http://www.mod.go.jp/j/library/archives/yosan/2010/yosan_gaiyou.pdf
仕切り直しになることは間違いないので、実現可能性は別として、平成22年度に防衛省が何をしようとしていたのかについて、公開された概算要求資料を見てみます。
細かいことは、別に記事にするつもりなので、今回は概観のみです。
資料をプリントして、まず感じたことは、資料が厚くなっていることです。
比べてみると、H20年版が35ページ、H21年版が40ページ、H22年度版は43ページ(各年度版とも表紙等を含む)と、年々厚さが増してます。
22年度の要求は額が増えているということもあるでしょうが、より詳細な説明がされるようになってきているということでしょう。
さて、では大項目を見てみます。
最初は「事態の抑止・実効的対処による我が国の防衛・安全確保」となっており、周辺の軍事バランスの悪化を踏まえて、質的にも量的な面でも、対処能力の向上を意図した書き出しになっています。ちなみに、要求額自体が低下していたH21の概算要求では質的向上だけがうたわれています。
次の2項目が「地域環境・秩序の一層の安定化」と「グローバルな安全保障環境の改善」となっており、事態の抑止という直接的なアプローチではなく、国際的な協力の中で、環境自体に影響を与える間接的なアプローチも採ってゆくことが書かれています。
4項目めは、以前まで小項目だった宇宙関連が大項目に格上げになり、「宇宙関連事業及び気候変動対策等への取組」となりました。宇宙関連を重視していこうと言う姿勢の表れです。
昨年、トップ項目だった「防衛省改革」は、5項目めにやっと出てきます。本格的な改革はこれからですが、喉元を過ぎたという所でしょうか。
6項目めは、「人的資源の効果的・効率的活用」です。ここ10数年、人を増やすことをなく部隊や任務を増やしてきましたが、護衛艦の火災などの問題の背景に実員不足があることから、やっと充足率の向上やメンタルヘルスに積極的に取組むことにするつもりのようです。
7項目めは、「教育・研究体制等の強化」ですが、これは毎年念仏のように唱えられているだけで、実態を伴っているのか疑問です。
8項目めは、「合理化・効率化への取組」となっており、装備品の集中調達などです。防衛産業への影響が多きいですが、集中調達は、完全に固定化した感じですね。
9項目めは、「米軍再編への取組」。
10項目めの「基地対策等の推進」と相まって、目新しいモノは少ないものの、はずせない項目というところでしょう。
米軍再編への取組の内、昨年度は要求しながら落ちてしまった「民活事業」というのが、少し気になります。これってPFIでしょうか。
全体として見ると、中国の海空軍力の増強に対応してか、海空関連のモノが目に付きます。
陸関連は、新戦車の装備が新たに新規として要求されてますが、それ以外は訓練の実施などソフト面の施作がほとんどです。
冒頭に、「平成22年度概算要求の考え方」というページが付いたことも、従来と異なっている点です。
総額が上がっていることや、防衛費の圧縮を主張する民主党政権の発足を見越して、より省といての主張を理解してもらおうとする姿勢の表れでしょう。
こうした努力が実を結び、防衛問題が国民にとって、より身近なものになってくれると良いのですが、果たしてどうなりますやら。
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