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2009年7月14日 (火)

ハイテクも大事だが

テロ対策用に産学官で開発されて来たハイテク機器が実用化される見通しだと報じられています。
テロ阻止、先端技術の出番 日立や東芝、小型爆弾発見2秒など 」(日経新聞09年7月2日夕刊)

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 小型爆弾や生物兵器などテロ兵器の対策として産学官が開発してきた防護機器が、2~3年後にも実用化する見通しだ。日立製作所は小型爆弾を瞬時に発見する装置を試作、実証試験に着手するほか、東芝などは生物兵器となる病原体の検出技術を開発、今月から警察などに導入を働きかけ始めた。テロ兵器は身近な材料とハイテクで急速に高度化しており、脅威が増している。海外も日本の先端技術に注目している。

 日立の装置は海外のテロ事件で使われ問題化している小型爆弾をわずか2秒で発見できる。大きさは約60センチメートル角で100キログラム。物質の重さから物質の種類を特定する質量分析装置を応用した。
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日立の装置は、プラスチック爆弾から揮発する微量物質を感知するもので、東芝の物は生物兵器の検知用のようです。

私が現役時にも、防衛庁(当時)に爆弾検知装置など同種の機器が売り込みされていましたが、眉唾物とまでは言わないものの、どれも性能は不十分でした。
報じられているものが果たして本当に使い物になるものなのかは分かりませんが、興味があるところではあります。

これ自体は、少しも悪いニュースではありません。ですが、日本のテロ対策は、こう言ったハード面よりも、運用などソフト面に問題が有り過ぎます。

その良い例がコレです。
米国製手りゅう弾と判明 旅客機内持ち込み 」(琉球新報09年3月25日)

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機内に持ち込まれた米国製MKII破片手りゅう弾の不発弾(琉球新報より)

不発弾とは言え、爆発する可能性のある生きた手榴弾が、空港のセキュリティチェックを通過し、機内に運び入れられていた訳です。手りゅう弾は、預かり手荷物としてX線検査装置などによるチェックを受けていたはずですが、発見されなかった事になります。
プラスチック爆弾どころか、金属塊である手りゅう弾を見逃している状態ですから、これはもう装置の問題ではありません。
(ただし、多少の弁護をするなら、最新の装置はプラスチック爆弾などを着色して表示する機能があり、検査係はそれだけを見ていた可能性もあります。)

また、この件では、もう一つソフト面の問題が見て取れます。
それは、監督官庁である国土交通省の責任意識の低さです。
この件を報じた別の記事で、国土交通省那覇空港事務所は「このようなケースは聞いたことがない。もし事実なら、原因究明や再発防止に努めるよう要請する」と話した、と報じられています。
セキュリティチェックの直接的責任は、航空会社にあった訳ですが、「要請する」ではなく、自己の責任範囲の事項として捉え、国土交通省として対策を講じなければならないにも関わらず、こんな人事なコメントを出しているようでは、ダメです。

新たなハイテク機器が実用化されても、係官や監督官庁の意識など、ソフト面を改善しなければ、テロは防げないでしょう。

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テロ対策」カテゴリの記事

コメント

1 ■ちょっと的外れかも。
琉球新報の記事に関して言うと、これは明らかにハードウェアの能力不足によるものです。ソフトウェアどころではありません。

あそこまで潰れ、半壊している手榴弾だと、余程の経験を積んだ熟練のインスペクター(日本においてさえも2.2σ以上のトップ集団がそれにあたるでしょう)でない限り、判別する事は不可能です。X線での判別というものはそれぐらい難しいんです。特にあそこまで潰れ、炸薬が露出しているような腐食の激しいものは。webに出ている映像なんてものは、珍しく非常によく見えた場合における例示でしかありません。20年くらいの知識・経験がある人でさえ、後になって「あ、あの影はそれ(事故等)を映していたのか」と思うような経験をしてしまいがちなのが、X線によるインスペクトである事を忘れてはならないと思います。もっとも、人体に問題が(主にインスペクタの健康面)発生しても許容するというのであれば、もっと綺麗な透過X線像を見る方法が無いわけでもありませんが…。

それはそれとして、このような状況をX線装置でなんとかしようとするには非常に細く、平行なX線ビームを用いた後方X線散乱(Back Scatter x-ray)撮影装置という高価でかつ、インスペクトに非常に時間が掛かる装置で映像化するしかないです。それなら低密度物質も(ついでに透過X線像も取得すうと)高密度物質の殻に包まれている低密度物質という条件である程度までなら自動的に判別可能になります。ハイテクは非常に大事ですよ。経験の浅い人でも、それなりの水準でインスペクト出来るようになるんですから。

因みに、日本ではどっかの港湾税関に1,2台だったかな(2、3年前の話)。貨物コンテナ毎スキャンできる装置があったはずです(線源は6MeVのライナックから出てきた白色X線をコリメートしています)。これからは空港にも設置数が増えていきます(まだ少ないと思います。あの装置は桁一つ違いますから)。

強いてソフトウェア(運用)レベルの話になるのはどこか。を考えると3インチ程度のインスペクトしてもよく分からない荷物を持ち込んだ場合は、出発時刻を遅らせてでも、持ち込んだ乗客立ち会いのもとで鞄を空けさせ、何を持ち込んだのかを聞く、インスペクターには徹底的に武器に関する知識を勉強させる、模擬ターゲットを大量に用意し、徹底的に訓練させるという部分になるでしょう。

2 ■Re:ちょっと的外れかも。
>さむざむ。様
ちょっと誤解もあるようです。X線の判別で、腐食した手榴弾をソレと分かっていなかったことを非難しているわけではありません。そもそも、そこまで必要はないでしょう。(もちろん分かるに越したことはありませんが)
おそらく、初めてX線画像を見た人でも、荷物の中に金属塊があることは認識できたでしょう。
そして、今回のケースでは、その時点で荷物の中身を開けて確認するべきだったのです。
運用、ソフト面とはそういう事をさしているのであって、X線画像の判別能力の事ではありません。
(もちろんその技量もソフトの内ですが)

ハイテクの重要性を否定している訳でもありません。当然発見するべき金属塊を見過ごしているという、云わば弛んだ状態のままでは、ハイテク器材を入れたところで費用の無駄になると言いたい訳で・・・

それはそれとして、の部分ですが、今回の様な悪意のないケースではなく、本当のテロリスト相手には、そう言った物が必要でしょう。プラスチック爆弾をスーツケースの形状に合わせて加工する程度のことはヤルでしょうから。
高価であっても、空港保安には導入すべきだと思います。

貨物コンテナ毎ですか、トラック毎の器材なら米軍が使っていたのを知っていますが、日本の港湾にもそんなのがあったんですね。1、2台では絶対量が不足でしょうけど。

ソフトウェアの部分ですが、アメリカの場合はFBIかどこかが、抜き打ちで模擬ターゲットを使った空港保安状況の点検をやってます。
日本の場合も、国交省がそういうことをやるべきなんです。


http://ameblo.jp/kuon-amata/

3 ■あれは難しいケースですよ。
というのも、幾つかの理由があるからです。ザックリと羅列すると、1)球状、2)薄い金属に包まれた低密度物質、3)壊れ物、この条件が一番検査し辛いです。オイラの経験上では。

理由は、まずX線透過像はそのX線パスでの密度×厚さの総量によって透過量が決まります。つまり、10g/cm^3の密度で厚さ1cmのものと1g/cm^3の密度で厚さ10cmのものとでは優位な輝度差は出て来づらいのです。金属部分が薄くなればなるほどその傾向はより顕著になるからですし、球状の物体はどこからX線を照射しても密度分布の差が出にくいからです。ま、後者に関してはその分布差が出にくい事を理由に球状であると認識することも可能ですが。それと最後の壊れモノですが、銃身のようにライフリングが掛かったものなら特徴がありすぎなので容易に判別できますが、半壊したものだと特徴点がなさ過ぎて、判断に苦しみます。あの形状だと、下手すれば何らかの化粧品のポンプと誤解したとしても責められません。これが三次元物体を二次元透過像に変換する一般的なX線検査装置の限界です。

個人的には漏れ出た(火薬などが分解されたときに発生する)独特の気体もしくは揮発性物質の分子を同時計測することでより確定的な情報を求めます。当然ながら想像による判別を出来る限り無くし(実際はそれが判断基準なんですが)、分からないものはとにかく手荷物等を空けて検査する必要があると考えますけどね。

その辺を加味すると、単なる二次元像だけではなく、後方X線散乱像、三次元像もしくはマイクロフォーカスX線による俯角画像(当然コンピューターによる形状認識のアシスト機能付き)に爆発・発火物の科学検査まで行うことでようやく誰もが納得できる検査態勢になると思いますが、、検査器一カ所に付き約10億、年間メンテナンス料3000万、インスペクタの教育に最低限一年というコストが掛かるでしょうか。

なお、後方X線散乱を利用した検査装置の数はあくまでも2,3年前のものなので、現在ではもっと増えてる可能性が高いですよ。もっとも、税関が導入した経緯は対テロではなく、コンテナの中に紛れた不法入国者をコンテナを開けずに効率よくインスペクトするためではあるんですが:D

4 ■Re:あれは難しいケースですよ。
>さむざむ。様
さむざむ。氏ほどX線検査装置に詳しいわけではありませんが、手りゅう弾程度で「薄い金属」になってしまうとすると、もう拳銃ほどしっかりしたものでないと発見できなそうに思えますね。
だからこそ、アメリカは全ての手荷物を開けさせて検査したのかもしれませんが。

揮発性物質の分子を同時計測というのは、元記事にもある方向ですね。
たとえ開封検査したとしても、検査官をごまかしやすいスーツケース形状に加工したプラスチック爆弾などは、これを使わないと、後は犬くらいしか手段がないかもしれません。
そういった装置の必要性は否定しているわけではありません。


http://ameblo.jp/kuon-amata/

5 ■古き良き時代だったんですよ。実際のトコ。
インスペクター諸氏が頑張っているのは分かっているんだけれども。

911以前ならば、まだインスペクターの想像を含んだ検査であってもある程度は有効だったんです。しかし、911以降では航空機を用いた自爆テロという、一部有識者が危惧した最悪のシナリオ(当時は可能性が低いながらも…というエクスキューズが付いています)が現実のものとなり、ありとあらゆる今までのお約束的であった爆発物、危険物以外が持ち込まれるかもしれない、という状況ではインスペクタの想像力では対応できなくなってきた。というのが実情です。そのための更なる高精細化、バックスキャッターのような低密度物質映像化に駄目押しのマススキャナを用いた気体分子検査という感じです。流れとしてはハイテクを駆使しないとやってられない。という状況ですね。

因みに今の米国では公用パスポートで入国する時ですらも手荷物検査が行われています。流石に外交行李にまでは「今のところ」手を付けていませんが。前はパスポートの提示だけでパスできたのですが、今はそんなもんです。どれだけ911が米国に衝撃を与えたかを知るちょっとしたエピソードでした。

6 ■あ。そうだ。
どこだったかな。(少なくとも)ロス空港の手荷物検査装置にはありとあらゆる武器の3次元形状及びあらゆる角度からのX線透過像をデータベースにしたものがあり、それを用いた自動フィッティングまで行うものがあります。それこそ週一どころじゃない頻度でデータベースがアップデートされるそうです。その代わり、その保守料金が年間400万ドル超えてるはずです。イラク等で見つかった新型の手製爆弾までDBに詰め込まれていたりしますが、これ(最新の追加DBのこと)、残念ながら日本には打ってくれません。検査機械+基本DBのセットくらいは売ってくれますけど。

7 ■Re:あ。そうだ。
>さむざむ。様
悪意ある人間による航空機を落とすだけでよいモノの持ち込みを防ぐことは不可能でしょうね。
落とすだけでよいものでしたら、実際いくつでも思い付きますから。

青パスでの手荷物検査は、私もやられました。(やばいモノを持っていたわけではありませんが)911以前は形式上チェックしているだけでしたが、以後は「ミリタリーにまでこんなにチェックするのかよ」と思いましたね。

X線で検査した、と言えるためには自動フィッティングまで必要なんでしょうね。
しかし、売ってくれませんか。
確かにDBがなければ意味ありませんよね。


http://ameblo.jp/kuon-amata/

8 ■ええと。
今回、やや過敏な反応を示したのは、足りないのはハードウェアの能力でも人手不足ではない、気合いが足りない。という類の言い方をする人が非常に多くなってきたからです。ハードウェアの能力不足はオペの技術向上でカバーし、人手不足もまたオペの技術向上でカバー、、、ここは何時の時代の組織なんだろう?という感じです。

本来ならば、ハードウェアの能力を向上させることでオペの負担を減らし、ハードウェアではフォローできないより高度で瞬間的な判断にのみ全力で集中させることでより良い結果が出るよう配慮すべきですし、その集中力を維持させるために適度な休憩を取るべきだと思うのですが、いかんせん日本式の管理職の発想は結局根性に行き着いてしまうってのが。ね。とはいえ、楽だから全てを機械任せにする小狡いオペが出ちゃう可能性もあるので、常に何らかの排除手段を作るべきだとも同時に思いますが。

ちょっと脱線するんですが、最近の事務屋さんにその傾向が非常に強く、汎用工具があるんだから専用工具、特種工具は要らない(勿体ない)、防爆工具は脆いし高すぎるから汎用工具に買い直せ、と指示してくる人が増えてきました。専用工具、理屈としては特種工具を使うような馬鹿な設計をするのが良くない、火が付かないように慎重に仕事をすれば良い、大体にして何故そんなに工具を必要とするの?というところですか。

正直、仕事辞めよかな。別口からお誘いも受けてるし、、、なんて思うことも微妙にあります:D

9 ■気合だ!
>さむざむ。様

「気合だ!」という言葉は嫌いなのですが、果たして自分が現役時に部下や部隊指導で「気合だ!」を使わなかったか?と言われると、正直自信がありません。

というのも、人物金全てに不自由な中で指導しなければならないと、後はもう「気合だ!」を言うしか言うことがない、という所があります。
まさか、指揮官が後ろ向きなことを言う訳にはいきませんから、自分ではそう思っていなくても「気合だ!」に類することを言っていたように思います。

仰られるとおり、それを言い訳にするのは良くないんですけどね。

善意に解釈すれば、事務屋さんの言葉にも同じようなところがあるかもしれません。

という訳で、もう少し頑張って下さい。

でも、これも「気合だ!」かな?


http://ameblo.jp/kuon-amata/

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