大分間が開いてしまいましたが、空母保有についての続きです。
残りの話題は、艦隊の自己防御能力ですが、想定脅威をはっきりさせないと議論が空論になってしまうため、今回は多少将来のことまで含めた艦隊に対する脅威について書きます。
日本が空母を保有する場合、想定される戦場で最も可能性の高いものは、尖閣や中台危機がらみの東シナ海における対中国戦です。
その際の空母に対する脅威は、やはり対艦ミサイルです。
先日の潜水艦騒ぎのおかげで、海自の対潜能力について、疑問が呈されることもありますが、こと対中国を考えた場合、ヘリを搭載した多数の護衛艦と世界最高水準にあると言われる通常動力型潜水艦を備えた艦隊が、空母に対する中国潜水艦の接近を許すとは到底思えません。
そんなわけで、以下では中国の対艦ミサイルの運用能力について、まとめてみました。
まず対艦ミサイル運用可能な水上戦闘艦を見てみると、小はミサイル艇から大は駆逐艦まで、総数136隻にも及びます。搭載される対艦ミサイルは、亜音速のYJ-83などの他、超音速の3M80MBEなども運用されています。
当然、これらの全てを東シナ海に集められるわけではありませんが、いざ日本と事を構えるとなれば、集中させてくることは当然でしょう。
この中で、他の方の論中ではあまり言及されていませんが、ミサイル艇にはもっと注意すべきです。沿岸防衛用と言われていますが、東シナ海であれば、十分に活動できます。
駆逐艦
・Luda級×10隻以上
HY-2×6orYJ-83(C-803)×16
・Luhu級×2隻
YJ-83(C-803)×16
・Luhai級×1隻
YJ-83(C-803)×16
・Luyang級×2隻
YJ-83(C-803)×16
・LuyangⅡ級×2隻
YJ-62(C-602)×8
・Luzhou級×2隻(建造中?)
YJ-83(C-803)×8
・ソブレメンヌイ級×4隻
3M80Eor3M80MBE×8
フリゲート
・JianghuⅠ~Ⅱ級×19隻
SY-1×4
・JianghuⅢ~V級×9隻
YJ-8orYJ-81orYJ-83×8
・JiangweiⅠ級×4隻
YJ-8×6
・JiangweiⅡ級×10隻
YJ-83(C-803)×8
・Jiangkai級×3隻
YJ-83(C-803)×8
ミサイル艇
・037-II型×24隻
YJ-8×4
・520T型×6隻
YJ-8×6
・022型×40隻(一部建造中)
YJ-83×8
次に対艦ミサイルを運用すると思われる航空機を見てみます。
ただし、対艦ミサイルを運用可能な機種、機数はもっと多いものの、任務が別と思われる機体や退役している可能性が高いものは除外しました。
以下に上げた航空機は、全て海軍所属機です。防空任務が付与されていないこともあり、要時には戦略機動で集中されると見る方が妥当です。全てが投入されれば、亜音速ミサイルだけでも360発も撃てることになる他、Su-30MKK2が運用する超音速ミサイルも相当数になることが分かります。
爆撃機
・H-6×約30
YJ-83×4
攻撃機
・JH-7×約60
YJ-83×4
・Su-30MKK2×24機
YJ-91×不明
艦艇、航空機とも、中国による戦力集中の問題だけでなく、日本側もミサイルが撃たれるまで座して見ているわけではないにせよ、これだけの戦力があるという点は、最も注視すべき点です。更に、これらは極めてハイペースで増加中です。
数的には、一部に留まりますが、迎撃が難しい超音速ミサイルにも留意しなければなりません。
また、ミサイル艇やJH-7は、ミサイルプラットフォームとしての能力(防御力など)が低く、脅威でなはいと見る向きもありますが、私はむしろ重要視しています。
確かに、艦隊中の空母を狙い撃ちすることは難しいでしょうが、衛星などで艦隊の位置が分かっていれば、搭載レーダーでの目標補足することなしにミサイルを発射すれば、YJ-83であれば十分な射程があることもあり、艦隊中のいずれかの艦艇にはミサイルを指向させられます。
人権意識がなく伝統的に人海戦術を採用する中国の場合、被害発生をためらわないということも重要です。022型ミサイル艇やH-6、JH-7などは、必ずしも帰還を考慮していない可能性もあります。
さらに、日本の空母保有を考えた場合、ここに現れていない最大の脅威があります。
それは、中国がTu-22M3バックファイアを輸入することです。
現在は、まだロシア側が輸出に難色を示しているようですが、日本が空母を保有するとなれば、ロシアもそのあたりは考慮するでしょう。そして、バックファイアの戦力化にはある程度時間がかかるとしても、日本が空母を戦力化するよりは早いと思われます。
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