H21概算要求-基地防衛教導隊
H21年度の予算は、まもなく予算審議が始まります。
防衛省が出した概算要求について、何度か記事に記事にしてますが、今回は空自の基地防衛教導隊について書きます。
と言っても、基地防衛教導隊について、概算要求に盛り込まれているわけではありません。
この基地防衛教導隊について、報じられたのは2004年8月の産経新聞です。
既に該当ページは消えているようですが、ネットにコピーがあったので、以下に転載します。
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空自基地テロ対策 防衛専門部隊新設へ 200人体制、軽装甲車装備
防衛庁は二十一日、テロやゲリラから航空自衛隊の基地を守る専門部隊として、空自に「基地防衛教導隊」(仮称)を新設する方針を固めた。基地や航空機が陸上から攻撃される事態に機動的に派遣し、平時には基地の警備要員を指導して警備能力の向上を図る。
平成十八年度に新設に向けた準備室を設置、二十年度に部隊を発足させる方針。部隊の規模は約二百人体制になる見通しで、部隊を指揮する隊司令も置く。
新たな装備として軽装甲機動車、軽機関銃を配備する。軽装甲機動車は陸上自衛隊部隊などに配備され、軽対戦車誘導弾の車上射撃が可能。特殊部隊によるテロ攻撃などの危険性を踏まえ、空自として対処能力を強化する。
空自の基地は全国に七十二あり、基地防衛では各基地ごとに約四十人の警備小隊を置いている。しかし、「特殊部隊の基地侵入や滑走路が破壊されるようなテロやゲリラの攻撃には、現状では装備、技術の両面で対応できない」(防衛庁幹部)という。
実際の有事の際の基地防衛の流れは、初動は基地の警備小隊が対処、その後に陸自の支援を受けられるまでの間、基地防衛教導隊が展開して敵の攻撃を阻止する。
一方、空自はミサイル防衛(MD)で高速飛行の弾道ミサイルを捕捉できる新型警戒管制レーダーの導入を目指しているが、レーダーサイトが攻撃される危険性も高く、基地防衛教導隊はサイトの防衛についても研究に着手する。
通常のレーダーサイトは攻撃を受けても、E-2CやAWACSといった早期警戒機が代替機能を果たすが、政府が二十年度から四基の配備を目指している地上配備型の新型警戒管制レーダー「FPS-XX」が破壊されれば代替手段がなく、弾道ミサイルに対する迎撃能力が失われてしまうためだ。
このほか、空自は基地内で爆弾などによる攻撃から航空機を守るシェルターの「掩体(えんたい)」についても、テロやゲリラの攻撃に対応できるものに切り替えるなど、整備計画を見直す方針だ。
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加えて、wikiにもページがあります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9F%BA%E5%9C%B0%E9%98%B2%E8%A1%9B%E6%95%99%E5%B0%8E%E9%9A%8A
さて、この産経の記事ですが、今現在も部隊は新設されておらず、来年度概算要求にも載ってないわけですから、記事としては誤報と言えるかもしれません。
ですが、火のないところに立った煙でもありません。
産経の記事にもあるとおり、防衛省は(空自の)基地や航空機が陸上から攻撃される事態
を憂慮しています。
そして、それは私も同じです。
公開している小説でも、空自基地の地上からの攻撃に対する脆弱性を描きました。やり方次第では、極少数の特殊部隊が侵入しただけでも、深刻な事態が発生する可能性があります。
基地防衛教導隊を新編する意義は高いわけです。
ですが、2012年を想定した小説でも基地防衛教導隊は登場させませんでした。残念ながら、2008年どころか、2012年でも編成は難しいと思っているからです。
wikiでは、予算等の問題から編成には至っていないと書かれています。
来年度の概算要求に盛り込まれなかったため、2010年までは新編されないことが確定しまいました。
ですが、放置して良い問題ではないことは、公開している小説を読んで頂ければ、理解して頂けると思います。
その一方で、予想に反して2012年までに新編されてしまわないか、結構ドキドキしてます。
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1 ■お邪魔致します。
自分は元陸自でしたので、駐屯地には警衛隊がおりましたが、やはりテロ対策ともなりますと、即応性に欠けている部分がございました(現役は10年以上前だったので、現在は多少変わったのかも知れませんが)日本の防衛はいつも思うのですが、肝心の所に落とし穴がある様に思えてなりません。やはり足元をしっかり固めて欲しいと思いますね。
今年はお世話になりました。
来年、どの様な年になるか不安ですが、日本人として、予備自衛官として、祖国の繁栄は願ってやみません。
数多久遠様、御身体御自愛頂き、良いお年をお迎え下さいませ。来年もまた、宜しく御願い致します。
投稿: 孤高の隼 | 2008年12月29日 (月) 17時56分
2 ■こちらこそお世話になりました
孤高の隼様
実は警備にはかなり深く足を突っ込んでおりまして、陸自駐屯地の警衛隊に勤務体系や態勢について、勉強させて頂いたこともありました。
基地防衛教導隊の投入など、厳しくすることはいくらでもできるんですが、常時行う警備をどうするかは、その当時、本当に難しい問題だと感じました。
多分現在も、現場は苦労しているだろうと思います。
こちらこそ、今年はありがとうございました。
たびたび見ていただき恐縮です。
来年もよろしくお願い致します。
http://ameblo.jp/kuon-amata/
投稿: 数多久遠 | 2008年12月29日 (月) 19時08分
3 ■最大の問題点は…
土地と予算が足りない。これですね。
理想的には20~30mの間隔で二重柵にするか基地の外側に100m以上の芝生をもつ緩衝地帯の採用、無人警戒システムの採用による初動遅延の補償から計画をスタートしなきゃならんのですが、現状ではにんともかんとも。これに関しては内閣府管轄の某組織の建物・敷地がそのようなグランドデザインが採用されていますが。
それよりも警備ポリシーがきっちり出来上がってなかったり、そもそもレベルで上から指示されることもないまま(行動の法的根拠)運用されているのも問題だとは思います。空の中の人自身、今までは深刻だとは(少なくとも表立っては)思ってないような態度を取っているのも問題だとは思っていますが。
それはそうと、個人的には9Dの方々に知り合いがいて、色々な事を笑い話として教えて貰ってる(バーターとして装備品の運用のコツを教えてますが)んですが、その中でもゲリラ対処訓練の話は抱腹絶倒です。一緒にビックマン飲みながら俺を笑い殺す気か?と思ったり。でも、本当はあんま笑えないんだけどね。
投稿: さむざむ。 | 2008年12月29日 (月) 21時56分
4 ■確かにそうなんですが・・・
さむざむ。様
今年はお世話になりました。
土地と予算が足りないのは承知してますが、どちらも絶望的ですよね。
それどころか、エントリー「危険な事業」で書きましたが、なけなしの緩衝地帯までなくなりそうです。
http://ameblo.jp/kuon-amata/entry-10153650525.html
警戒システムについては、それなりに装備されてますが、米軍がイラクで設置(詳細は自主規制)しているものと比べると、自衛隊の警備態勢は貧弱この上ないです。
おまけに技術的にはどうということないにも関わらず、費用を見積もるとすごい額ですし・・・
警備ポリシーは難しいんですよ。
さむざむ。氏が指摘するようなものが必要と認識しても、出来るはずも無いという現実があるなかで、実現性と妥当性になかなか妥協点が見出せず・・・
法的根拠については、海自のソマリア沖派遣に海上警備行動を根拠とすることによって発生する問題が、国内でも基地警備上で発生することが「内局に」認識されて欲しいのですが、これもまた・・・
空自の中では、少なくとも冷戦時代とは隔世の感があるほど認識は変わってます。(少なくとも海自よりはマシ)
むしろ問題は、警備についての知識がないにも関わらず、なまじ小銃射撃なんかはやっているおかげで、分かった様な気になっている方が多い事なんじゃないか思います。
さむざむ。氏が書かれているような笑えない笑い話は、山ほどありましたから。(陸自より間違いなく多いはずです。)
正直、この笑えない笑い話は、ブログの記事にしたい思いもあるのですが、あまりにも利敵行為になりそうなので止めてます。
9Dの駐屯地は、あちこちとお邪魔した経験があったので、懐かしく思えます。
来年度の概算要求で、改編が盛り込まれてますから、笑えない笑い話も多少は減るのではないでしょうか。
来年もよろしくお願い致します。
http://ameblo.jp/kuon-amata/
投稿: 数多久遠 | 2008年12月30日 (火) 01時02分