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2009年6月

2009年6月30日 (火)

情報発表は控えるべき

まず最初に、前回記事に書いた東倉里からの弾道ミサイル発射方位ですが、東京の先にはマーシャル諸島があるとのコメントを頂きました。
確かにそうです。この点は見落としてました。アメリカのMD試験場もあるので、ハワイ方面と条件的には変わらないですね。わざとそちらに撃つという可能性も無いわけではないですが、考え難いオプションです。
となると、射距離6000km程度と考えると、どっちに撃っても都合が悪いです。残る可能性は、津軽海峡付近を通ってハワイと米本土の中間あたりを狙うルートかもしれません。
なんにせよハッキリ言えることは、北朝鮮も悩んでいるだろうという所でしょうか。

さて、では本題です。
前回記事にも書いたとおり、北朝鮮が中距離及び長距離の弾道ミサイル発射を準備していると伝えられています。

ミサイル発射の態様がどのようなものになるかについてはまだ予断を許しませんが、複数のミサイルを複数の地点から発射する動きがあり、今頃、政府・防衛省は頭を抱えていると思われます。
前回、4月5日の飛翔体発射の際は、PAC-3を展開させるなど、政府・防衛省は、国民を守る意思を見せましたし、その能力があることも見せました。
ですが、次回の発射では能力の限界が表面化してしまうかもしれません。そうなれば、北朝鮮は軍事行動の際には能力の限界を衝いた作戦を採るようになりますし、日本国民の不安を助長してしまうかもしれません。

今回問題となってくる自衛隊MD態勢の限界は、監視能力、特にイージス艦による監視能力です。(もちろんパトリオットPAC-3による防護範囲の問題もありますが、これはもとより分かっていたことです。)
イージス艦のSPY-1レーダーによって、北朝鮮からの弾道ミサイル発射を監視・観測するためには、北朝鮮近海まで進出するのでなければ、LRS&T(長距離捜索・追随)によらなけばなりませんが、LRS&Tでは捜索範囲(角度)が狭まります。
私も具体的な設定可能数値は知りません(知ってても書けませんが)が、探知確率と捜索範囲(角度)はトレードオフの関係にあり、監視が難しい状況であれば、探知確率を上げるため、より狭い範囲の捜索とせざるを得ません。(この辺りの理論的な話は、リクエストがあれば書きます)

例えば、今回発射地点として予想されている北朝鮮西部の東倉里(トンチャンニ)からの発射を警戒・監視する場合、日本海海上からでは、北朝鮮の中央山脈部を越えた時点でなければレーダーでの捕捉はできないため、レーダー覆域に目標が入った時点では、目標はより高速になっていますから、目標として確立することは、発射直後から捕捉する場合と比べると、かなり困難になります。こう言った状況では、捜索範囲を絞って探知確立を上げないといけません。

また逆に、探知確立を上げるため、捜索覆域を絞った場合、東倉里からの発射方位によっては、例えば南に向け、沖縄方面にミサイルを発射されたケースでは、早期に捜索覆域から目標が飛び出してしまい、探知・補足に失敗する可能性も出てきます。

能登半島沖において、東倉里からの発射を警戒する場合のイージス(LRS&T)捜索範囲例
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更に、今回は東倉里だけでなく、舞水端里(ムスダンリ)や旗対嶺(キッテリョン)からも同時に発射が行われる事が予想されていますし、既に実戦配備が行われているTEL(移動式の発射機のこと)使用のノドンは、これらの有名な発射場とは別の地点から射撃される可能性が高いでしょう。
つまりは、今回必要な監視を行うためには、イージスの監視能力だけでは、完全に不足するということです。
詳しく述べませんが、FPS-3改を装備するサイトも状況は全く同じです。

となると、今回のように複数地点、それも発射地点として予想されていない場所からも発射される可能性を想定しなければならない状況(当然有事もそうでしょう)では、FPS-5による広範囲の監視能力とJADGEとLINK-16によるセンサー統合が極めて重要になります。

もちろん、事前に発射地点を確認して置くことも非常に重要で、自衛隊は既に監視を強めているようです。北朝鮮がコレに反発するコメントを出しています。
北朝鮮、「日本の偵察機を撃墜」と警告 (産経新聞09年6月27日)
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 北朝鮮の朝鮮人民軍空軍司令部は27日、日本が北朝鮮の日本海側一帯への偵察飛行を相次いで行っていると非難、「われわれの領空を少しでも侵犯するなら、容赦なく射撃する」と警告する報道文を発表した。朝鮮中央通信が伝えた。

 同司令部はまた「米国と共謀し、わが国の衛星打ち上げと核実験に関する国連での制裁決議でっち上げの先頭に立っていた日本が、偵察行為に乗り出したことは、許し難い軍事的挑発だ」と主張した。(共同)
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FPS-5、JADGE、リンクが完璧に仕事をこなしてくれれば、例え複数箇所からミサイルを発射されたとしても、前回4月5日と同様に、ミサイルを捕捉追随し、必要があれば迎撃を行うことも可能です。(FPS-5が捕捉し、他の機器に自動配信し追随・対処する。)
ですが、本当に可能か否かは、当事者である防衛省・自衛隊さえも答えられません。
各種センサー(FPS-5、FPS-3改、イージス)の捕捉目標を、JADGEなどの統制システム、リンクを通じて他のセンサーや迎撃手段(イージス、PAC-3)に自動配信(キューイング)するシミューレーション試験は行っているものの、実際に弾道飛翔目標を使った実地試験は行われていません。(予定があるとの情報もなし)
唯一、前回4月5日が実戦でのテストとなり、良好な結果が得られたようですが、複数のミサイルが同時に発射された場合にもシステムが確実に作動するかは、やはり不透明です。

この点について、現役自衛官だった時に、実地試験をやるべきで、その際にこんな試験方法があるといった発案もしていたのですが、主に予算的な理由からNGでした。

もし、ミサイルの同時発射が行われた際に、完璧な捕捉追随ができなければ、そしてその事が北朝鮮にも明らかになってしまえば、北朝鮮は例えMDがあったとしても、弾道ミサイルによる有効な戦術が可能だと認識してしまいます。
また、どんな方法を採れば、MDによる迎撃を回避し易いかも認識してしまうでしょう。

という訳で、早ければ7月初旬にも行われる可能性があると見られる北朝鮮による弾道ミサイル発射に当たっては、前回4月5日のような詳細な情報発表は行うべきではありません。
完璧な仕事ができればOKですが、ノドンまで含めた同時発射が行われれば、それはおそらく不可能です。
そして、北朝鮮とすれば、欠落した情報が何かを判断すれば、MDの盲点が把握できてしまいます。

国民に安心を与えることも必要ですが、今回のように、防衛の現場に与えるマイナスの影響が大きい場合は、一切発表せずでも良いはずです。
今の内から発表しないことをアナウンスしておけば、それほどの不安・混乱は起こらずに済むのではないかと思います。

2009年6月28日 (日)

こんどは東京

北朝鮮北西部の東倉里(トンチャンニ)で発射準備が進められている弾道ミサイルの発射方位について、防衛省が青森上空を通過してハワイ方面に飛翔するコースを予想していると報じられています。
北ミサイル、来月上旬にも発射・青森通過か…防衛省分析 (読売新聞09年6月18日)

報道の内容は、4月5日に発射されたミサイルと同等の性能(射程4000~6500キロ)を前提として、防衛省としては、〈1〉沖縄〈2〉グアム〈3〉ハワイ―の3方向に発射される可能性があると予測しており、その中でも、青森県上空を通過するハワイ方面の可能性が高いと予測している、というものです。

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ピョンヤンを中心とした、正距方位図法での地図

沖縄方向は、ブースター落下が中国沿岸になり、それによって中国の反発を招くために可能性が低いとされていますが、中国の反発はどの方面に撃っても大差ないでしょう。
それよりも、沖縄方面に飛翔させた場合、射程を考えると、弾頭部や3段目ブースターがインドネシアやオーストラリア、それにフィリピンなどの陸地、あるいは回収可能な浅い海に落下する可能性があり、北朝鮮としては現物を回収され解析されることを嫌うでしょうから、確かにその可能性は低いと思われます。

次に、グアム方面の場合、読売の報道にもあるとおり、1段目ブースターが韓国あるいは日本の中国地方に落下する可能性が高く、この場合もミサイルの情報を守りたい北朝鮮としては避けたいケースです。

最後にハワイ方面の場合、ブースターや弾頭部が回収される可能性が低く、アメリカへの圧力にもなるため、コレを選択するだろうと報じられている訳ですが、ハワイにはSBX(海上配備Xバンドレーダー)が展開している他、MD関連施設も多数あり、北朝鮮とすれば、回収されなくともかなりのデータが取られることになります。
また、安全性という点では必然性はなくとも、ハワイの手前で、イージスによる迎撃が行われる可能性もあります。現在のSM-3ブロック1では、ハワイ近海まで飛翔する弾道ミサイルの迎撃の可能性は低いと思われますが、アメリカはギャンブルしてくる可能性もないとは言えません。
という訳で、私としてはハワイ方面にミサイルを撃つ可能性は低いのではないか、と考えています。

となると、どちらに撃つかということになりますが、北東のアラスカ方面は、ハワイ以上にデータ取りや迎撃される可能性があるので、当然ありえません。
北方に射撃し、ロシア上空を通過して北極海に落下させるケースでは、最近ロシアも反発を強めているので、可能性としては低いでしょう。

条件としては、ブースターや弾頭部などが陸地や浅海に落下せず、落下地点付近に濃密な観測や迎撃態勢がない方位ということになります。具体的には、南東方向、グアムとハワイの中間的方位、つまりは東京上空を通過するルートではないか、と思えるのです。

東京あるいは関東地方の上空を通過するルートを飛翔させれば、日本としては強烈に抗議することになります。ですが、北朝鮮は今さら日本の反発など気にはしないでしょう。
北朝鮮は、本当にやるかもしれません。

最後に、読売記事の全文転載を載せておきます。(読売の記事は直ぐに消えてしまうので)
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北ミサイル、来月上旬にも発射・青森通過か…防衛省分析

 北朝鮮北西部の東倉里(トンチャンニ)で発射準備が進められている長距離弾道ミサイルについて、防衛省が、青森上空を通過して米ハワイに向かうルートで発射される可能性が高いと分析していることがわかった。

 発射は早ければ7月上旬になるとしている。同省は、この分析と米国の偵察衛星からの情報などをもとに、迎撃ミサイルSM3搭載のイージス艦や、地上配備型迎撃ミサイルPAC3などの部隊をどのように展開するか本格的な検討に入った。

 同省によると、北朝鮮には、4月に長距離弾道ミサイルを発射した北東部の舞水端里(ムスダンリ)のほか、韓国との軍事境界線に近い旗対嶺(キッテリョン)と、黄海に近い東倉里にもミサイル基地があることが確認されている。東倉里には5月30日、平壌近くのミサイル製造施設から、テポドン2かその改良型が運び込まれたとみられている。

 同省は、このミサイルが2段式または3段式で、4月に発射された長距離弾道ミサイルと同等以上の性能であることを前提に、〈1〉沖縄〈2〉グアム〈3〉ハワイ――の3方向に発射される可能性があると予測。このうち沖縄方面の場合、1段目のブースターを切り離すと、沿岸に落下する中国の反発を招くこと、グアム方面では、韓国から日本の中国・四国地方の上空を通過するためブースターを陸地に落とさざるを得なくなることから、いずれの可能性も極めて低いと分析している。

 一方、ハワイ方向ではブースターを日本海に落とせることや、長距離化に成功すれば、北朝鮮のミサイルを「北米やハワイの脅威ではない」としている米国に対しても大きな軍事的圧力になるため、最も可能性が高いと結論づけた。

 ただ、ハワイまでは約7000キロあり、新型のテポドン2改良型でも射程は4000~6500キロ程度のため、青森上空を通過する最短ルートでもハワイには到達しないとみている。

 偵察衛星の映像では、すでに東倉里の基地内にミサイルの発射台が確認されているが、ミサイルを組み立て燃料を注入して打ち上げるまで10日以上かかる。また2006年のテポドン2の発射が米国の独立記念日にあたる7月4日(日本時間では5日早朝)だったことや同8日が金日成主席の命日にあたることから、同省は4~8日に発射される可能性を想定している。

 北朝鮮のミサイルを巡っては、舞水端里への運搬の動きが17日になって確認され、旗対嶺でも、ノドンや新型の中距離ミサイルの発射準備も進んでいる。このため同省は、3か所の基地から同時にミサイルが発射されることも視野に迎撃体制の検討を進めている。
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2009年6月27日 (土)

海賊対処法可決成立

何度か関連記事を書いたので、特に論評はありませんが、お知らせしておきます。

6月19日になって、やっとこ海賊対処法が可決成立しました。
海賊対処法、年金法、税制法、再可決され成立 (朝日新聞09年6月19日)

法案は、衆院通過後、参院で否決されていましたが、衆院本会議で与党の3分の2以上の多数で再可決されて成立しました。
結局、民主は最後まで反対しました。
防衛問題に関する限り、とても影の内閣を持つ責任ある政党とは思えない行動です。
これでは、総選挙になっても票は入れられませんね。

2009年6月23日 (火)

99式自走155mmりゅう弾砲のメモパッド

現役時代に手に入れた、ちょっと変わったミリタリーグッズを紹介してみます。

第1回は、日本製鋼所のメモパッドです。
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JSWというのは、日本製鋼所のことです。
日本製鋼所のHP
防衛機器のページ

写真がちょっとピンボケ気味となっておりますが、99式自走榴弾砲のイラストが入っており、「Type99 155mm Howitzer Self-Propelled」と書かれています。
イラストは、確かに99式自走りゅう弾砲なのですが、多少デフォルメされているのか、みょうにカッコイイです。
現物はもっと腰高です。
YouTube

これはいわゆるSP(販促)グッズです。
手に入れた経緯は、はっきりとは記憶していませんが、日本製鋼所の営業の方に頂いたことは確かです。
私は空自でしたので、当然りゅう弾砲の営業ではないです。

封をきらないまま、2冊ほど残っていました。

こういった販促グッズは、一般の方の手に入ることはほどんどないと思うので、結構レアかもしれません。(原子炉の圧力容器の営業あたりでも配ってたりするかもしれませんが)
オークションに出すつもりはありませんが、どの程度の値が付くものなのか気になります。
分かるマニアな方がいましたら教えてください。

2009年6月21日 (日)

組織防衛では結果マイナスに

昨年(2008年)9月に発生した海自の特警隊養成課程入校者の死亡事件ですが、海自警務隊が業務上過失致死容疑で地検に書類送検しました。

教官ら4人を業過致死容疑で書類送検 海自訓練死 」(朝日新聞09年6月10日)

以前の記事「特別警備課程での死亡事故について 」でも取り上げたこの事件、以前にも書いたとおり、たとえ訓練だったとしても、傷害致死事件とすべきだったと思いますが、あくまで訓練中の事故とする海自とすれば、業務上過失致死としなければならないのでしょう。
関わった隊員の将来のことを考えてのことかもしれませんが・・・

この事件は、本当に訓練だったとすれば、正直に言って信じられないほどの訓練管理の甘さ(訓練の継続可否判断や事故後の処置)が目に付いた事件ですが、事故そのものよりも、長期的な影響が気になります。

隊員の命よりも組織防衛を重視する海自(だけでなく自衛隊全体の問題でもある)の態度は、他の隊員やその家族に対して組織に対する不信感を与えたと思われます。
持続走(長距離のランニングのこと)訓練による死亡事故に対して、労災を認めないなどの事例(部隊ではなく中央が認めないようです)も合わせ、こういった事件が続くと若年労働人口が減少する状況において、優秀な人材のリクルートはどんどん困難になって行きます。

安易な組織防衛を行っていると、長期的には大きなマイナスとなるでしょう。

また、海自の組織には詳しくないですが、今回の事件は第1術科学校入校中の事件であり、特警隊の小隊長は、監督責任を含めても無関係だと思うのですが、この人まで送検された事には違和感を感じます。(送別のやり方が特警隊の慣例となっていたらしい事と関係があるのかもしれません。)

以下、記事全文のコピー
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 広島県江田島市の海上自衛隊第1術科学校で昨年9月、特殊部隊「特別警備隊」の養成課程の生徒だった3等海曹の男性(当時25)が、15人を相手にした格闘訓練中に意識不明になって死亡した問題で、防衛省は10日、現場で指導していた当時の教官や特警隊の小隊長ら計4人について、海上自衛隊警務隊が業務上過失致死容疑で広島地検に書類送検したと発表した。

 送検されたのは、特警隊の小隊長だった3等海佐(50)、近くで訓練を指導していた小隊長補佐の3等海尉(42)、訓練でレフェリー役をしていた教官の2等海曹(39)、男性と14人目に対戦した3等海曹(29)の計4人。

 発表によると、男性は08年9月9日、第1術科学校の体育館であった「徒手格闘訓練」に参加し、防具とグローブをつけて隊員15人を相手に順に1人50秒ずつ格闘。14人目に対戦した3曹のパンチをあごに受けて倒れ、意識不明となり、頭蓋骨(ずがいこつ)内の急性硬膜下血腫で同25日に死亡した。

 2曹は体育・格闘の担当教官だったが、男性が危険な状態だと把握せず、訓練を中止しなかった疑いがある。3曹は強いパンチを男性のあごに当てた過失の疑い、3佐と3尉は訓練の危険性を認識せず、事故を未然に防止するなどの注意義務を怠った疑いが持たれている。防衛省は、4人が容疑を認めているかについては「捜査中なので答えられない」としている。

 海自は、捜査とは別に事実調査を進めており、今後1カ月以内に最終報告をまとめる。防衛省は報告を踏まえ、関係隊員を処分する方針。
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2009年6月20日 (土)

臓器生産

軍事と全然関係ありませんが、興味深いニュースがあったので、取り上げてみました。

移植用臓器確保で画期的手法、ブタを使ってヒトの臓器を大量生産 」(テクノバーン09年6月5日)

豚臓器を人間に移植しても拒絶反応が起こらないよう遺伝子的に細工を加えた豚を生産し、移植用臓器を作るとのことです。
本来が豚臓器なのか人臓器なのかという点が異なりますが、士郎正宗氏のマンガ「攻殻機動隊2」に移植用臓器を豚で生産するシーンが出ていました。

医療が発展することは喜ばしい事ですが、遺伝子レベルで人間が弱化することにも繋がるでしょうし、果たして望ましいことかは疑問な気もします。

10年一昔と言いますが、SFがあっという間に現実になって来ているようです。私が年をとって、年月の流れを早く感じているだけかもしれませんが・・・

以下、記事全文のコピー
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臓器移植は内臓疾患に対する有効な治療法となるが、患者に適合する臓器を見つけることは難しく、臓器移植を待つ患者の多くが、臓器が見つからないまま死に至る場合が多いのが現実だ。しかし、このような移植用臓器を大量生産できる画期的手法が学術専門誌「iJournal of Molecular Cell Biology」に発表され大きな注目を集めている。

この研究発表を行ったのはShanghai Institute of Biochemistry and Cell Biology(上海生命科学研究院)のLei Xiao博士を中心とする研究グループ。

研究グループが発表した手法とは、遺伝子を操作を加えてブタの臓器をヒトに移植をしても拒絶反応が起こらないように変えた上で、更に、遺伝子操作が加えられたブタの幹細胞を使って移植用の臓器の複製を作るというもの。

研究グループは、その上で、実際にブタの幹細胞を製作することに成功。今後は、実際に、拒絶反応がでないように遺伝子操作を加えたブタを製作することで、移植用臓器の大量生産技術の確立を目指すとしている。
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2009年6月17日 (水)

仰天のコピー

街を歩いていると、こんなポスターを見つけました。
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「憲法9条改正。」
「北朝鮮のミサイルから日本を守ります。」
憲法はまだしも、ミサイルから日本を守ります、にはビックリしました。
政党は幸福実現党。聞いたことのない政党名です。おまけになにやら怪しそうです。
家に戻りググッて見ると、幸福の科学にからんだ宗教政党・・・・。
リンクは張りません。アクセス元として記録が残るのもなんですので。興味のある方はググッて下さい。

某連立与党の宗教政党は、自らの事を宗教政党であるとは言っていませんが、こちらは公言しています。ポスターからも胡乱な雰囲気が出てますが、この辺に理由があったんですね。
ちなみに、私は敬虔な?無神論者、あるいは不可知論者なので、宗教政党は禁止しても良いとさえ考えてます。

さて、ミサイルから日本を守るとあった点が気になったので、どうやって守るつもりなのか、サイト内を見てみました。
すると、「北朝鮮が核ミサイルを日本に撃ち込む姿勢を明確にした場合、正当防衛の範囲でミサイル基地を攻撃します。」とありました。
以前の記事「敵基地攻撃に関する政治家の問題認識 」でも書いたとおり、ミサイル基地(あるいはTEL)に対する攻撃によって、弾道ミサイルの発射阻止を行うことは不可能です。
もちろん、純軍事的には攻撃を行った方がMDだけによって防衛するよりも確実なことは間違いありませんが、政治的な側面を考慮すると、マイナス面の影響の方が多いように思えます。

このあたり、技術的な可能性をちゃんと認識できないという点は、やはり宗教政党だからでしょうか。

2009年6月14日 (日)

F-22が高いかどうかはROE次第

ほとんどゼロかと思われてましたが、ほとんど針の先と言える程度とは言え、F-22を購入できる可能性が、ほんの少しは出てきているようです。
F22輸出解禁支持 イノウエ議員 売却価格は247億円 (産経新聞09年6月6日)
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ロイター通信は5日、米議会多数派民主党の重鎮ダニエル・イノウエ上院歳出委委員長がゲーツ国防長官と藤崎一郎駐米大使に書簡を送り、米空軍の最新鋭戦闘機F22Aラプターの輸出解禁に期待感を表明するとともに、輸出した場合、日本への売却価格は1機約2億5000万ドル(約247億円)程度になると伝えていたことを報じた。

現在、F22の輸出は軍事機密を守るため禁止されている。ゲーツ国防長官は5月の日米防衛首脳会談で、「オービー修正条項」と呼ばれる歳出法を理由に、日本への輸出は厳しいと伝えていた。歳出委員会が輸出解禁を支持すれば、F22を航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の最有力候補と位置付けている日本側に取得の望みが出てくる。

米軍は1機約1億4000万ドルで調達している。日本に輸出する場合、輸出仕様にするための設計・改造費などを含め約1億ドルを上乗せした格好だ。7-9年で納入可能という。

F22はレーダーで捕捉しにくいステルス性を備えた世界最強の戦闘機とも言われている。ただ、イラクやアフガニスタンでの戦争に使われていないこともあり、ゲーツ長官は調達中止を決めた。これに対して、議会からは雇用の確保などを理由に生産継続を求める声が出ている。
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今回の記事程度で購入できる可能性を話しても詮無い事ですが、今回初めて具体的な価格が報じられていますので、果たしてコレが高いものに付くのか否かについて書いてみます。

輸出用にダウングレードしながら、その設計・改造費を上乗せして売ってくるというのは腹に据えかねる話ですが、まあこれは仕方がないでしょう。
ただしあくまで感覚的な話ですが、上乗せ分(1機1億ドル)は、本当に開発等で要する金額というよりも、この程度のふっかけなら買うだろうという思惑の金額に思えます。なにせダウングレードするだけで、飛行特性を変えるような改造はしないはずですから。
具体的な金額は、1機約2億5000万ドル(約247億円)になるとのことで、F-35を除けば、他のF-X候補機がだいたい1億ドル程度でしょうから、大雑把に言って約2.5倍の価格と言えます。

2.5倍と聞くと、おそろしく高いものに思えますが、完成していないF-35を除けば、他の候補機とは0.5世代以上の性能差があり、価格だけ考えた場合には、決して高いとは思いません。

ですが、ここで一つ重要な問題があります。
航空自衛隊の運用、特にその運用上の制限として課されるROE(Rules Of Engagement:交戦規定)を考えた場合、F-22は実に高いものにつく可能性があるのです。

F-22は、現状では世界最強の戦闘機です。演習でのキルレシオは、少し古いデータですが、ノーザンエッジ2006演習までに144対0(出典:軍事研究誌2007年5月号掲載の石川潤一氏の記事「F-22実戦行動で沖縄展開」)となっています。
ですが、これはF-22のアドバンテージであるステルス性能などを最大限に発揮できるBVR(Beyond Visual Range:視程外距離)を維持すればこそです。
実際、レッドフラッグ07演習では、格闘戦に持ち込まれたF-22が、F-16のサイドワインダーで撃墜判定されています。(出典:前掲記事)エンジン出力が大きいこともあって、F-117やB-2のように赤外放射を抑えることは困難ですし、ステルスと言えど近距離ではレーダーに映らない訳ではないからです。またF-22は、格闘戦で有効となるポストストール機動に優れる訳でもなく、オフボアサイト能力を持つ短射程AAMを搭載した最新式フランカーなどが相手の場合、格闘戦ではキルレシオが1(勝率50%)を切る可能性すらあります。

では、BVRを維持すれば良いということになりますが、そうは行かないかもしれないことが問題なのです。
航空自衛隊は、近年でも格闘戦での戦技競技会を実施していますが、これはなにも職人気質のパイロットが趣味でやっている訳ではありません。(そういう事情が無い訳でもないですが・・・)
「今時バカじゃないか」という声も(自衛隊内部からも)聞かれますが、空自には空自なりの理由、というか懸念が、その背景としてあるのです。
その懸念とは、一言で言えば政府に対する不信であり、フリーハンドで戦わせてもらえないかもしれないという思いです。
具体的にどういう事かと言うと、危機が発生した際でも、第3国の航空機が接近してくる可能性は排除できず、政府として一定範囲内に入り込んだ識別不能の飛行物体を、敵とみなして攻撃して良い、ということにしてもらえない可能性を懸念している、ということです。
また、自国あるいは友好国の航空機をレーダーやIFFなどにより、そうとは識別できない可能性もあります。(モード4を含めたIFFについて、確実なものだと考えている方もいるでしょうが、それはマチガイです。)
その結果として、VID(Visual Identification:目視識別)を行った上での戦闘を訓練しています。そしてこの状況は、当然ながら格闘戦になります。

もしF-22を購入できたとしても、VIDを必須とするようなROEの元では、F-22はそのアドバンテージを十分には生かせません。
そうなるのであれば、F-22の1機247億円という価格は実に高い買い物です。(具体的な金額が出てませんが、F-35でも同じことです。)

ROEは、決して固定的なものではなく、状況によって随時変わるものです。ですから、空自の懸念が杞憂である可能性ももちろんあります。
ですが、今まで政府(内局も含む)は事あるごとに自衛隊を縛ってきました。制服を着ていたものとして、正直政府(内局も含む)が自衛隊をオンハンドで戦わせてくれるとは思えません。
公開されていない運用関係の内規には、アレはしてはいけない、コレを行う際にはソレを行った上でなければならないといった規定が山のようにあります。
もちろん必要な規定もありますが、「余程自衛隊が信用できないんだな」と思わせるモノも決して少なくありません。

もしF-22を購入するのであれば、VIDなどを必要とすることなく、BVRでの交戦を可能とさせる(ROEを制約の多いものにしない)つもりがなければ、政府として高い買い物をすることになります。

2009年6月10日 (水)

自衛隊の思想調査

先日の記事に対して、自衛隊における思想調査についてコメントを頂いたので、これについて書いてみます。

思想調査というと、もう言葉自体がなにやら怪しげですが、自衛官に思想信条の自由がないわけではありません。
ただ、自衛隊の任務の性格上、防諜活動は当然に必要な訳で、その一環として、隊員の思想調査は行われています。
と言っても、定期的にアンケートを書かされるといった調査対象本人にも分かる活動は行われていません。
休日を含め、その人の行動などが、ただ静かに監視されるだけです。

具体的にどんな人が監視対象となっているか、その全容は、私も知りません。
ですが、実際に防諜活動を行っている情報保全隊について、wiki にも実例が載っている通り、情報保全隊は各政党や反自衛隊活動などを行っている団体(左翼)、右翼(三島由紀夫の事件などもある)、危険な思想を持つ宗教団体(アーレフ(旧オウム)など)等を調査しており、当然これらに関わっている自衛官はマークされています。
現役時代、「あいつは調査(情報保全隊は、以前は調査隊という名称だった)の監視対象だから、あまり親しくするな」などというウワサやアドバイスは何度か耳にしました。

国民にとっても、意図的に自衛隊の情報を外国政府を含む外部の危険な組織に流すような者が、自衛官として重要な情報に触れていたら困るでしょう。

また、誤解が無いように一応書いておきますが、情報保全隊はスパイや秘密警察のような違法な調査方法(盗聴など)は行っていません。
ただし、自衛官という身分を隠して、各種集会などにこっそりと紛れ込むといった活動は行っているようです。

思想調査などと言うと、ちょっと近寄りがたい気がしますが、自衛隊という組織、任務を考慮すれば必要なことです。

ただまあ、こんなブログを書いたり情報公開請求をしたりしている以上、私も当然に調査対象になってるでしょう。
それを考えると気持ちの良いものではありませんね。

2009年6月 7日 (日)

コンスタント・フィーニクス

先日の記事「秘密兵器は掃除機」でWC-135Wコンスタント・フェニックス(アメちゃんの発音を聞くとコンスタント・フィーニクスと聞こえる)が1機と書きましたが、コンスタント・フェニックスと呼ばれる機体には、WC-135WとWC-135Cの2種類があり、それぞれの機種1機づつが存在するようです。
(核実験が頻繁に行われていた頃には10機(WC-135B)も存在していた)

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WC-135W(AIRLINERS.NETより)
大きな写真はコチラ
WC-135は、同じC-135系のRC-135SやKC-135と異なり、一見して分かる特徴は少なく、ベースであるC-135との外見的な違いは左主翼の付け根部分上に集塵ポッドと同様のエアスクープが見えるだけのようです。

CとWの違いについては、改造母機が違う(EC-135C→C、WC-135B→W)ようですが、機能的な差異があるのかについては、探してみたものの分かりませんでした。
任務としては、大気中の放射性物質の検地して、今回のような核実験の監視を行っています。

さて、このコンスタント・フェニックスですが、やはり先日の北朝鮮による核実験の際には、ホームベースであるオファットから飛来していたようです。

北朝鮮核実験後、放射性物質まだ検出されず (聯合ニュース09年6月4日)
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前略
また、日本海(原文では東海)上空で2回にわたり大気を分析した米国のWC-135特殊偵察機も、放射性物質を検出できなかったという。このため、一部では北朝鮮による2回目の核実験の規模が当初推定された4キロトン(1キロトンはトリニトロトルエン火薬換算で1000トンの威力)にはるかに満たない可能性もあると観測している。
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また、軍事研究誌6月号の石川潤一氏が書いた記事「嘉手納に集結した対北対処の米空軍機」では、4月の飛翔体発射翌日となる4月6日に嘉手納に飛来し、13日に今回の飛来における初ミッションを行ったと書かれています。

聯合ニュースでは展開していた基地について報じていませんが、状況から考えれば4月から継続して嘉手納に居た可能性が高そうです。
一応、沖縄の新聞社サイトを探して見ましたが、攻撃的な機体でないせいか、ニュースとしては報じられてはいませんでした。

2009年6月 5日 (金)

問題は「人物」

防衛省設置法の改正案が成立しました。
これによって、制服組を政府中央から遠ざけるものとして長年問題視されて来た防衛参事官制度が廃止され、防衛相補佐官が新設されることになりました。

防衛省設置法改正案が成立、防衛相補佐官を新設 (読売新聞09年5月27日)
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 政治任用の「防衛相補佐官」新設を柱とする防衛省設置法改正案は、27日午前の参院本会議で自民、民主、公明3党などの賛成多数で可決、成立した。
中略
 補佐官は、防衛相が民間の有識者から3人まで起用できる。
後略
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防衛参事官制度の廃止は、制服組から、より専門性の高い助言ができるようになるでしょうから、これについては諸手を挙げて賛成です。

問題は新設される「防衛相補佐官」の人選です。
「民間の有識者」から人選されることになるわけですが、経済などと比べ、防衛の有識者と言われるような人には、ピントのずれた方が多すぎます。
今のところ、個人名まで聞こえて来ておりませんが、オカシナ人が就くようなら制度として改悪だったということに成りかねません。
実際に誰が就く事になるのか注視したいと思います。

まあ少なくとも、守屋氏のような不正はなくなるでしょうから、この点では改善と言えるでしょうが

2009年6月 2日 (火)

秘密兵器は掃除機

北朝鮮による核実験に際して、防衛省も核実験を証明するための証拠集めに尽力していることが報じられています。

地下核実験、防衛省など放射性物質測定に全力 (読売新聞09年5月26日)
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 北朝鮮の地下核実験による放射能の影響が日本に及ばないか調べるため、防衛省は25日夜、専用装置を備えた自衛隊機を日本上空などに出動させ、大気中のちりを集める作業を始めた。普段から放射性物質の観測をしている百里(茨城県)と三沢(青森県)、築城(福岡県)の3基地に所属する練習機が最低1週間、大気中のちりを集め、文部科学省の分析機関に持ち込んで放射性物質を確認する。
後略
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航空機マニアな方はご存知かもしれませんが、ここで書かれている専用装置とは、T-4に取り付けられる集塵ポッド、正式名称「機上集塵器2型」です。
解りやすい写真はないか、と探してみましたら、マニアな方が良い写真を載せていました。
白石嶺々の航空機写真 」の「百里基地航空祭2007(2007/09/09) 」に紹介されていたので、写真を転載しておきます。
O0320022510190479509

O0320022510190479518

O0320022510190479526

正直なところを白状すると、私はこんな装備を航空自衛隊持っていると知ったのは、前回の北朝鮮による核実験の際、「集塵ポッド搭載機を飛ばします」という報告を、担当幕僚がモーニングレポートで報告していたところを聞いた時でした。
「どんな特殊装備だ?」と思いましたが、詳しく聞いてみると早い話が単なる紙パック式の掃除機と同じで、中空のポッドの中にフィルターが入っているのみでした。
上の写真では、内部を開けて見せているので写真を見れば一目瞭然でしょう。

北朝鮮が地下核実験をした場合、岩盤の微細な割れ目から、どうしても放射性物質が漏出します。これが偏西風に乗って日本海上空に流れ出しますから、原理は簡単でも拡散してしまう前に日本海上空で集塵すれば、これをキャッチできるわけです。
コレによって、北朝鮮が核実験をした証拠が得られるのみならず、放射性物質を分析することによって行われた実験の内容(使用された核物質の濃縮度や核反応の効率など)が分かります。
中身は掃除機ですが、立派な秘密兵器です。

ちなみに、アメリカは単なる集塵ポッドではなく、1機しかないものの、専用機を保有しています。
WC-135Wコンスタントフェニックスという機体がそれで、集塵ポッドが経路上の放射性物質をごちゃ混ぜにしてしまうのに対して、リアルタイムで放射性物質を検地できる機能を持っています。(これによって、実験場所の特定などにも効果を発揮できます)

今回の実験でも活動した可能性は高いと思うのですが、それらしき報道は見当たりませんでした。

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