真面目過ぎるのも如何なものか
昨年2008年度のスクランブル実績が公表されました。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090423-OYT1T00800.htm
一昨年より70回減の237回、国別ではロシアが約80%の193回、中国が31回、台湾が7回などとのことです。
これは、日々真面目に対領空侵犯措置を続けてきた成果であり、携わってきたパイロットを始め、整備員やレーダーコンソールを睨んできた監視員にご苦労さまと言うべきモノです。
ですが、現役の時からずっと思ってきたことですが、真面目すぎるのの如何なものでしょうか。
というのも、この真面目さが仇になっている部分もあるからです。
日本の周辺に飛来し、対領空侵犯措置の対象となっている航空機の飛来目的は、かなりの割合が偵察です。
レーダーサイトなどに対する長射程ASMの発射訓練が、結果的に威力偵察となっている場合を含めれば、ほとんどが偵察であると言えます。
感の良い方はもうおわかりでしょうが、生真面目さゆえ、自衛隊の能力的限界(レーダー覆域に入ってからの反応時間など)については、ほとんどばれてしまっていると言えるのです。
現状でも、レーダーでコンタクトして直ぐにスクランブルがかかるわけではありませんが、積み重ねれば相当のことが分かってしまうのです。
現在の対領空侵犯措置は、例え領空を侵犯されたとしても、正当防衛や緊急避難に該当する場合を除き、領空侵犯機を攻撃することはできません。
このことは、侵犯する側も重々承知のことで、有用な情報が取れそうな状況であれば、平気で領空を侵犯してきます。
こんなことを書くと怒る方(特に自衛官)もいるでしょうが、現行法制下では、どうせ出ていって頂くしかできないのですから、状況が緊迫しているのでもなければ、緩急をつけて対応しても良いのではないかと思うのです。
ロシアや中国に対して、自衛隊が常に高い緊張感を持っていることを示すことが抑止力になっていることは事実です。
ですが、情報に関しては平時から有事です。
「兵は詭道なり」という言葉もあります。
常に真面目が良いとは限りません。「適当」が「適切」な場合もあると思うのです。
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1 ■無題
遅レス、失礼します。
航空機によってこちらの対応能力を偵察するのと同様、潜水艦を接近させて相手の対潜能力を偵察することも行われているのではないかと考えられますが、こちらの方は殆ど表面化しません。偵察が行われていないか、探知できていないか、探知していても気がつかない振りをしているかのどれかと思われます。もし最後だとしたら、スクランブル発進との違いは航空機の接近速度によるものとは考えられないでしょうか。もし、接近してくる航空機にこちらを攻撃する意図があれば対応の遅れは致命的な結果になります。従って、こちらも邀撃機を発進させ、最低でも対地ミサイルなどの有無くらいは確認しなくてはならない。一方、相手が潜水艦なら比較的余裕を持って監視できます。
なお、空時・海自がこうした偵察行動を行うことには意味があるでしょうか。
投稿: matsuzay | 2009年5月 1日 (金) 19時42分
2 ■無題
matsuzay様
潜水艦での偵察も行われているかもしれません。
ただここで書いたような偵察は、基本的に平時での話しです。
最近では、領海侵犯が発生すると直ぐに海自に海上警備行動発令といったことが言われるようになりましたが、海警行動が発令されない限り、領海を守る任務は海上保安庁が行います。
対領空侵犯措置は、基本的に海保や陸上では警察が行っている警察行動なんです。
有事であれば、空で行われていることと同様に潜水艦に対する行動も行われて行くでしょう。
基地から遠く離れても活動できるため、対潜作戦の方がむしろ遠方で行われる可能性もあります。シーレーンも防衛しなければなりませんし。
空自や海自がこういった偵察を行うことは無論意味があります。
ですが、残念ながら空自は全く行っていません。海は見つかるつもりで行うことはないでしょうが、それらしきことは行ってます。
また、領空領海があるわけではないですが、中国が建設しているオイルリグに対しては、空海ともに示威的とも思えるほどの偵察は行っています。
http://ameblo.jp/kuon-amata/
投稿: 数多久遠 | 2009年5月 2日 (土) 00時40分