破壊措置命令ー防護範囲と迎撃の適否(SM-3編)
なんだかんだ言っても、やはり一番気になるのは、SM-3とPAC-3で防護できるのか、という点でしょう。
と言う訳で、今回と次回はこの辺について書いてみます。
なお、以下では今回の弾道ミサイルについてもノドンクラスのミサイルに対する能力を基本として書いています。というのも、何らかの事故で今回の弾道ミサイルが日本の領域に落下してくる時、弾道ミサイルの性質として、飛翔経路や速度はノドン並になるからで、ノドンクラスに対して迎撃が可能であれば、日本に落下してくる今回の弾道ミサイルの迎撃が可能だからです。
ではまず、話の簡単なSM-3の方から。
イージスSM-3による弾道ミサイル防衛について、図示された防護範囲の資料というものは出てこないのですが、射程は1200kmとも言われ、ノドンクラスの弾道ミサイルに対しては、2艦で日本全域が防護できると言われています。
最大射高も200km以上であり、今回の弾道ミサイル射撃でも、日本に落下してくる物体の迎撃には十分です。
ただし、法的な制約(自衛隊法82条の2)から目標の加速が終了し、日本に落下することが確認できなければ迎撃はできませんし、他国の領域上空での迎撃もできません。
そのため、舞水端里から発射され日本に落下する弾道ミサイルに対する、秋田・山形沖に展開するイージス艦から発射するSM-3のインパクトポイントは、大体次の図のような範囲になると思われます。
(SM-3の詳細な性能は不明なので、実際にこの範囲で迎撃が可能という図ではなく、インパクトポイントの範囲を図示すると、大体このような形になると理解して下さい)
この図から、今回の弾道ミサイルが、このエリアを通過してくる場合に迎撃が可能ということですから、秋田・山形沖に展開すれば、実際に落下してくる可能性のある秋田、岩手を中心とした東北地方は防護可能ですし、関東地方の防護も可能だと言えます。
以前の記事「北朝鮮がミサイル?発射準備-日本に出来ること 」で、SM-3による目標の破壊の程度が不十分かもしれないと書きましたが、落下被害の発生する地域が広がる可能性はあっても、人口密集地に落下する見込みなら、やはり迎撃は行うべきです。
SM-3はミッドコースフェイズでの迎撃ですので、迎撃により目標を分割できれば、大気圏への再突入で焼失する可能性も高まるからです。(逆に言えば、日本の領域に落下するとしても、山間地へ落下することが確実であれば、迎撃しない方がベター)
なお、図を描いていて思いついたんですが、今回の弾道ミサイルが北方領土に向けて落下してゆく場合、自衛隊はSM-3で迎撃するのでしょうか?
日本政府としては、北方領土はわが国の領土としてますので、法的には可能です。
この件は推測しか書けないので、これで留めておきますが、興味のそそられる話です。
PAC-3編につづく
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