早期警戒衛星についての産経の報道姿勢
私は保守を自認しています。
そのため現役自衛官だった頃から、産経新聞の報道姿勢はありがたいと思っていましたが、あまりに提灯記事が過ぎるとニュースとしての信頼性に疑問符が付いてしまいます。
1月16日、産経は「防衛省、早期警戒衛星を開発へ ミサイル発射を直後に探知」という記事を載せています。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090116/plc0901161817008-n1.htm
タイトル・記事内容を見ても、まるで早期警戒衛星を開発配備することが方針として決まったとも取れる書きぶりですが、ニュースソースが同じと思われる他紙の記事を探すと、朝日に「宇宙の防衛利用、防衛省が基本方針を公表」というものがありました。
http://www.asahi.com/politics/update/0116/TKY200901160294.htm
こちらを見ると、確かに早期警戒衛星についても言及されているものの、「活用の検討や研究開発を推進」と書かれ、軸足は「研究」だと見て取れます。記事全体としては、早期警戒衛星よりも、既存の情報収集衛星の能力向上などに重点があるように書かれており、落ち着いた書きぶりで、防衛省が発表したものとしても現実的と見えます。
以前にこのブログでも「日本独自の早期警戒衛星は不要だ! 」という記事を書いていますが、日本のニーズに合った早期警戒衛星を配備しようとすれば、非現実的なコストになる可能性が高いです。
早期警戒衛星については、日本の防衛に真に必要なものはどの様なものか、その配備運用におけるコストはどの程度か、について、研究を進めておくことは必要ですし、結果は国民にも知らせるべきものです。
産経は、保守を自認するなら、もう少し現実を良く精査し、正確な記事を書いていただく必要があるでしょう。
産経と朝日の記事内容については、以下の通りです。
産経新聞
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防衛省、早期警戒衛星を開発へ ミサイル発射を直後に探知
防衛省は16日、防衛目的での宇宙利用を解禁する宇宙基本法制定を受けた「宇宙開発利用に関する基本方針」をまとめた。今後、取り組む施策として弾道ミサイル発射を直後に探知できる早期警戒衛星の開発や、軍事通信電波を傍受する電波情報収集衛星の研究を挙げた。航空機を利用した小型衛星打ち上げシステムの検討も盛り込んでいる。
世界でも米露両国しか保有しない早期警戒衛星の導入は、年末に改定される防衛計画の大綱でも焦点となる。同省では大綱に導入が盛り込まれれば、衛星から地表のミサイル発射を探知する高感度赤外線センサーの研究・開発に先行して取り組む方針だ。
現在の弾道ミサイル防衛(BMD)は地上、艦船のレーダーで日本に飛来する弾道ミサイルを探知・追尾し、イージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)で迎撃するシステムを取っている。迎撃精度の向上に不可欠なミサイル発射情報は米国の早期警戒衛星でしか探知できず、自衛隊は情報をもらう立場でしかないのが実情だ。
同衛星については災害監視など多目的な利用が可能なため、政府全体で研究開発を行う。一方、日本上空に飛来する軍事通信電波や各種兵器の発する電波を探知する電波情報収集衛星については防衛省を中心に研究を進める考えだ。
ただ、すでに内閣情報衛星センターが運用する情報収集衛星でも開発に5年以上かかっており、「実用化は中長期的な課題」(防衛省幹部)となる。
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朝日新聞
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宇宙の防衛利用、防衛省が基本方針を公表
防衛省は16日、宇宙の防衛利用をめぐる基本方針を公表した。昨年5月成立の宇宙基本法を受け、衛星からの情報収集や警戒監視の強化による防衛力整備を目指す。今年末に改定する防衛計画大綱に反映させる考えだが、「国際的な緊張を高める」「巨費を要する」などの批判もある。
基本方針では軍事衛星について「費用対効果や技術的可能性等を考慮して、具体的な事業化も視野に入れた検討を行う」とした。現在運用している情報収集衛星の解像度を上げるほか、緊急時に特定地域を集中監視できる「即応型小型衛星」や「電波情報収集衛星」の可能性も検討する。
重点分野として、日本周辺海空域の常時監視▽日米共同対処行動の円滑化や統合運用の強化▽国際平和協力活動のための情報収集能力強化――などを挙げた。近隣諸国のミサイル発射の兆候をつかむ早期警戒衛星についても、活用の検討や研究開発を推進するとしている。
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