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2009年3月

2009年3月30日 (月)

破壊措置命令-PAC-3配備について早速訂正

PAC-3の配備について、早速訂正記事を書かなければならないようです。

市ヶ谷に展開されたPAC-3が公開されました。今のところ、朝日と産経が報じています。
http://www.asahi.com/politics/update/0329/TKY200903290199.html
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090329/plc0903291738005-n1.htm
問題は展開した器材なのですが、朝日は「ミサイルの発射機2機や通信機材を積んだ車両」と報じています。
産経はもっと踏み込んで「発射機2基は上空に向け、隊員用の運動場に配置。データ情報の受信アンテナも近くにある。しかしミサイルの動きを統制する射撃管制装置はなく、市ケ谷以外の展開場所の陸自朝霞駐屯地(東京都)や空自習志野分屯基地(千葉県)に配備されたとみられる。」と書いています。

産経は、写真もかなり載せています。
O0320046910159038115
(産経ニュースより)

これを見ても(もちろん写真の画角外という可能性もありますが、記事の方を信用すると)、RS(レーダーセット)やECS(射撃監視装置)はなさそうです。

ということは、コレは本年度(20年度)に取得されたばかりのリモートランチ端末を持ち込んだ展開をしているということです。

リモートランチとは、PAC-3によるフットプリント(防護範囲のこと)を拡大するための機能で、RSやECSから発射機(LS)を離して展開できるようにするものです。
つまり、リモート(遠隔)ランチ(発射)という機能がそのままネーミングになっている訳です。
産経が載せている写真に、リモートランチのためのAMGとCRGという車両も写っています。

というわけで、産経の記事にもありますが、市ヶ谷のLS2機は、29.3km(地図上で図ったおおよその距離)ほど離れた習志野演習場展開部隊からコントロールをされているようです。
コレによって、習志野展開高射隊によるフットプリントは、習志野演習場を軸にしたものと、市ヶ谷を軸にしたものが描けることになります。
(具体的な範囲は別の機会に)

リモートランチによって、なぜフットプリントが拡大するのか、という点については、逆説的ですが一言で言えば、PAC-3による弾道ミサイル迎撃は、レーダーからの位置関係ではなく、発射機からの位置関係が重要な要素になるということです。
理論的な事については、以前の記事「PAC-3はノドンを撃墜できるか? オブイェクト記事 その1」からその3あたりを参考にして下さい。

しかし、こうなると5個の高射隊が、どこに展開したかですが、報道にはないものの、おそらく入間基地の第4高射隊は移動していないのではないかと思われます。
首都圏の部隊をまとめると、こんな感じと推測します。
首都圏
 入間基地----第1高射群指揮所運用隊
             同    第4高射隊
 朝霞駐屯地---部隊不明(2個)高射隊
 習志野演習場--第1高射群第1高射隊
             部隊不明(1個高射隊)
 市ヶ谷駐屯地--習志野展開高射隊からのリモートランチ

正直なところを白状すると、市ヶ谷に高射隊を入れても運用できないだろうから、市ヶ谷展開は国民に対するポーズ(ポーズでも重要)で、本当に市ヶ谷から迎撃するつもりはないのではないか、と思っていたのですが、どうやら防衛省は本気のようです。
(いつのまにか、写真にあるようなブラスト被害防止用?の柵も買ってあるし)

蛇足-最近読売新聞はケチで、写真などの引用を禁止にしてますが、産経新聞はこの点太っ腹です。

2009年3月28日 (土)

破壊措置命令-展開部隊

いよいよ、というより私の感想としてはやっとですが、弾道ミサイル等の破壊措置命令が発令されました。

破壊措置命令の全文が公表されるのではないかとも思っていましたが、各紙の報道、防衛省のサイトを見ても、内容の概略が示されただけで、確実な詳細と言える物は見当たりません。
そのため、各紙の断片情報をまとめて、そこから読み取れる情報について書いてみます。
なお、弾道ミサイル「等」破壊措置命令なのかどうかは、各紙が略して「破壊措置命令」と書いているので、いまいちハッキリしません。
今回は特に展開する部隊について書いてます。

その前に、北朝鮮の「弾道ミサイル」(政府見解をコレで通すみたいなので、これで統一します)を迎撃する法的根拠ですが、自衛隊法82条の2の3項となります。
これによって、内閣総理大臣の承認を受けた緊急対処要領に基づいて防衛大臣が命令を発令します。(邪推ですが、閣議決定を経て首相の承認を得る必要がある1項ではなく、3項での発令となったのは、浜田防衛相が「オレが命令したんだ!」と後で自慢したかったからかもしれません。)
現在の緊急対処要領はネットで見つかりませんが、コチラ の一部が修正され、パトリオットPAC-3の他にイージスSM-3が加えられ、首都圏との地理的制限が外れたものとなっています。
http://www.asagumo-news.com/news/200801/080103/08010304.html
一言で要約すれば、航空総隊司令官の指揮の下、日本に落ちてくるものは日本もしくは公海の上空で迎撃する、ということになります。

さて、部隊についてですが、指揮下に入るイージスには、SM-3を運用できる「こんごう」と「ちょうかい」だけでなく、監視だけは可能な「きりしま」も含まれており、太平洋上で監視活動を行います。ちなみにもう1隻のこんごう型護衛艦「みょうこう」は整備中です。
イージスに随伴する護衛艦艇については報道がないので分かりません。(単独ということはないと思います)
以前にも書いたとおり、予想される弾道ミサイル経路の真下には入らないはずなので、両艦は、経路の南北に分かれて位置するか、あるいは故障の発生を考慮して、東北と関東双方への飛翔に対応できる予定経路の南側に2艦ともに位置することになるでしょう。
今後、両艦の上空にNOTAMが出されれば概略位置も分かると思われます。
(イージスの能力秘匿のためには出さない方が良いと思われますが、日本以外の航空機も飛行していますし、出さないわけにはいかないでしょう。)

問題はPAC-3ですが、展開地と部隊は次のとおりとなるようです。
東北地域
 加茂分屯基地--高射教導隊第1教導隊
 新屋演習場---高射教導隊第2教導隊
 岩手山演習場--高射教導隊第2教導隊
 秋田駐屯地---高射教導隊整備隊
 岩手駐屯地---高射教導隊整備隊
高射教導隊本部については不明ですが、指揮所運用隊の機能を持つ第1教導隊が加茂に展開するため、加茂に進出する可能性が大きい。
首都圏
 入間基地----第1高射群指揮所運用隊
 朝霞駐屯地---部隊不明(2個?)高射隊
 習志野演習場--部隊不明(2個?)高射隊
 市ヶ谷駐屯地--部隊不明(1個?)高射隊
第1高射群本部と整備補給隊は、おそらく入間から動かないでしょう。
第4高射群は群本部と整備補給隊が展開するのか否かを含めて不明です。普通に考えれば単に高射隊と整備補給隊を1高群指揮下に差し出すだけなので、群本部が展開する必然性はないものの、可能性はあるでしょう。
高射隊の移動状況は良く分かりません。入間の第4高射隊は動く必然性がないものの、市ヶ谷への展開部隊が入間からなどとの報道もあるため、複雑な動かし方をしているかもしれません。
首都圏に展開可能な高射隊は5個で、展開に必要な地積を考えると市ヶ谷には2個部隊も入れないため、上記のような配備数になると推測します。
さて、防護範囲が数十キロしかないと伝えられるPAC-3の高射隊を、なぜ重複して配備するのでしょうか。
この理由は報道されていませんが、理由はおそらくバックアップ、つまり予備とするためです。
どんな機械でも故障しますが、高機能で高出力のレーダーを車載するためには、設計上無理も生じます。その無理は、RS(レーダーセットの略)の故障確率に関わってくるわけで、そのため米軍のパトリオット中隊(高射隊と同等の部隊)はRSを2個保有しています。
残念ながら自衛隊はそんなに裕福ではないので、各高射隊は1台の機材を故障させないよう、日本人特有の勤勉さで高い稼働率を維持している訳です。
自衛隊の高射隊にも2個RSを配備すべき、という意見は、一部のパイロットからさえも出ていたくらいなので、もしかすると今回のことで動きがあるかもしれません。
(RS1台で戦闘機1機並のお金がかかることなので難しい事とは思いますが)

最後に、下らないニュースについて。
麻生首相が、「4月4日、北朝鮮がロケットと称してミサイルを撃つ」を発言したことに対して、4日が確定した訳ではないとの主旨で、これを失言だとしています。
北朝鮮が通告している危険区域は、4日から8日の0200Z-0700Z(日本時間の11時~16時)となっていますが、常識で考えれば4日が北朝鮮としての予定日で、5日以降は予備日であることは分かるはずです。首相の発言はそれを踏まえたものですが、重箱の隅にも程があります。

FXとF-15SEの濃い話

以前も書きましたが、このブログは見ていただいている人の数に比べてコメントはいたく少ないです。
そんなわけで、コメント欄を見ていない方が多いと思いますが、某氏のお陰で「これで合点がいった 」のコメント欄はFXとF-15SEの濃い話になっております。
普段コメント欄まで見ない方は覗いて見て下さい。

2009年3月26日 (木)

弾道ミサイル等の破壊措置命令についての最新報道

やはり、興味を持っている方が多いテーマについては、こまめに書いてゆきたいと思います。

まず最初に訂正を
「北朝鮮がミサイル?発射準備-日本に出来ること」で、自衛隊法82条の2の3項による緊急対処要領にはSM-3についての記述がなく、緊急対処ではイージスが使えないと書いてましたが、緊急対処要領は2007年の12月24日に改正され、イージスも使用可能になってました。
http://www.asagumo-news.com/news/200801/080103/08010304.html
(その翌年刊行された20年度版の防衛白書でも直ってなかったもので、チェック漏れです。)

政府は、27日に安全保障会議を開き、自衛隊に「弾道ミサイル破壊措置命令」出す方針を決めたそうです。「等」の文字が入っていませんが、報道が不正確なのか、政府の方針として人工衛星としては認めない姿勢を強調したいのかは分かりません。(27日になれば判明するでしょう)
http://www.asahi.com/politics/update/0325/TKY200903240480.html
根拠としては、自衛隊法第82条の2ですが、その1項ではなく、3項を適用する方針だそうです。
この点は以外でした。
というのも、3項は防衛省側の強い意向で入れられた条文で、いきなり弾道弾を打ち込まれた場合でも対処を可能とするために、(閣議で)内閣総理大臣の承認を得る必要がないとされているものです。
この項目によって、もしかすると普段から(現時点でも)防衛大臣がこっそりと弾道弾等の破壊措置命令は出されているかもしれないのです。
そういう主旨の条文なので、今回は1項に基づき、内閣総理大臣の承認を得て、期間を明示して発令されるのだろうと思っていました。
(自衛隊の対処が終わった後に撃たれる可能性もあるので3項を使うとの報道もありましたが、そんなものは期限が近づいたら延長すれば良いだけのことです)

展開させるパトリオットPAC-3は、なんと浜松の高射教導隊のみの展開となるようです。
http://www.asahi.com/politics/update/0324/TKY200903230347.html
首都圏を防護するために急ぎ導入した1高群を、人口密度の低い東北に持ってゆくとすれば、批判がでる可能性を恐れたのかもしれません。
今回に関して言えば、「4月4日に向けた自衛隊部隊展開案 」で書いたとおり、(北朝鮮が嘘を付いているのでない限り)東北以外の地域に飛来する可能性はほとんどないので1高群、4高群を展開させても良かったはずです。
高射教導隊は、その名の通り、本来は部隊の教導を任務とする部隊なので、人員面などで苦労するでしょう。
ただし、今回は展開地が陸自駐屯地内とのことなので、いろいろと支援が受けられるので、高教隊の人員でも大丈夫だという判断をしたものと思われます。

さて、その展開地ですが、「4月4日に向けた自衛隊部隊展開案 」で書いた能代市、角館市、久慈市ではなく、秋田、岩手の両県庁所在地となるようです。
報道では、都市の規模などを考慮してこの2都市と決めたとの事ですが、そもそも実質的な配備の必要が薄いため、自衛隊の駐屯地が所在している点から選定したものと思われます。

報道でも警備の容易さを考慮したと書かれていますが、用地借用の問題や指揮通信、そしてレーダーやミサイルのハザードエリアなどを考慮したのではないでしょうか。
自衛隊法77条の2において、自衛隊は防御施設構築ができることになっていますが、これは防衛出動命令発出が予想される場合のみです。となると、展開用地を確保するためには煩雑な手続きを経て、用地を借用しなければなりません。
(昔は、自治体の所有地を口約束だけで訓練のために借りることも多かったくらいですので、同じことをするなら旧秋田空港跡地なども使えたはずではあります。)
ある意味、用地の問題は今回の件で顕在化したとも言え、今後防衛出動以外でも防御施設構築が出来るよう自衛隊法の改正を図るべきでしょう。
指揮通信は、駐屯地内であれば、自衛隊のマイクロ無線を利用して容易に府中と連接できます。他の場所でも可能なのですが、より利便性のある場所を選択したと思われます。
レーダーハザードも重要です。イージスシステムが稼動中は甲板に出ることが禁止になっているように、出力の大きなレーダーの前方は人体に悪影響があり、立ち入り禁止区域を設ける必要があります。
また、本当にPAC-3を発射するとなれば、ロケットモーターのブラストも相当に強力なので、十分な安全範囲が必要となります。
秋田、岩手の両駐屯地の状況については状況を承知していませんが、パトリオットを配備するため、相当に広い範囲を提供することになるはずです。

これらの点については、詳細な情報が出てくれば、また別途に紹介します。

2009年3月23日 (月)

狼が来たぞ

3月19日付読売新聞に医療アラームの聞き逃しによる事故が多発しているという記事が載っています。

記事の主旨は、設定の不備などにより、医療アラームの「無駄鳴り」、つまり誤警報が頻発し、そのことに慣れてしまった医療スタッフが、本当のアラームに気が付かずに事故が多発しているというものです。

このニュース自体は、軍事とはなんの関係もありません。
ですが、誤警報によりシステムが機能不全に陥るということは他山の石として参考になるものです。
同種の話としては、以前にも「日本独自の早期警戒衛星は不要だ! 」に挙げた早期警戒衛星による弾道弾監視にも同じこと言えます。

現役自衛官時代に、ある警戒警報装置の試験に携わりました。
この装置は試験的に導入されたもので、1個部隊分しか無かったのですが、これを実地に運用させ、その効果を確認しようとしたのです。

その結果、年間数千回にも及ぶ誤警報が発生することが分かりました。
このデータを見た時、結果自体にも驚いたのですが、試験前には誤警報確率がそれほど高いとは思っていなかったため、あらためて感じた自衛官の真面目さにも驚きました。
担当としてオーダーした訳ではありますが、1日数十回に及ぶこともあった誤警報(時間や場所)を、試験担当部隊は逐一記録してくれたのです。(○空団○○小隊のみなさん、ありがとうございました)

幸いなことに、このデータを受け、その警報装置がそのまま導入されることは無かったのですが、もし本格的に導入されていたらどうなっていたでしょうか。
1日に数十回も誤警報が発生し、逐一反応していたら、部隊は疲弊してしまいます。導入当初はそうなるでしょう。ですが、しばらくすれば「どうせまた誤警報だ」という思い込みが発生し、警報をまともに取り合わなくなることは間違いありません。まさに、記事に在る医療事故と同じ事が起きるということです。

探知確率がいくら高くとも、警報システムは、誤警報確率を一定水準以下に抑えなければその機能を果たしません。また、誤警報確率がスペックに記載されない事も珍しくありません。ですが、警戒警報装置の導入に当たっては、極めて重要な要素です。

2009年3月21日 (土)

自衛隊が保有する武器の輸出

読売新聞が「海上警備行動の武器、輸出三原則の対象外に…官房長官談話」という記事を報じています。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090313-OYT1T00503.htm

非常に短いニュースなので、全文を転載しておきます。
********************
政府は13日午前、海上警備行動の発令に伴い、自衛官や海上保安官が携行する武器について、武器の輸出を禁じた「武器輸出三原則」の対象外とする、との官房長官談話を発表した。
 自衛官が武器を携行したまま、外国に寄港した場合、武器輸出にあたる、とみなされるおそれがあるためだ。武器輸出三原則の例外扱いは、イラク特措法に基づいて、イラクに派遣された自衛官の携行した武器などにも適用された。
********************


一般の方には、どういうことなのか理解不能なニュースでしょう。
「輸出」と言えば、普通の理解では外国に商品を売り渡すことを意味します。自衛隊が海外に武器を持ち出しただけで、それが「輸出」に当たるなどとは、普通は考えません。
もし、その通りなら、訓練でアメリカに行くケース(コープノースやミサイルの射撃訓練など)も「輸出」になってしまうはずです。

ところが、これらのケースも「輸出」に該当するのです。
実を言うと、私もある事件(と言うほどのものではないのですが)にぶち当たるまでは、そんなこととは知りませんでした。


ある時、私が担当していた海外訓練で器材の故障が発生しました。
修復のためには、交換部品を送る必要があったのですが、それを発送しようとしたところ、補給サイドから待ったがかかりました。
武器輸出に伴う経済産業省への申請・許可が間に合わないというのです。
「はあ?輸出?、向こうに行っている部隊に送るだけだぞ。何言ってんだコイツ。だったら今まで持って行った機材も全部申請が必要じゃねえか!」というのが私の感想だったのですが、くわしく話を聞くと、今まで送ったものは全て申請・許可を受けているとうことだったのです。
(アメリカは武器禁輸三原則に該当する国ではないため、申請・許可を受ければ輸出が可能)


この時、たとえ訓練でも武器を海外に持ち出すことが「輸出」にあたると、初めて知りました。
しかも、この時の部品は、どうみても武器には見えないただのピン1本だったのですが、それでも申請・許可が必要だったのです。
(実際にどのように処置したかは、口が裂けても言えません(書けません))


今回のケースでは、海自の艦艇はどこかの港に寄港しない限り、武器を持ち出したことにならない(船の中は日本の法律が通用する)のですが、記事に在るとおり、何らかの理由で寄航する可能性があるため、官房長官が予防線を張ったわけです。


自衛隊は、こんなところでも縛りを受けています。
国民の皆様のご理解とご支援をお願い致します。

2009年3月19日 (木)

これで合点がいった

ボーイングがF-15SEなるF-15の新型を発表したそうです。
http://toyotei.blog65.fc2.com/blog-entry-1537.html


ステルス性を高めたF-15であるとのことですが、詳細はリンク先の他、その先のボーイングのサイトなどを確認下さい。
かなり大幅な改造がなされているようで、F-15Kのような、輸出先に合わせた単なるカスタマイズの域にあるようには思えません。


さて、私が書きたいのは、このF-15SEがカッコイイとか言う話ではありません。(ネットではこれで盛り上がっている)
この発表で、最近報じられていたFX選定における防衛省の変心ぶり(の理由)が理解できたということです。


今回発表になったF-15SEは、米軍主導の開発ではありません。つまりは、ボーイングの自主開発ということです。
IFV程度でしたらメーカーの自主開発は今までにも聞いたことのある話です。
ですが、既存機の改造とは言え、これほど大掛かりな改造機を、自国の軍隊が顧客になるはずがないことが分かっていながら開発するというのは、企業行動として普通であればなかなか考えにくいことです。
少なくとも、見込みの販売先に対して、有力な対抗馬がないことが分かっていなければ、そんなリスキーな選択はしません。


つまりボーイングは、ロビー活動によりF-22の禁輸を解かせない確信があるということです。
今までF-22の外国への販売は、アメリカ議会が止めてきました。

一部には輸出解禁を主張する議員もいますが、あくまで少数派です。
ボーイングほどの企業になれば、議会や政府内にも相当に強いパイプがあります。

ロビー活動の中で、ライバル会社であるロッキード・マーチンのF-22の販売を封じることが可能だと見ていなければ、社内的にF-15SEの開発にゴーをかけるとは到底思えないのです。


そして、このことを踏まえれば、ここ最近になって、防衛省がFXの候補にタイフーンを真剣に考え出したなどという情報が出てきている理由が理解できます。
防衛省としては、なにを置いてもFXにはF-22が欲しいのでしょう。

ですが、このF-15SEの情報を聞き、F-22を断念せざるを得ないと判断したのではないかと思われるのです。
FXの候補には、F-15FXも入っています。選定に向けた情報収集の中で、ボーイングからF-15SEについて情報開示があったのではないでしょうか。


私は決してスペック厨ではありません。むしろ「寡兵敵せず」という考えですので、質を落としてもある程度の数が必要だと思っています。
ですが、ことFX選定ではF-22がベストだと思っています。理由は、近い将来に蓋然性の高い尖閣諸島などの島嶼防衛戦では、双方ともに政治的な判断で策源地攻撃などができず、紛争地域周辺での局地戦にならざるを得ないだろうと考えているからです。
そのため、防衛省と同様に、今回のF-15SEの情報は、残念なニュースです。


これからFX選定がどのような方向に行くかはまだ分かりません。

ですが、このニュースはFX選定にとって非常に大きなトピックであることは間違いありません。

2009年3月17日 (火)

63ではなく29

3月14日、内閣府が「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」の結果を発表しました。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009031400236


それによると、ソマリア沖の海賊対策としての海上自衛隊派遣について、「どちらかというと賛成」を含めると、賛成が63.2%に上り、反対の29.1%を大きく上回ったということです。
この結果を受けて、防衛省は「国民生活の安定に重要な活動として理解が広がっている」と分析しているそうです。


ある意味自画自賛な訳ですが、注目すべき数字は63%の方でしょうか。
過半の賛意を得ているとは言える訳ですが、29%にとっては、相も変わらず対岸の火事であるとも言えるのです。


海賊対処は、イラクやアフガンの人のために行う国際貢献ではありません。国民の生活を支える重要な海運航路を守るために行うものです。
この点を理解できない人が3割近くにも達すると言うことが、私にとっては信じがたいのですが、実際に物価に跳ね上がってこない限り、自分の生活が世界と繋がっていることが理解できない島国根性が未だに直っていないということなんでしょう。


また、この調査結果を男女別に見ると、男性は賛成72.9%、反対23.0%。一方、女性は賛成54.2%、反対34.8%だったそうです。
女性蔑視だと言われるかもしれませんが、女性の反対者は男性よりも10%以上も高く、逆に女性の賛成者は男性よりも20%近くも少なかったと言う点は注目すべき点です。


国益という言葉が、マイナスイメージを伴って使われることがありますが、結局は自分のためだということが理解されるべきです。

2009年3月14日 (土)

4月4日に向けた自衛隊部隊展開案

ここ数日、ブログの来訪者が急増しています。
おそらく北朝鮮による「衛星発射」に関連していると思うのですが、実は新たに書くべきことはそれほどありません。

というのも、ほとんどが以前に予測や法制面、技術面の限界として書いてしまっているからです。
日本を飛び越えることは「北朝鮮のミサイル?発射方位 」で書きましたし、日本として何が出来るかは「北朝鮮がミサイル?発射準備-日本に出来ること 」で書きました。
政府が自衛隊に発令すべき命令についても「「弾道ミサイル等の破壊措置命令」予想 」で詳細に書きました。
また、集団的安全保障上の問題があることも「外相、首相の発言は布石 」で書いていますし、アメリカが慌てている理由も「不沈イージス艦「日本」 」で書いています。

そんなわけで、新たに書くことと言えば、北朝鮮が、部品等の落下が予想される危険区域として、北朝鮮は秋田県沖の日本海と千葉県東方の太平洋の二つの海域を指定したということに関連したことくらいです。
O0320028010152387783
読売新聞より

メルカトル図法の地図で見ると妙な地点に通報海域が設定されていますが、正距方位図法で見ると、セオリー通りほぼ真西に打ち上げられることが分かります。
O0284025410152387789
(ピョンヤンを中心とした正距方位図法)(NIJIX ANNEXより)

ロケットが正常飛翔すれば、秋田の能代市、角館市、岩手の久慈市あたりを飛び越えるルートです。

今回の事態に対して、政府がPAC-3での迎撃を意図するなら、首都圏に居る第1高射群+第4高射群の一部をこのあたりに展開させる必要があります。
というのも、秋田沖に危険区域が設定されていることからも分かるとおり、もしロケットの第1段目で異状が発生すれば、ロケットは日本に到達することなく日本海に落下します。
第2段目で異状が発生した場合、初めて日本に落下する恐れが出てくる訳ですが、その場合は1段目まではまともに飛翔した時ですので、この能代・角館・久慈ラインを大きく外れる範囲に落下する可能性はほぼないと言えるからです。

そもそも異状発生時なので、何処に落ちるか分からない上、PAC-3の迎撃範囲が狭いこともあり、正直言ってパトリオットを展開させる実質的な意味はないでしょう。
ですが、日本として脅威を感じているという明確なメッセージの一つにもなりますし、政府としても国民を保護するという意思表示になります。

PAC-3は、現在首都圏の第1高群と中京圏に配備されている第4高射群の一部に配備されています。
配備数について、明確な報道が見当たりませんが、先月2月26日に岐阜基地に首都圏を除いて初めて配備とする報道があるので、少なくとも5個高射隊が運用可能です。
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2009022602000224.html
4高群の指揮所運用隊にPAC-3機材が配備されているか否かはわかりませんが、一つの指揮所運用隊は6個高射隊まで統制可能なため、岐阜のPAC-3も1高群の編成に組み入れればOKです。
部隊を展開させるとなると、能代・角館・久慈ラインに部隊を分散配置することになるでしょうが、山がちな場所であるため、指揮所運用隊とのリンクを確保する必要があるため、中継用のCRGと呼ばれる機材を使用しても、部隊配備上の制限がかかるかもしれません。

イージス艦の方は、SM-3を運用できる2隻の内、1隻は3月中旬までドック入りと報じられていますが、発射が4月4日以降であることがほぼ確実となったため、「こんごう」、「ちょうかい」の2隻態勢で迎撃が可能です。
イージス艦は、ロケット飛翔コースの真下に入ると、追尾に支障を来たすので、青森の西方沖と山形の西方沖あたりに展開することが適当でしょう。

現在、北朝鮮の国際海事機関(IMO)への通報を受け、海上保安庁が船舶に対して航行警報を出し、国土交通省航空局が航空機に対してNOTAM(ノータム)を出しています。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090313/plc0903132148026-n1.htm
今後自衛隊に迎撃命令を出すのであれば、パトリオットとイージス艦の上空にもノータムを出す必要性が出てきます。
(迎撃するPAC-3やSM-3が偶然航空機に当たる可能性などほとんどありませんが)

また、今まで自主規制したものの森本敏拓殖大教授が書いてしまっているので書きますが、パトリオット運用のため電波管制も必要です。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090313/plc0903130257002-n1.htm

これらによって、国民生活にも影響が出ますが、ある意味国民に理解してもらうためにも良い機会かもしれません。

それと、有毒な燃料が入ったままのロケットが落下してくる可能性があるので、落下後の避難誘導と無害化について、消防や警察の準備が必要です。
そこまで必要はないと思いますが、化学防護隊を災害派遣として出すことも検討されるかもしれません。

なんにせよ、4月4日までに準備と整えるためには、もうあまりゆっくりしている余裕はありません。

2009年3月13日 (金)

LRAD

ちょっと古いニュースですが、2月7日付産経新聞に、日本の調査捕鯨船が米環境保護団体シー・シェパードに対して、長距離音響発生装置(LRAD)を使用していたことが報じられています。


LRADは、非殺傷性のいわゆる音響兵器の一つです。単純に言えば指向性の高い音波を発生するスピーカーですが、これに不快な音を載せることで、耐え難い音を使用した兵器となります。
アメリカンテクノロジー社が製造しており、日本では丸紅情報システムズが販売しています。
http://www.marubeni-sys.com/si/atc/lrad-outline.html


イラクなどでも使用された実績があり、なかなか効果的だそうです。

シーシェパードもその効果のほどは認めています。


兵器とは呼ばれていても、相手に傷害を与えるものではないため、国内的にも国際的にも問題のあるものではないのですが、販売社である丸紅情報システムズに問い合わせたところ、基本的に自衛隊や警察関係などの治安機関以外には販売しないそうです。

それだけ強力だと言うことでしょう。

結構使い勝手は良いと思うのですが、残念ながら、私の知る限りこう言ったものが自衛隊に装備されたということは聞こえてきません。


しかし、シーシェパードに対しては、こんなものを使って追い這うのではなく、検討されている海賊処罰取締法を適用して逮捕すべきだと思います。

2009年3月10日 (火)

ホントに怖いのは

韓国国防省は今年度版の国防白書において、北朝鮮が射程3000キロ以上の中距離弾道ミサイルを実戦配備したと記述したそうです。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009022302000207.html


韓国国防省の分析が正しければ、今回北朝鮮が準備していると伝えられるテポドンによる「人工衛星」の発射よりも、よほど日本に対する直接的な脅威となりえるものです。


報道されているミサイルは、2007年に朝鮮人民軍創建七十五周年の軍事パレードで初公開された「ムスダン」と呼ばれているもので、旧ソ連の潜水艦発射弾道ミサイル「R-27(NATOコードSS-N-6)」をベースとして陸上発射型としたものです。


ベースとなったSS-N-6は、液体燃料を用いる1段式のミサイルで、単弾頭もしくは3弾頭と見られています。
「ムスダン」の詳細については情報がありませんが、当然ながらベースに近いと思われます。
日本では、液体燃料だと発射直前に燃料注入をしなければならない、というデマが蔓延っていますが、潜水艦で運用されていたことを考えれば容易に想像が付くとおり、液体燃料でも注入したまま何年でも運用できます。
(燃料自体に腐食性を抑える工夫をしたり、耐腐食性の部品を使用する)


この「ムスダン」は、今までに明確に確認されている発射実験(イランで実施されたと言う情報もあるが真偽不明)がなく、韓国国防省の分析には疑念も湧くのですが、もし本当だとすれば、日本にとって見過ごせない脅威です。

対アメリカ用としては、グアムくらいしか射程に入らず、はなはだ中途半端なスペックであるため、本当に実戦配備したとするなら、MDを突破するための対日本(及び在日米軍)用ではないかと思えるのです。


弾道ミサイルは、最大射程となる最小エネルギー弾道の他、急角度で打ち上げ急角度で落下するロフト弾道、逆に浅い角度で発射、落下するディプレスト弾道で射撃することが可能です。
ロフト弾道、ディプレスト弾道とも、技術的には高くなり、命中精度も下がるのですが、前記のように、MDによる迎撃が困難になります。


ロフト弾道では、落下速度が速くなるため、ターミナルフェイズでの迎撃が困難(PAC-3弾の機動性能などから)になります。3000kmもの射程のあるミサイルをロフト弾道で日本に打ち込まれた場合、PAC-3での迎撃はほぼ不可能です。
一方、ディプレスト弾道では、飛翔高度が下がるため、ミッドコースフェイズでの迎撃が困難(SM-3弾の最低作動高度などから)になります。情報が少なく、不可能とは言い切れませんが、SM-3での迎撃は相当に困難だと思われます。


前述のとおり、3000kmという射程は使い道がありません。(グアム専用にミサイルを作るとは考えにくい)
この点を踏まえれば、日本にとっては注目すべきものなのですが、防衛省にとっては触れられたくない話題でもあるのか、未だコメントは聞こえてきません。

2009年3月 8日 (日)

尖閣防衛の鍵は

クリントン国務長官が最初の外遊先に日本を選び、オバマ大統領がホワイトハウスに招く最初の外国首脳として麻生首相を選ぶなど、オバマ政権の日本重視の姿勢に気をよくしたのかもしれませんが、麻生首相は、2月26日の衆院予算委員会において、「尖閣は日本固有の領土である以上、日米安全保障条約の対象になる」と述べ、尖閣が紛争の場となった場合に、アメリカが日本側に立って参戦するとの見解を示しました。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009022600059
この時、民主党の前原氏が求めたこともあり、裏づけを取るためにアメリカ側に確認することも約しています。


ところが翌27日、読売新聞はアメリカ側がこの件に関して「領土問題は当事者間で平和的に解決するべきだ」と回答しているという内容を報じています。
同新聞社による文書での照会に対しても、アメリカ国務省は「米国は国際合意を順守する。米国の政策は一貫している」と回答しているそうです。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090226-OYT1T01251.htm


麻生首相が見事に袖にされた形ですが、この回答は頂けません。これでは、尖閣の領有権を主張する中国を助長してしまいます。
1950年、当時のアメリカ国務長官だったディーン・アチソンが「不後退防衛線(アチソン・ライン)」演説(米国が軍事侵略に断固として反撃するラインを日本・沖縄・フィリピン・アリューシャン列島とした)が、朝鮮戦争を誘引したように、中国による軍事侵略を暗に認めるというメッセージを送ってしまうことになります。


同記事では、「日本政府は「米側は政権移行期のため、最低限の回答をしている」と分析、政治任用の実務責任者が空席の影響もあると見て、国務、国防両次官補が承認され次第、改めて確認を求める考えだ。」と書いており、日本政府として、表面的にはアメリカ国務省を立てているようですが、実際にはかなり強硬な抗議をしたのでしょう。
3月4日には、尖閣諸島にも日米安保条約が適用されるとのアメリカ国務省の公式見解が示されたことが報じられています。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090305-OYT1T00621.htm?from=main2

この見解は、国務省の当局者が「尖閣諸島は沖縄返還以来、日本政府の施政下にある。日米安保条約は日本の施政下にある領域に適用される」と述べたもので、同じ見解が日本政府にも伝えられたとの事です。

同報道によると、この見解は「クリントン政権時の1996年と、ブッシュ政権時の2004年に、米政府高官が示した見解と同じ」だということで、規定路線であるようにも見えます。

ですが、この見解が示されるわずか2日前に行われた国務省の記者会見でも、ドゥーグッド副報道官代理は、この問題に関する質問に、「持ち帰る」として、回答しなかった経緯があり、いくら政権交代期とは言え、アメリカの確固たる姿勢ではないことが読み取れます。


そのためか、「現在は民族主義的な反応を見せるべきではなく、解決は日中の力関係が変化する時まで冷静に待つべきだ」などとする中国(香港)紙の報道まであります。
http://www.recordchina.co.jp/group/g29089.html
これには、「今後、中国経済は成長を続け、日本経済が衰退へと向かう中、未来に解決を図る方策は中国にとって有利に働く」との分析がベースにあるようで、いずれアメリカによるコミットメントが後退し、アメリカが中国の領有権を認めざるを得なくなると見ているようです。
実際、現在でも中国はアメリカの国債を大量に保有しており、アメリカを経済面からコントロールできる力を持ちつつあります。日本でも同じような話がありましたが、米国債の売却は恫喝にもなるのです。中国による米国債の売却を、日本が買い支えできなければ、本当にアメリカが中国の言うことを聞かなければならなくなる日も来ないとは言えません。


中国が海空戦力を中心とした急激な軍拡を続けているため、尖閣諸島周辺での日中間の軍事バランスは、既に日本がアドバンテージを持っているとは言えない状況になっています。
それだけに、尖閣防衛の鍵はアメリカのコミットメントにあると言えます。


尖閣防衛のためには、軍事的努力も必要ですが、外交面の努力が不可欠です。

2009年3月 5日 (木)

不沈イージス艦「日本」

北朝鮮による「人工衛星」打ち上げ準備に対して、アメリカは迎撃発言をするなどセンシティブな状態になっています。

これは、日本列島を震撼させた97年の弾道ミサイル発射に対して、韓国が非常に落ち着いていたことと同じ構図です。
97年当時でも、韓国は北朝鮮が以前から実戦配備していたスカッドや、ソウルなどは野砲の射程にさえ入っていたため、さほど脅威の変化はなく、慌てることはありませんでした。
今回の場合、日本は既にノドンの射程内にあり、テポドンが開発されたとしても脅威の変化はさほどでないことに対して、ミサイルを撃ち込まれるようになるかもしれないアメリカは、ヒステリックにさえ見える状況となっています。

その結果、アメリカの対外政策における日本の重要性が増しています。
先頃クリントン国務長官は、最初の外遊先として日本を選びましたし、オバマ大統領がホワイトハウスに招く最初の外国首脳として、麻生首相が選ばれました。

報道では、日本重視の理由として、経済的な側面ばかりが取り上げられましたが、軍事的な側面も強いのです。
北朝鮮の弾道ミサイルからアメリカを守るためには、日本の協力が重要なのです。

北朝鮮からアメリカ西海岸に向けて弾道ミサイルが飛翔する場合、ロシア沿海州からカムチャツカをかすめるように飛ぶルートを採ります。東海岸の場合は、シベリアを縦断する形になります。
O0320028610148834782
(ピョンヤンを中心とした正距方位図法)(NIJIX ANNEXより)

北朝鮮による弾道ミサイル発射の直後から正確な位置を捕捉するためには、日本の北部は都合の良い位置にあるわけです。
というより、アメリカとしてはロシアの協力が期待できない以上、日本ないしはその近海から監視網を構成できなければ、いくらGBIがアラスカやカリフォルニアに配備されていても、迎撃はおぼつきません。

現状の監視網では、青森県の車力には米軍が持ち込んだレーダーAN/TPY-2レーダーがありますし、コブラボールは嘉手納から監視飛行を行っています。日本近海で行動する米海軍艦艇にとっても、横須賀や佐世保での補給は重要です。
そして、何より重要なのは、今後はFPSー5やFPSー3改がとらえたデータを、JADGEを経由して入手できることです。(BMD統合任務部隊の指揮所となるCOCは、在日米軍との共同統合運用調整所と一体化します。)
また、北朝鮮がICBM級のミサイルを実戦配備するとなれば、ABLの発進基地として在日米軍基地が使われる可能性は高いですし、集団的自衛権行使の問題がクリアーされれば、稚内あたりにGBIを配備するなんて話が出てきてもおかしくはありません。
(イランに対するポーランドの位置と比べると、稚内でも北朝鮮に近すぎるが、これより遠くでGBIが設置可能な場所となると、アメリカに近くなりすぎる。特に東海岸)

公開している小説中でも書きましたが、北朝鮮の弾道ミサイルがアメリカに直接の脅威となる時、日本はアメリカにとって不沈空母ならぬ不沈イージス艦となる運命にあるのです。

2009年3月 4日 (水)

外相、首相の発言は布石

中曽根外相が「仮に(北朝鮮が説明する)人工衛星であっても、発射すれば国連安保理決議違反だ」と発言しています。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date4&k=2009030100020


また、麻生首相も「国連の安保理決議1718違反であることははっきりしている。国連の対応が安保理で決められるだろう」と言っています。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date3&k=2009030200923

これら発言の目的は、北朝鮮に圧力をかける(発射を思いとどまらせる)ためのものだと言われています。

もちろん、それは間違ってはいませんが、首相や外相のコメントとしてはずいぶんと踏み込んだ発言に思えます。
少し穿った見方ですが、この背後にはアメリカの思惑があるのではないでしょうか。


アメリカは、何人かの政府関係者が、今回の北朝鮮の「人工衛星」に対して「迎撃」を行うことをほのめかしています。
アメリカは、もし打ち上げの失敗でアメリカに落ちる可能性が出てくれば、実際に迎撃を行う可能性が高いでしょう。


この時、日本はFPSー3改などの航跡データを米軍に提供していますから、日本として意図していなくても集団的自衛権を行使し、アメリカの防衛に協力したことになってしまいます。
そうなれば、集団的自衛権を行使できるとの解釈変更は、まだ行われていないので、政府に批判がでることは間違いありません。


今回の首相と外相の発言は、このことを念頭にして、少しでも批判をかわすため、国連決議違反だとする政府見解があることを明確にしておきたいのでしょう。
防衛省か外務省の中から、「なし崩しに集団的自衛権の行使となってしまうかもしれません」なんて報告されたのかもしれません。


また、浜田防衛相が(やっと)人工衛星であっても迎撃を行う可能性について言及しています。
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009030301000326.html
加えて、昨日の記事で既に日本海に居るかもしれないと書いたイージス艦ですが、日本海に出すことは(これもやっと)固まったようです。
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009030301000203.html


だんだんと書いたとおりになってきました。

2009年3月 2日 (月)

「弾道ミサイル等の破壊措置命令」予想

北朝鮮による「人口衛星」の発射が迫っていると思われるので、今回は発令されるかもしれない「弾道ミサイル等の破壊措置命令」の内容を予想してみたいと思います。
なお、以前の記事「北朝鮮がミサイル?発射準備-日本に出来ること」とダブる部分がありますが、ご了承下さい。


命令は、自衛隊法82条の2(第1項)に基づき防衛相が発令します。(3項による緊急対処ではイージスが使えないため、第1項による命令が発令される)


航空自衛隊の航空総隊司令官に対しては、BMD統合任務部隊指揮官として、指揮下の警戒管制部隊と高射部隊、そして統合任務部隊に組み込まれる海自の海上構成部隊を指揮して、我が国に飛来するおそれのある弾道ミサイル等を破壊(迎撃)することが命じられます。
海上構成部隊に対するエアカバーを行うため、戦闘機部隊を統合任務部隊に含む可能性も否定できませんが、戦闘機は(航空方面隊司令官を通じて)総隊司令官の権限で、運用できるため、必ずしも含まれないでしょう。(対領空侵犯措置の範疇で行動させる)(内規で含まないことと定められている可能性もある)


海上自衛隊の自衛艦隊司令官に対しては、BMD統合任務部隊指揮官に対して、指揮下にある艦艇を差出し、指揮を受けさせることが命じられます。
イージスが差し出される事は間違いありませんが、イージスを護衛するため、他の護衛艦も併せて差し出されると思われます。ただし、イージスに対する水上や水中からの脅威(今回の場合、そんなものがあるとは思えませんが)に対して、航空総隊司令官が適切な指揮を行えるか否かには疑問もあります。そのため、統合任務部隊の指揮所となるCOCに指揮要員として幕僚が派遣されるでしょう。
また、他の護衛艦は自衛艦隊の指揮下のまま、自衛艦隊司令官がイージスの護衛を行う可能性もあります。
ですが、BMD任務中でもイージス自体の自衛能力が相当にあるため、他の護衛艦が自衛艦隊指揮下のままでは、船頭多くして船山を登るのことざわの通りになりかねません。
やはり、イージスと一体に統合任務部隊に差し出されると思われます。
(防衛省の資料を見ても、イージスではない艦艇も描かれています)


「弾道ミサイル等」の定義が「弾道ミサイルその他その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であつて航空機以外のものをいう」とされているため、破壊(迎撃)を行う対象には、弾道ミサイルはもちろん、そのブースターや、北朝鮮が言うとおりの人工衛星でさえ含まれています。当然、未確認でも良いわけです。

ただし、「我が国に飛来するおそれがあり、その落下による我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため必要があると認めるとき」と決められているため、いくら腹立たしくても、衛星軌道に乗るものや、日本列島を大きく越えるものは何であれ(アメリカに向かう弾道ミサイルでも)破壊できません。

そのため、捕捉した目標の緒元(位置、方位、速度等)を常にモニターし、着弾予測地点を計算しておかなければなりません。(弾道ミサイルは、その名のとおり弾道軌道を描くため、着弾地点は目標諸元から計算できる。)
この着弾予測をどこで行っているかは公開されている情報が見当たりませんが、JADGEなどの指揮統制システムが行っていると考えるのが妥当です。(イージスやパトリオットのシステムも当然にその機能は持っている)


また、破壊(迎撃)を行う場所については、「我が国領域又は公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。)の上空において」とされているので、今回の場合では、北朝鮮ないしは韓国の領空でなければ良い訳です。


この計算された着弾予測地点や迎撃ポイントに基づき、BMD統合任務部隊指揮官が破壊(迎撃)を命ずる訳ですが、個別の目標に関して、司令官がいちいち迎撃命令を出す訳はないので、あらかじめ対処要領として定められた基準を元に、オペレーターが判断することになります。
実際に判断するオペレーターを、どのクラスまで下ろしているかは分かりませんが、統合任務部隊として一元的に判断しているはずですので、おそらくCOCに勤務する課長クラスで、AOCCまで権限を下ろしていると言うことはないと思われます。


ここまで、ほとんど法的な権限に関連したことを書いてきましたが、上記の実際の判断に際しては、迎撃確率や実効性についても考慮されているはずです。
つまり、迎撃システム(SM-3やPAC-3)の性能限界を超えて迎撃を命ずることや、いくら日本の領域に着弾すると言っても、ほとんど人の住んでいない場所に落下することが予想される場合は、迎撃を命じないことになっている(ハズ)と言うことです。
SM-3やPAC-3弾は高価ですし、それ以上に、迎撃確率が低い状況で迎撃すれば、弾道ミサイルに加えて、SM-3やPAC-3弾の破片まで地上に降り注ぐことになります。
山間地や海上に落ちるはずの弾道ミサイル等を迎撃すれば、結果として市街地に落下するというケースも考えられます。(普通に考えれば、迎撃によって弾道ミサイル等の水平方向の運動エネルギーが減少する)
例えば、東京湾への落下が予想される場合に迎撃を行うと、結果として都心に落ちるなどが予想される訳です。


北朝鮮が日本を狙って「人工衛星」を落とすとは到底考えられませんから、今回かりに弾道ミサイル等の破壊措置命令が出されるとしても、PAC-3の機動展開が行われる可能性はほとんどないでしょう。
今回PAC-3を展開させてしまえば、防衛省が考えているPAC-3の展開候補地がバレてしまう結果となるため、本当に必要となる場合に、特殊部隊によるゲリラ攻撃等を誘発する結果ともなります。


必然的に、今回の弾道ミサイル等の破壊措置命令(だされるとすれば)では、迎撃手段はイージスのSM-3です。イージス艦の所在情報は見当たりません(報道していたら国賊だ)が、既に日本海で配置についているかもしれません。

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