中SAMの失敗がRIM-4陸上型を生む
RIM-4陸上型の話題は、先日の記事「F-22が高いかどうかはROE次第 」に対してさむざむ。氏から頂いたコメントにも出ていましたし、週刊オブイェクト「XRIM-4が地対空ミサイルとして復活? 」などでも話題になってます。
その背景には、21年度の概算要求に「03式中距離地対空誘導弾(改)の開発」が盛り込まれていた(実際の予算では没った)事でも分かるとおり、03式中SAMのライフサイクルを含めたコストが高すぎることが原因として言われています。
また、良いものが出来たと言われるRIM-4に日の目を見させたいと言う技術サイドの思い入れもあるでしょう。
ですが、RIM-4陸上型が検討される直接的な理由を一言で言えば、中SAM(の配備)が失敗だからでしょう。
これは、中SAMが兵器として失敗作だという意味ではありません。
開発要求を出した陸幕による将来脅威の読み違えと必要とされる兵器性能の算定ミスです。
分かりやすく言えば、情勢に合わないものを作ってしまったということです。
これは、まるで冷戦の終結に合わせるように配備を始めた90式戦車と同じです。
陸幕が愚かだというのは簡単ですが、正直コレを読むのは難しいことです。なにせ、アメリカでも同じ状態のものがあるのです。それは、追加配備が打ち切られたF-22です。(打ち切り派は、イラクやアフガンで活躍の場がないことを根拠にしている。)
中SAMの具体的問題点は、現在そして近い将来に予想される戦略環境において、機動性が不足している点です。
中SAMは、一般的には、ホークと比較し展開布置に要する時間が短縮したことをもって、機動性が向上したと言われます。
ですが、ここで機動性が不足すると言っているのは、展開に要する地積が拡大する等、展開条件がより厳しくなる他、離島防衛など戦略機動における輸送が難しくなったことを言っています。
中SAMは、システムを構成するユニットが大型化し、それこそパトリオット並みと言えるほどです。これは、一言で言えば陸自が運用要求としてパトリオット並みの迎撃性能を求めたからです。
空自のパトリオット導入後、同時期に実施している年次射撃訓練において、当時のホークにいろいろと問題があったこともあり、陸自の隊員が、それこそ垂涎ものでパトリオットを眺めていたことを思えば、このことは理解できなくもないとは思います。
ですが、空自のパトリオットが、全般防空を任ずるFIの活動根拠である飛行場を守るための拠点防空用兵器であることと異なり、野戦防空用であるはずの中SAMを、あれだけ大掛かりなシステムとすることについては、空自内にも疑問の声があったくらいです。
それはともかくとしても、北朝鮮の弾道ミサイルを除けば、近い将来に蓋然性の高い事態は、対中国の離島防衛くらいですが、離島への展開を考慮する場合、時間的な要素も含め、中SAMの機動性では、パトリオットに比べて展開が容易だとは言い切れません。
ホークであれば、CH-47のスリングでの運搬さえ可能でしたが、C-Xが配備されるまでは、中SAMは、パトリオットとともに船舶での輸送しか不可能でしょう。
陸自のSHORADを除いたSAM体系は、中SAMとホークですが、もう一方のホークは改善が図られているとは言え、陳腐化(特に電子的な部分)老朽化が進み、中国機相手でも対処が困難となって来ています。
端的に言えば、今後予想される中国との衝突に際して、ホークは迎撃性能が不足し、中SAMは機動性能が不足するのです。
ここに、RIM-4陸上型を配備する根拠が、実体的にも、そして建前的にも出てきます。この建前的にもというのが実は重要で、財務に対して必要性を訴えることが出来るということです。
もっとも、財務は「あんたら中SAMで大丈夫と言ったでしょう」とは言うのでしょうが、そこはそれ、情勢が変わりましたと言うしかないです。
RIM-4陸上型は、艦載SAMとして検討されていた流れを受け、TVC装置を有した垂直発射方式になるようです。少々おごり過ぎのような気もしますが、改造箇所が少なくて済む分、開発費を抑えるにはその方が良いでしょうし、展開場所の選定上も垂直発射方式の方が便利ですので、運用上も楽でしょう。
このブログでも、先島防衛ネタを何度も記事にしているとおり、離島防衛は留意すべき問題だと思っています。
RIM-4陸上型の将来は、まだ予断を許さないでしょうが、離島防衛に有用な兵器が調達されることは好ましいことだと思います。
なお、以上のRIM-4陸上型の予測は、断片的な情報を元に、推測で書いたものです。ですが、財務を通すためのロジックとしては、コレしかないと思われます。
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