「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書-その他
「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書には、集団的自衛権の問題以外にも、興味深い内容がかなりあります。
そこで、その他の興味深い点について、まとめて見ました。
・多層協力的安全保障戦略」
産経の記事では、「現大綱で示されている「多機能弾力的防衛力」に代わる概念として「多層協力的防衛力」を提示」と書かれていますが、これは読み間違いです。
ソースを見ると、多層協力的安全保障戦略とは、日本独自の努力や日米同盟だけでは安全保障上の問題が解決できない、として、①日本自身の努力、②同盟国との協力、③地域における協力、④国際社会との協力という4段階のアプローチが必要としているものです。
そして、この中の「日本自身の努力」の一項目として、引き続き多機能弾力的防衛力の整備をすると謳っています。
他の部分の記述にもあらわれているのですが、アメリカの力だけでは解決できない、という状況認識が随所に見られるように思えます。
・専守防衛
報告書は、この言葉が「不必要なまでに広く解釈されることは好ましいことではない」と書いてますが、対案と言えるキーワードは提示しておらず、この点では歯切れが悪い提言になっています。
大きな問題ほど国民に問うべきで、キーワードを提示しないのは良くないでしょう。
・武器輸出三原則
報告は、装備品を一国のみで多額の経費とリスクを負担し取得することはもはや現実的ではないとの認識の下、国際的な技術の発展から取り残されるとして、武器輸出三原則の緩和を求めています。
確かにその通りですし、否定するつもりは毛頭ないですが、日本製の兵器を普及させることにより輸出先の防衛政策をコントロールできる、と言った、もっと積極的な提言が欲しかったところです。
また、共同開発等に参加する場合、開発等の成果を第三国へ移転させることに支障がある旨の記述があり、SM-3地上型などで既に問題となっている可能性がかい間見えます。
・敵基地攻撃能力
「日米共同対処を前提としつつ、米国との間で適切な役割分担を協議・具体化しながら、日本として適切な装備体系、運用方法、費用対効果を検討する」とされており、安易な推進を戒めている感があります。
ターゲッティング能力と一体で検討されなければ意味のない分野ですので、この点報告書は妥当な提言に留めていると評価できます。
・早期警戒衛星
産経は、よっぽど盛り込みを期待していたのか、わざわざ見送ったと書いています。
ですが、以前の記事で書いた通り、盛り込まれなくて正解です。
ソースでは、「米国から提供される早期警戒情報を活用することが今後も有効」として独自の早期警戒衛星については、見送りどころか否定的した。
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