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2008年10月11日 (土)

PAC-3はノドンを撃墜できるか? オブイェクト記事 その4

前回の続きです


さて、ここまではPAC-3の飛翔速度と誘導精度についてだけ言及して来ましたが、ここからは別の観点からノドン迎撃の可能性について検討してみます。


パトリオットシステムが、ミサイルを目標に誘導するためには、RSと呼ばれるレーダーが目標を捕捉し、正確な目標位置情報を得ている必要があります。(理論上、不正確な位置情報でも指令誘導までは可能ですが、終末期のアクティブレーダーホーミング時の軌道修正が大きくなり命中率は極端に落ちる。最悪シーカーが目標捕捉できない。)


RSの捜索範囲は、距離180kmと言われていますが、この距離は水平距離ではなく、レーダーからの直線距離です。(どんなレーダーでも同じです)パトリオットのレーダーは方位を固定した運用なので、レーダーの捜索範囲は、半径180kmの球体を、中心から四角錘型に切り出したような形ということです。(上方の角度限界はシステムによって異なる。弾道ミサイルを迎撃するパトリオットは当然に高い角度まで捜索しているはず)


問題は、目標がこのレーダー捜索範囲に突入し、レーダーが目標を捕捉するまでの時間と、地表に着弾するまでの時間です。


レーダーについて詳しくない方は、目標が捜索範囲に入れば直ぐに捕捉できると思っている方が多いですが、たとえRCSが十分に大きくとも、直ぐに目標を捕捉できるとは限りません。
従来の機械的に回転するレーダーは、RCSが十分にあり、シグナルがノイズから区分できれば、ファンビームをゆっくりと横に駆動していたので、目標を1回のスイープで捕捉できました。(ただし、次のスイープまで目標のシグナルを捕らえられないので、高速目標を単一の目標として確立するには時間を要した)
フェイズドアレイレーダーは、目標捕捉後に直ぐに次のビームが打てるため、一度捕捉してしまえば、直ぐに安定追随できますが、最初の捕捉までは、広い範囲に細いビームを何本も打たなければならないため、捕捉までにはある程度の時間を要します。(当然ながら、総合的にはフェイズドアレイレーダーの方が能力が高い。以前はオペレーターの能力にも影響を受けた)
航空機ならば、水平線上から立ち上がってくるため、水平線上を集中的に監視(ビームを集中させて捜索するということ)すれば比較的早く目標を捕捉できますが、弾道ミサイルの場合は、捜索範囲内のどこに飛び込んでくるか分からないため、捕捉までに時間を要する場合がありえます。(運にもよる)

この事が、弾道ミサイル防衛ではキューイングが重要となってくる理由です。

どの程度の時間を要するかはもちろん秘密なので知る事はできませんが、ある程度必要なことは間違いありません。ただし、ターミナルフェイズでの迎撃であるパトリオットの場合、JADGEやイージスからキューイングデータを受領できる可能性が高く、それを前提とすれば、弾道ミサイルが捜索範囲内に入った直後に捕捉できると仮定しても問題ないでしょう。


たとえRSが目標を直ぐに捕捉したと仮定しても、弾道ミサイルが着弾するまでに、システムのリアクションタイムを消化し、PAC-3を発射し、目標と会合させなければなりません。
リアクションタイムもゼロと仮定したとしても、ICBMでは再突入速度がマック20にも達するため、180kmを26秒で落下してしまいます。つまりは、PAC-3ミサイルの命中精度がたとえICBMにも対応していたとしても、目標との会合はほとんど望めないということです。


では、どの程度の弾道ミサイルにまで対応しているかとなると、上記のリアクションタイムなど情報のない部分からの制限になるため、公開情報を信じるしかないということになります。


しかし、ICBMとノドンでは、速度は極端に異なります。日本に向けて飛翔させた場合、ノドンは最大でもマック10強と予想されます。(極端なロフトで飛翔させれば突入速度は更に速くなるが、日本に届かなくなる)パトリオットの捜索範囲に突入してから、パトリオットの前方20kmに着弾するまででも50秒程度かかる計算です。
前述のとおり、PAC-3ミサイルが20kmを飛翔する時間は15秒程度程度であるため、35秒も余裕がある計算となります。これだけあればおそらく対応は可能でしょう。


少々乱暴ですが、目標の補足とリアクションタイムについての結論としては、パトリオットのレーダー捜索範囲は、ノドンにPAC-3を会合させるために、十分な能力があると推定されるということです。
なお、この検討ではRCSに触れませんでしたが、パトリオットが自らの捜索範囲にミサイルを飛翔させる時、ノドンよりはるかに小さいパトリオット弾を自身で捕捉追随している訳ですので、S/N比の問題に関する限り、パトリオットのレーダーは、十分な能力を持っていると思われます。(弾道ミサイル相手では、クラッターもウェザークラッターぐらいしかないため、目標捕捉はそれほど難しくない)


最後にまとめです。

ずいぶんと長い記事になってしまいましたが、結論としては、PAC-3はノドンを目標とした場合、少なくとも20km程度の射程がある(迎撃し、命中させられる)と思われるということです。


意図したのか否かは分かりませんが、JSF氏は、交戦可能という微妙な表現を用いています。


ここでは、20km程度までは撃墜可能と言っておきましょう。
ただし、実証されてはいません。やはり同程度のスペックを持つ目標を使って実験されるべきだと思います。


注:記事中に書いたパトリオットや弾道ミサイルのスペックなどについては、主に「Weapons School」を参考にしています。
http://www004.upp.so-net.ne.jp/weapon/

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