ダブルスタンダード (田母神元空将論文問題)
前のエントリー「やっぱり内規違反とは言えない」で、触れた通知文書「部外に対する意見の発表について(通知)」について、一つ引っかかっている点があります。
通知文書(内規)のアドレス
http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/a_fd/1980/az19810223_00814_000.pdf
この文書ですが、当初の発簡は昭和56年とかなり古いのですが、昨年の1月と8月に一部修正が入ったのか、再度発簡されているようです。
さらに、文面中「従来よりしばしばいわれてきたところであるが、今後は更に」という表現が入っており、防衛省内において、今回の件以外にも問題となった事例があったことが窺われます。
昨年のことなので、田母神元空将の「関係ねえ」発言や東大での講演は関係ないでしょう。
今回の論文だけがことさらに問題とされ、これら以前の事案が闇に葬られていることを考えると、防衛省(というより防衛相)はダブルスタンダードだなと思えます。
そして、今回の事案以降にも、ダブルスタンダードの一例と思われる事象も発生しています。
それは、佐藤正久参議院議員が自身のサイトで防衛部会について書いている中で触れた、五百旗頭防衛大学校校長の論文です。
http://east.tegelog.jp/index.php?itemid=1934
以下、佐藤正久議員のサイトからの転載です。
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本日の部会において、最も紛糾したのは、11月9日付の毎日新聞に掲載された五百旗頭真・防衛大学校校長の論文だった。この論文では、今回の田母神さんの空幕長解任に触れ、「これに関連して想起するのは、1928年の張作霖爆殺事件である」として、「軍部に対するブレーキが利かないという疾患によって、日本は滅亡への軌道に乗った<中略>このたびの即日の更迭はシビリアンコントロールを貫徹する上で、意義深い決断であると思う」と綴られている。
ある議員が問題視したのは、今回の田母神論文事案と張作霖爆殺事件を同一視しているという点と、あわせて、この五百旗頭論文は「部外への意見発表」であるが、その手続きがなされていたのか、という点だった。
防衛省は、手続きの有無について、即座に答えられず、また論文の内容については確認していない、との発言があり、議員の間からは、「これこそ懲戒の必要があるのではないか」との怒号にも似た声が相次いだ。
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ブログ「週間オブイェクト」で、JSF氏は、「防衛大学校はそれより制約はありますが、研究の名目で政府方針と異なる見解を述べる事は可能です。」と書いています。
一般論ではその様に理解されるでしょうし、私自身は政府方針と異なるものでも、私的見解として述べることは許容されるべきだと考えています。
ですが、悪法も法なりで規則は規則です。
防衛省が即座に答えられなかった点を見ると、おそらく手続きはなされていなかったのでしょう。
なお、件の内規が防衛大学校校長に対しても適用されるのかという点は、文書のあて先に防大校長が入っている点から、明らかに防大校長にも適用されると言えます。
この内規のあて先には、「施設等機関の長」というものが入ってます。そしてこの施設等機関とは、防衛省設置法で規定されています。
(設置)
第十四条 防衛省に、次の施設等機関を置く。
防衛大学校
防衛医科大学校
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO164.html
その長が、防衛大学校では校長になることは自明です。
手続き問題に関する限り、田母神元空将と五百旗頭防大校長の件は明らかにダブルスタンダードです。
やはり防衛相にとって、問題は内容(謝罪外交の一端)だったのでしょうね。
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