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2009年4月 9日 (木)

コースティング

前回の記事は、これ以上の情報が出てくるまでには時間がかかるかなと思ってUPした訳ですが、今回の防衛省、というより日本政府の情報公開姿勢は非常にオープンです。
前回の記事で書いた事項の答は、ほとんど6日朝の読売が報じていましたし、第2段の分離などについて、かなりの情報が出てきました。


「きりしま」の位置については、日本から約1000kmとのことでしたので、これは書いたとおりでした。
第2段ブースターはトラック以前の問題で、分離ができていなかった模様です。


いろいろと情報が出てきた中で、注目すべき点は、飛翔体がまだ飛翔中の内から防衛省が第2段ブースターの落下予想地点を日本の東1270kmとしていたことです。


実際には第2段ブースターは、日本の東2100km以上まで飛翔した訳ですが、当初の落下予想地点が誤っていた理由は、イージスを含めたレーダーによる目標の追尾ミスということは考え難いです。

よって、政府が第2段ロケットの落下予想を日本の東1270kmとしたことは、この時点で飛翔体の加速は停止しており、第2段ブースターの作動は停止していたと考えるべきです。
またさらに、それにも関わらず、第2段ロケットがその落下予想地点を大きく超え、日本の東2100km以遠に飛翔したということは、その後再度第2段ロケットによる加速が行われたということです。


テポドンは液体燃料ロケットですから、いったんロケットの作動を停止し、再点火することはそれほど難しくはありません。意図的に停止することは可能です。

一方、事故によって停止してしまったという可能性もありますが、その後再加速したとは言え、第2段ロケットが最終的に落下したと思われる地点が、北朝鮮の通告した範囲内でしたので、事故によってロケット作動が停止したとは考え難く、やはり意図的な停止だったと見るべきです。


となると、この意図的な第2段ロケットの停止は、コースティング(慣性飛行)だったと思われます。
コースティング(慣性飛行)は、普通弾道ミサイルの発射では行われませんが、人工衛星の打ち上げ時には実施されます。
人工衛星の打ち上げについては、私もそれほど詳しくありませんが、軌道の高度を得るために行われるもののようです。


日本政府は今回の飛翔体が弾道ミサイルだったとするようですが、この点を考えると、北朝鮮は何らかの物体を衛星軌道に投入することを意図していた可能性が高いと言えます。
もちろん技術としては同一線上にあるものですから、北朝鮮が弾道ミサイルの開発をもくろんでいることは間違いありませんが、今回の飛翔体が弾道ミサイルだったとすることは、こじつけすぎに思えます。
日本政府の姿勢は、このことを認識しつつも、安保理での非難決議採択を意図してのことでしょう。


さて、第2段ロケットの途中での作動停止がコースティングだったとして、ここでまた一つ問題があります。それは、防衛省がコースティングが行われる可能性を考慮していたか否かです。


日本の東1270kmだとしていた第2段ロケットの落下予想地点について、防衛省が訂正し、分離されていなかったと公表したのが、まる1日以上経過した以降だったことを考えると、コースティングが行われる可能性を考慮してはいなかったのではないかと思われます。


今回、コースティングに入った段階での予想落下地点が日本から1000km以上離れていたため、SM-3での迎撃は行いませんでしたが、コースティングを認識していなかったとすれば、コースティングに入る時間がもう少し早ければ、この段階でSM-3による迎撃を行っていた可能性も考えられます。


もしコースティングに入る段階での予想落下地点が日本の領域にかかっていたなら、第2段ロケットの分離を確認していなくても、自衛隊は迎撃を行った可能性が高いのではないでしょうか。
飛翔体が日本に落下する場合、ノドンと同程度の飛翔時間しかかかりませんから、その飛翔時間は約10分しかなく、迎撃できる時間も長いとは言えないからです。


今回の発射におけるコースティングの継続時間は分かりませんが、それほど長くはなかったでしょう。(おそらく数十秒)
もしSM-3による迎撃を行っていた場合、SM-3の発射後に再加速が始まってしまえば、迎撃は間違いなく失敗します。
この場合、防衛省は国民の信頼を大きく失った可能性が高いと思われます。


一方、もし迎撃が成功していれば、北朝鮮は何らかの物体を軌道に投入することをもくろんでいたでしょうから、猛烈な反発をしたと思われます。
飛翔体の発射前、日本が日本の領域に落下するのでなければ迎撃を行わないことは北朝鮮にも分かっていたはずですが、北朝鮮は、迎撃が戦争行為だと盛んにアピールし、迎撃されることを恐れていました。
何をそれほど恐れているのかと怪訝にも思えるほどでしたが、このコースティングがロケットの分離と誤解され、SM-3によって迎撃されることを恐れていたのではないでしょうか。


自衛隊の中で、コースティングが行われる可能性を承知していた人間がいなかったとは思えません。ですが、今回の顛末を見るに、組織としてコースティングの可能性を考慮していたとは思えません。
北朝鮮は人工衛星の打ち上げを行うと宣言していたわけですから、コースティングは当然想定されるべき事態で、これは自衛隊の失態と言えます。幸い迎撃失敗という最悪の事態にはなっていませんが、次回(北朝鮮が弾道ミサイルの開発を断念するいことはありえないので、必ず次回もある)に向けた最大の反省材料ではないでしょうか。


また、コースティングを落下の始まりとして誤認し、迎撃をしてしまうことは、北朝鮮としても望ましい事態ではないはずです。
次回は、発射日時と危険区域の通告に留まらず、打ち上げ計画の詳細を通知して欲しいものです。

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