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2008年10月 6日 (月)

PAC-3はノドンを撃墜できるか? オブイェクト記事 その2

前回の続きです。


もう一つのプロファイルは、弾道軌道に近いものです。もちろん、弾道ミサイルのように下方に向かっているという意味ではありません。迎撃ミサイルのロケットモーターの燃焼終了後、既に空気密度の薄い高空に到達していれば、この後は、慣性に従って上昇を続けながら、もしくは水平に近い状態で、自由落下状態となる弾道飛翔が最もエネルギーを喪失しないプロファイルとなります。
「ミサイル入門教室」でも書かれている通り、速度エネルギーは、目標の動きに合わせて迎撃ミサイルを機動させ、誘導を行う上での重要な要素です。この点から、ヘッドオン迎撃ではない場合のプロファイルは、弾道軌道に近いものになる訳です。
この時、濃密な大気のある低空では、空気抵抗によるエネルギー損失を防ぐため、より鉛直に近い方位にミサイルを飛翔させていると思われます。重力ターンを行う弾道ミサイルや宇宙ロケットと同じ理屈です。
また、弾道プロファイルによる迎撃の場合、目標の追尾方式は、「ミサイル入門教室」で長い記述がなされている増強比例航法になります。(増強比例航法については、「ミサイル入門教室」を見てください。)
なお、先日のブログ記事で簡単に書きましたが、先日行われたPAC-3による弾道ミサイル迎撃訓練では、迎撃ミサイルの飛翔時間の長さ及び発射直後のプリプログラム誘導時の上方へのミサイル機動から、この弾道プロファイルにより、比較的遠距離での迎撃が行われたものと思われます。
(今回記事を書きながら計算しなおしてみると、先日の記事に誤りがあったということです。細部は後で書きます。)


まとめると、PAC-3は、近距離ではヘッドオン迎撃を行い、遠距離では増強比例航法による弾道プロファイルを採っていると思われるということです。


プロファイルが一つでないことに違和感を覚える方もいるかと思いますが、このことはパトリオットの開発経緯をみても不自然はことではありません。
パトリオットは、長射程のナイキミサイルと中射程のホークミサイル双方の後継として、開発されました。ナイキ、ホークとも航空機への誘導方式は比例航法ですが、短距離でも動作するホークは、目標に対して直進するプロファイルであることに対して、長射程のナイキはブースターがあることもあり、ほぼ垂直に上昇した後、切り離された先端部のみが目標に降下しながら飛翔します。
ナイキ、ホーク双方の能力を代替するため、パトリオットは近距離でも遠距離でも効率的な飛翔をすることを求められました。そのため、柔軟にプロファイルを変えられる必要性があった訳です。また、それを実現するために、中間誘導が指令誘導となっています。このあたりの技術的な傾向は、AAMでも同様です。


話が脇に逸れました。
パトリオットには2種類のプロファイルがあり、近距離ではヘッドオン迎撃するということから、誘導精度に関して言えば、PAC-3が迎撃可能な弾道ミサイルの種別は、一般に言われている以上に長射程である可能性があると言えます。先に書いたとおり、中間誘導の段階で高精度な誘導が出来、ヘッドオンコースに乗せられれば、終末段階のアクティブ・ホーミング時に、全く機動する必要がない可能性もあるからです。
極論すれば、中間段階の誘導精度さえ高ければ、誘導精度に関しては、ICBMにさえ対応できる可能性があるということです。(別のボトルネックがあるため、当然不可ですが、これについては後で書きます。)
誘導精度については、レーダーの分解能やコンピュータの処理速度によって決まってきますが、これについてはデータがないので何とも言えません。
ですが、ノドンの迎撃に関しては、少なくともこの点は十分な性能があるはずです。全く別の方向からの話になってしまいますが、ヘッドオンによるノドンの迎撃が不可能ならば、財務省が3個高射群分以上のPAC-3の予算化を許すはずがないからです。
米軍も実験は行っていないため、シミュレーション上のことになりますが、レーダーの分解能などから可能性のあるミスディスタンス(誘導誤差)は、「ミサイル入門教室」での計算と同様のシミュレーション結果から、終末段階のミサイルシーカーでの目標捕捉距離、搭載誘導部のリアクションタイム、姿勢制御用のサイドスラスターによる機動能力を考慮して、PAC-3ミサイルが反応可能な範囲にあると結論されているでしょう。
この辺の理論限界は興味のあるところですが、当然秘密になっています。(財務省の役人が羨ましい)


次回に続く

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