ブログランキング&ツイッター

  • 軍事・防衛 ブログランキング
  • ツイッター

« 破壊措置命令ー防護範囲と迎撃の適否(PAC-3編) | トップページ | 飛翔体発射-現時点(5日夜)の判明事項 »

2009年4月 5日 (日)

誤報の原因と課題

飛翔体がいよいよ発射されたようです。被害がなくて何よりですが、詳細が出てくるまでに時間もかかるでしょうから、とりあえず、昨日の誤警報について書きます。

昨日、私はテレビに噛り付いていたので、誤探知だったという情報を聞き、DSPの誤探知が多いため、「どうせまたDSPだな」と思ったのですが、根本的な原因は飯岡のFPS-5にあったそうです。

飯岡のFPS-5は、元来FPS-XXとしてFPS-5の開発のために建設、使用されてきたものです。本来なら、開発終了後に解体撤去されるべきものでした。
ですが、開発段階で弾道ミサイル探知に非常に高い能力があることが実証されたため(本来弾道ミサイル探知用に設計されていないFPS-3改の能力が限定的なこともある)、主に弾道ミサイル防衛の指揮を取る航空総隊司令部の意向を汲み、防衛計画の大綱別表に定められた部隊数外のレーダーとして、開発終了後も実運用されることとなったものです。

事の顛末を要約すると、FPS-5が衛星軌道上の物体を探知し、それを弾道ミサイルと誤認して流した警報が発表されてしまったということになります。
これに関して、DSP衛星からのSEW(Satellite Early Warning:早期警戒情報)や他のレーダーからの情報をダブルチェックしていなかったことで、防衛省が批判を受けていますが、これは難しい問題です。
ちょうど先日「狼が来たぞ 」で誤警報が問題であることを書きましたが、誤警報を問題視しすぎると警報が遅れます。
今回の件では、「早く早く」というオーダーが招いた結果であるとも言えます。ある政府高官が「あつものに懲りてなますを吹くような事態があってはならない」と発言したそうですが、まさにそのとおりでしょう。
(本日の飛翔体発射時の発表が迅速だったので、結果は良好なようです。)

防衛省に対して批判的な記事では、DPSを絶対視するようなモノもありますが、DSP自体は相当に不正確で、それゆえNORADで一旦精査されたものがSEWとして入ってくる体制になっています。そのため、遅れることもしばしばです。

この辺の問題は、新聞などでも盛んに取り上げられていますので、ここではこの程度に留めて、別の課題について書いておきます。

ある意味、今回の誤報は、FPS-5の探知性能の高さを証明したとも言えますが、衛星軌道を飛翔する物体までトラックするとなると、今後現在の飯岡、下甑だけでなく全国5箇所でFPS-5が運用されるようになることも鑑み、衛星軌道の飛翔物体を管理できる態勢を作らなければなりません。
イメージとしては、対領空侵犯措置の一環として民間航空機を識別しているようなモノです。

アメリカの場合は、NORADにおいてSSN(Space Surveillance Network:宇宙監視ネットワーク)と呼ばれるシステムにスペースデブリまで含めて監視しています。
これは、冷戦当時から飛来するICBMを軌道上の物体と識別するために稼動しているものです。

わが国に対する弾道ミサイルの脅威はもやや常に存在している訳ですし、FPS-5の能力が軌道上の物体まで捕捉することを踏まえると、日本も同種のことをする必要性があるということです。

弾道ミサイルの可能性のある飛翔体が観測された場合には、この衛星軌道上の飛翔体カタログと照らし合わせ、本当に弾道ミサイルなのかどうか判定させるのです。

もちろん、システムの立ち上げに当たってはアメリカの協力を仰ぎ、NORADとの情報共有をすることが妥当でしょうし、日本独自にデブリの監視を行っている美星と上斎原の両スペースガードセンター(BSGC)と協力することも重要でしょう。

システムの運用は、対領空侵犯措置を行う各航空方面隊SOCの下で統制を行っているDCが識別を担当しているように、弾道ミサイル防衛を指揮するCOCの下で統制を行っているAOCC(防空指揮群)に実施させることが適当です。

弾道ミサイルの場合、対処の時間が極めて短いため、実際のシステムとしては、人間が介在しなくとも自動的に判別されることが必要です。現在導入が進められているJADGEのプログラムを改修し、自動照合させるようにすることは可能でしょう。

今回の誤報は失敗ではありますが、そこから課題を見つけて修正してゆくことが重要です。

« 破壊措置命令ー防護範囲と迎撃の適否(PAC-3編) | トップページ | 飛翔体発射-現時点(5日夜)の判明事項 »

MD」カテゴリの記事

コメント

1 ■今回のは…
前にちょっと話したように、高確度警報システムの内情に伴うものであることは確かです。0(平常/normal)から1(警報/alarm)に至るパーシャルな領域、つまりは低確度情報の取り間違えが全てですね。ハード的にもソフト的にも。本来ならば0と1の間に0.5、つまりは「警告/warning」があって然るべきなのですが、オペレーターが悪戯に疲労するという運用側の要求によって、パーシャルな領域を警報もしくは平常のいずれかに編入せざるをえず、その領域の追い込みが出来ないとハード的なエラーを多々誘発します。また、日本においては何故か「単一回線の」電話連絡網を唯一のものとして運用することが多く、しかも語彙を統一化しない事もあって、オペレーション実施時においてヒューマンエラー。この場合に限ればスリップを多々誘発します。本来電話を唯一の情報連絡手段とするのであれば警告と警報は別回線、別色の電話にて運用するのが基本ですがそれがなっていません。それが駄目ならば高信頼性プロトコル(民生だって構いません)を背景にしたステータス情報の授受をすべき場面でした。ま、後知恵と言われてしまえばその通りなんですけど。

それはそうと、今日の警報は明らかに遅報だったと思います。プログラムを変えられませんから。例えば飯岡において警報が30秒以上持続したこと、DSPといった別ソースからも確認できたことを受け、電話連絡といった感じですか。遅報を許すのであれば単一回線でかつ語彙の統一が伴わずとも誤報を発報する確率が著しく下がりますから。

2 ■昨日と今日で
政府内部においては、「警告/warning」があって然るべきというのはそのとおりだと思います。ですが、民間に発表するとなると「警告/warning」の概念理解を進めることはおそらく不可能ではないかとも思えます。
勢い、All or nothingになってしまう訳で、オペレーターへの配慮というより、国民配慮だったような気がします。ただ内部でも同じだったとすると、改善の余地ありですね。

運用者はホットラインが好きですね。輻輳することがないという点が好まれる理由だと思います。

語彙については、統一できていなかった訳ではなく、単純に言えば警報伝達訓練の不足のような気がします。
今回の誤報問題で、報道では「スパークインフォメーション」という語彙が使われてますが、概念的にはDSP情報を含まない語彙ということで整理は出来ていると思います。

ちなみに、この「スパークインフォメーション」という略号は秘だったはずじゃないのか?という疑問があるんですが、防衛省は相当に情報をリリースしてますね。
発表している小説中では、この手の略号は書かないようにしていたんですが、防衛省の方が進んでる?

ステータス情報の授受については、飯岡を実運用に供することが決まってから、総隊指揮システムの端末配備をしたのではないかと思いますが、端末配備がまだだったのでしょうか。

昨日の警報が遅報とのことですが、今日の対応を見る限り、合格ラインではないでしょうか。
おそらく昨日から何度も訓練したのではないかと思います。
なますを吹くような事態を懸念していたんですが、そうはなりませんでした。
この点では、最高指揮官である麻生総理の昨日の態度が良かったと思います。


http://ameblo.jp/kuon-amata/

3 ■唯一及第点は…
政府ですね。それに比して我が社は及第点どころじゃないです。特に地下で大画面を見てるはずの高級幹部は。

電話による通信は、、まぁ、法を厳密に解釈すると、電信は電報と音声までが解釈範囲に有り、データ通信はその限りではない。つまり緊急時における通信主体は音声と音声に準ずる電信に限るという総務省縛りがあってのそれではあるので、幾らそれがスリップを引き起こす潜在的エラッタであったとしても、これからもどうしようもないのかもしれません。

しかし、オペレーションルームにある大画面には飯岡等のメインコンソール等がキャスティングされていますが、それにはステータスも当然出ており、それを確認せずに音声通信のみで機械的にスリップしてしまった高級幹部は〆てもいいですね。背広も制服もですが。音声通信という過誤情報が多々重畳しうる情報源でのみ判断しちゃったのですから。編制上におけるエラー訂正性は絶無と言っていいです。

もっとも、あのオペレーションルームにある大画面なんか、ふつー、誰も見やしませんけどね。あれはそもそもお客様向けに概要を示すためのものであって、お客様以外は手元の仕事用モニタしかまず見ませんし、そもそもそういう用途で作られた大画面なので、画素数も少ないし、何が書かれてるのかもまともに見えません。格好だけ。あれならキャスティングされた画像を更に割って、手元のモニターで確認させた方が遙かにましだったでしょうね。ま、あのモニターについては、当初からお客さん向けでしょ?あれ?誰も見ないよっていう指摘が各所からあったワケですけど。

とか言っても結局後知恵でしかないんだよなあ。。

4 ■SI.
SIについては血の気が引きました。えええええっ?って感じです。オイラもSIのレベルが落ちたという話は聞いたことがありません。これは広報がミスったんじゃないかと思います。今後はAJ並に陳腐な符丁になるんでしょうね。もしかしたら、「○○より、スパーク・インフォメーション」のような音声付きの映像がリリースされちゃったもんで、答えざるを得なかったのかもしれませんけれども。

5 ■そんなに・・・
防衛問題に関して、麻生総理をはじめ、政府に及第点が付くことは少ないと思いますが、今回は良い意味で意外でした。
それは国民にも伝わったようで、支持率回復となって現れたように思います。(小沢さんの件もあるのでしょうが)

中央指揮所は、そんなに酷かったのでしょうか。
音声に頼ったのは、そういう縛りがあるにせよ、想像するに、雛壇の方々は、データの画面を見て、数値からデータの意味を理解できるほど弾道ミサイルについて知識がなかったのではないかとも思えます。
ゆえに、翻訳された音声を欲したのではないかと思えるんですが、その辺はどうなんでしょう。
(飯岡の画面を読めなかったのでは?と思えます。もしそうなら確かに〆てもですね)

確かに大画面は全体状況をザックリと見るだけのしろものですね。報告する側からすると報告してるという言い訳の為でもあったりします。
確かに画素も粗く、「そんなに小さい字が爺さんに見えるわけネエだろ」、と良く怒られたことを思い出します。
中央指揮所だとお客が多いのでしょうから、なおさらなんでしょうね。

まあ、後知恵なのは、良い課題の抽出ができたという事で、良しとしましょう。

なるほど、音声付きの映像が出ちゃったんですね。もっとも、そう言う情報が流れるラインを晒していた段階でミスですが。
実害はないでしょうが、広報も課題多数ですね。


http://ameblo.jp/kuon-amata/

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 誤報の原因と課題:

« 破壊措置命令ー防護範囲と迎撃の適否(PAC-3編) | トップページ | 飛翔体発射-現時点(5日夜)の判明事項 »

アマゾン

  • ルーシ・コネクション 青年外交官 芦沢行人
  • 航空自衛隊 副官 怜於奈2
  • 機巧のテロリスト
  • 航空自衛隊 副官 怜於奈
  • 北方領土秘録 外交という名の戦場
  • 深淵の覇者 新鋭潜水艦こくりゅう「尖閣」出撃 (文庫)
  • 半島へ 陸自山岳連隊
  • 黎明の笛 陸自特殊部隊「竹島」奪還 (文庫)
  • 深淵の覇者
  • 黎明の笛

最近のトラックバック

ブックマーク、RSS