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2009年8月10日 (月)

「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書-集団的自衛権の行使

今回は、前回紹介した「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書の目玉の一つとなっている集団的自衛権の行使に関するに政府解釈の変更について書いてみます。
全60ページある報告書の内、集団的自衛権について記載した箇所は、実際には少ししかないので、最初にその部分を転載します。
********************
(2)法的基盤の確立
安保法制懇談会では、「米国に向かうミサイルを迎撃すること」、「日米が共同で活動している際に米軍艦船に危険が及んだ場合にこれを防護すること」は、いずれも同盟国として果たすべき日本の任務であり、これらが常に可能となるよう、警察権や武器等防護の論理によらずに、集団的自衛権に関する従来の政府解釈を変更すべきである旨提言された。本懇談会は、この提言を強く支持し、これらの論点について以下のように考える。
① 米国に向かうミサイルの迎撃
北朝鮮の弾道ミサイルの性能が向上することにより、その射程には、日本全土に加え、グアム、ハワイなど米国の一部も含まれ、日米は共通の脅威にさらされることとなる。ミサイル防衛システムは日米の緊密な連携により運用されるものであること、またグアム、ハワイ等は日本が攻撃を受けた際に米軍が来援する拠点であることから、米国に向かうミサイルを迎撃することは、日本の安全のためにも必要であり、可能な手段でこれを迎撃する必要がある。従来の集団的自衛権に関する解釈を見直し、米国に向かうミサイルの迎撃を可能とすべきである。
② 米艦船の防護
本年(2009 年)4 月の北朝鮮によるミサイル発射の際には、自衛隊と米軍の艦船が日本海に展開したが、未だ日本に対する武力攻撃が発生していない状況で公海上の当該米艦船に対する攻撃が行われ、かつ、これが自衛隊艦船に対する攻撃と認めがたいとき、自衛隊の艦船が米軍艦船を防護するための法的根拠は見いだしにくい。
しかし上述のとおり、弾道ミサイルへの対処は、日米が緊密に連携して行うものであり、ミサイルの警戒にあたる米軍艦船について自衛隊艦船が防護できないとすれば、日米同盟の信頼性の低下を招き、北朝鮮に対する有効な軍事的対処ができなくなり、日本の安全を大きく損なうおそれがある。したがって、このような場合においても自衛隊が米艦船を防護できるよう、集団的自衛権に関する解釈の見直しも含めた適切な法制度の整備が必要である。
********************

報告書では、兵器の名称には触れていません。
ですが、① 米国に向かうミサイルの迎撃に関しては、具体的にはイージスSM-3によって、ハワイやグアムに向けて発射されたミサイルの迎撃を行うべき、という内容です。
SM-3、特に開発中のBlock IIであれば物理的には可能でしょうから、これはもう軍事上の話というより、政治・外交上の話です。
日米同盟が片務状態であることなど、多くのアメリカ人は承知していません。
日本がアメリカのコミットメントを求めながら、ハワイやグアムを見捨てるような行動を採れば、日米関係は急激に悪化します。
イザその時になってから法解釈論議をしている余裕はないので、これは報告書の提言どおり、解釈変更を行っておくべきです。

個人的な見解としては、FPS-5などで捕らえた迎撃に必要な航跡データをアメリカに提供している以上、現状でも既に集団的自衛権を行使している状態だと思っています。
もし、米軍のイージスが1隻も日本近海に展開していない状態で、北朝鮮が不意に弾道ミサイルをグアム方面に発射した場合、下甑島のFPS-5などが航跡を捕らえ(車力の米軍AN/TPY-2レーダーは、監視範囲などの点から、グアムに向かう航跡を捕らえられない可能性が高い)、航跡データがJADGEを通じて米軍のネットワークに流され、それを元にハワイグアム方面のイージス艦がSM-3を発射して迎撃すれば、これはもう、どう考えても集団的自衛権の行使でしょう。

② 米艦船の防護は、もっと切実な問題です。
日本のBMD対応イージス艦は4隻体制の予定ですが、北朝鮮がノドンの使用を使用して日本を攻撃する場合、200発以上の弾道ミサイルを迎撃しなければならない可能性があります。
時間的な飽和状態にならなるか否かはハッキリ言えませんが、短時間に集中して発射されれば、おそらく飽和する可能性が高いと思われますし、そもそも200発ものSM-3弾を保有していません。
自ずと米海軍のイージス艦による迎撃にも期待しなければならない訳です。

報告書では、米海軍艦艇の防護を自衛隊艦艇が行うことのみが記述されていますが、艦艇に対する攻撃は、SSMだけでなく北朝鮮軍機による攻撃の可能性もありますし、飛来するミサイルの迎撃のみを考えるとした場合でも、AAM-4改であれば、艦艇に向かうSSMやASMも迎撃できます。
当然、空自機によるエアカバーを行わなければならないケースも想定される訳です。

米海軍艦艇に守られていながら、その艦艇を守ることが出来ないなどという論は、どうやっても通りません。
集団的自衛権が行使できなければ、日本自体を弾道ミサイルの脅威から守ることが出来ないのです。

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コメント

カキコ二回目になります。
大体同意です。
ただ・・・
>北朝鮮がノドンの使用を使用して日本を攻撃する場合、200発以上の弾道ミサイルを迎撃しなければならない可能性があります。
日本はPAC3も装備しています。頭数を仰るのでしたらこちらを数に入れなければなりません。
また弾の数と発射機の数は同じではありません。
弾道弾を放つのでしたら燃料注入などの予兆があるはずです。地下に隠しながら行うという手も発射基が多すぎれば
外でやらざるを得ませんし。アメリカの報復攻撃もありますから、うかつに北朝鮮が日本めがけて撃つという行為は
なかなか難しいのではないでしょうか。

もちろん、だからといって具体的な策を練らないというわけじゃありませんが

ナオ様
いらっしゃいませ。

弾数については、PAC-3はポイントディフェンス用で非常に狭い範囲に落下する弾道ミサイルしか迎撃できないため、こういう時にはカウントしない方が適当だと考えてます。
ちなみにPAC-3での防護範囲については、次の記事も見てください。
http://kuon-amata.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/pac-3-1da0.html

弾数と発射機の数が違うというのはその通りですが、ノドンハントはやろうとしても事実上難しいです。
ノドンの発射機は移動式のTELですし、燃料注入は事前に行ったまま移動ができるからです。
直前に燃料注入が必要だとする情報が蔓延していますが、誤情報です。次の記事も参考にして下さい。
http://kuon-amata.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/post-bfcf.html

ご指摘の通り、実際には北朝鮮が弾道ミサイルを撃ち込んで来ていない理由はアメリカの報復ですね。
だからこそ、集団的自衛権の行使が必要ではないでしょうか。

まあ、なんというか。
日本国憲法前文の如く「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」のであれば、日本上空を通過して他国に被害を与えんとする弾道ミサイルを撃墜することについて、憲法が大好きな皆様がなぜ否定的な姿勢なのか、私はいまいち理解できなかったりします:-P
集団的自衛権に否定的な論は、得てしてそのような倫理的矛盾を抱えていますよね。

ともだお様
いらっしゃいませ。

仰るとおりですね。
ただ、こういった文書が懇談会程度とは言え、政府関係者から正式な報告書として出てくるほどに、情勢は変化して来ていることは確かですね。
解釈変更あるいは憲法改正に、機が熟しきったとは言えないものの、熟してきていることは間違いないと思います。

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