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2008年10月

2008年10月29日 (水)

「しらせ」解体決定 ネットオークションに出せ!

24日、政府は7月に退役した南極観測船「しらせ」の保存を断念し、解体処分すると決定しました。
http://sankei.jp.msn.com/science/science/081024/scn0810242338004-n1.htm


文科省と防衛省は、「しらせ」を後世に残すため引き受け先を募集していました。いくつか提案のあった中から、海上博物館として展示保存する方向で検討していたようですが、改修費や維持費がネックとなって売却条件が折り合わず、結局解体、スクラップということになったようです。
ただし、スクリュー、いかり、艦名看板など少なくとも17以上の部品は取り外し、海上自衛隊の佐世保資料館で一般展示することになるようです。


展示保存の方向で努力はしたので、致し方ないとは言えるのでしょう。
しかし、これでまた文化遺産がまた一つ消えることになってしまいます。
あまりにも、もったいない。


そこで、文科省と防衛省に提案があります。
17と言わず、なるべく多くの部品を取り外し、ネットオークションにかけて下さい。

国や有志企業での保存が無理なら、一部だけでもマニアの手で保存すべきです。「しらせ」にはそれだけの価値があると思いますし、マニアの手元にあれば、それなりに大切にしてもらえるはずです。


防衛省の会計処理上は、前例のないことになるため大変でしょう。しかし税務署が差し押さえた資産などはオークションにかけられた実績もあります。
決して無理ではないはずです。


是非やって下さい。
私も、1点くらいは買いたいと思います。


※ 今回の記事は、あちこちにリンクを貼っていただけると助かります。

2008年10月27日 (月)

原子力の日とアフガン自衛隊派遣

昨日(10月26日)は、原子力の日でした。
文部科学省と資源エネルギー庁が、ポスターコンクールなんかもやっていました。
http://1026.go.jp/


このブログでは、軍事・防衛関係の話題を扱っているので、核兵器について書いても良いのですが、今回はエネルギー安全保障の観点から書いてみたいと思います。


ここ数週は下落傾向ですが、昨年あたりから続く原油高のおかげで、ここのところ石油以外のエネルギーには追い風吹いています。
原油高自体は喜べる話ではないのですが、エネルギー安保についての世論には、良い影響を与えていると思えます。


原子力についても、2酸化炭素を出さないこともあって、最近では「クリーンなエネルギー」とさえ言われています。
原発をなくすとまで言っていたドイツでも、考えを改めるようですし、核廃棄物の処理問題さえ解決すれば、「言うことなし」のようにも見えます。


しかし日本国内では、原油の確保が出来ないことと同様に、ウランの確保も出来ません。
現在、ウランの国内生産量はゼロであり、全量を輸入に頼っている状況です。
輸入元は、オーストラリアとカナダで全体の6割を占める状況です。
輸入元の偏りが激しいため、政府としては、カザフスタンとの関係強化を進め、同国も主要輸入元とすべく活動中です
ウラン資源の埋蔵量などは、次のサイトを参考にして下さい。
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2007energyhtml/html/1-2-1-6.html


カザフとの関係強化自体は、悪い話ではないのですが、ここでも政府の安全保障感覚はまだ少し問題があるように思えます。
主要輸入元を広げることは、リスクヘッジになります。ですが、それは安定的な供給を期待できる国であればこそです。
カザフといくら関係強化できようとも、輸送ルートに不安があるままでは、カザフに頼ることは問題があると言わざるを得ません。


ちょっと地図を見ていただければ分かりますが、カザフはユーラシア大陸の中央で、西と北はロシア、東は中国、南はアフガンなどの中央アジア諸国に囲まれています。
多少なりともまともそうなルートは、南西のカスピ海を経て、アゼルバイジャン、アルメニア、トルコに至るルートですが、このルートでもアゼルバイジャン、アルメニア間のナゴルノ・カラバフをめぐる紛争、トルコ西部のクルド問題などがあり、とてもまともなルートとは言えません。(土地も峻厳)


しかし、中国やロシアをあてにはできない以上、ないものは作るしかないでしょう。
アフガン(とパキスタン)が安定すれば、ウズベキスタン、タジキスタンなど多少の問題ですむ国経由でインド洋に続くルートが出来ます。


先日も書いたとおり、来年度予算の概算要求にCH-47を改修する費用も盛り込んであります。
なによりも、日本の国益のため、アフガンの安定化に努力するべきではないでしょうか。

2008年10月25日 (土)

ひっそりと5回目

10月19日、航空観閲式2008が航空自衛隊百里基地で行われました。
http://www.asagumo-news.com/news/200810/081023/08102301.html
http://ascii.jp/elem/000/000/182/182084/


観閲式のレポートは、上記リンクを含めいろいろなサイトで見られるので、行ってもいない私としては、観閲式のあり方について書いてみたいと思います。


タイトルに書いたとおり、航空観閲式は今年で5回目になります。
もともと観閲式は、3自衛隊の中央観閲式として朝霞駐屯地で行われていました。しかし海空も参加しているとは言え、中央観閲式が実態的には陸自の観閲式だったこと、及び同じ観閲を目的とした式典として海自が観艦式を行っていたことから、1996年からは3自衛隊が持ち回りで実施されることになりました。
そのため、航空観閲式としては今年で5回目ということになる訳です。(なお、小規模ながら陸海も参加しています)


タイトルにはひっそりと書きましたが、空自としては毎回非常な努力を傾けているため、やってる方々は必死です。
ただし、航空雑誌はでは取り上げるものの、陸の観閲式や海の観艦式と比べて、今ひとつ盛り上がりに欠け、一般メディアではそれほど目立っていないように思われます。

それはなぜでしょうか?

やはり、航空自衛隊の広報配慮が足りないと言うべきではないでしょうか。
一般公募は行っていない(観艦式はあるみたい)としても、陸海はアクセスも決して悪くありません。(朝霞と横須賀(発))
ところが航空観閲式は、空自内でも陸の孤島と呼ばれる百里です。(百里の方ゴメンなさい)アクセスさえ良ければ、航空機が飛べば基地外だって見られるわけですから、外柵沿いのギャラリーでも嬉しいはずです。


9・11以降は、警備上の配慮(周辺の人口密度が低い)もあるのでしょうが、首相の命を狙うにしても、もっとやり易い機会は幾らでもあるのですから、観閲式は開かれたモノにしても良いのではないでしょうか。


ただし、これについては反論があることも承知しています。

そもそも、観閲式なのですから、公開する必要なんて無いわけです。
「観閲」を辞書で引くと、「自衛隊などの長が、部隊を査閲すること」とあります。
朝雲の記事にもあるとおり、観閲官は麻生首相であり、観閲式とは、最高司令官である首相に部隊(が精強であること)を見て頂くためにやっているものなのです。


テレビはおろか、写真もろくに無い時代にあっては、最高指揮官による直接の査閲は、非常に重要でした。(百聞は一見にしかず)
しかし今や、首相が一言「○○部隊がどんな部隊か知りたい」と言えば、訓練風景などビデオを含めた詳細な情報を直ぐに見ることができます。
つまり、観閲式は純粋に「式典」になっているのです。


これからは、形は観閲であっても、主な目的は広報に切り替えても良いのではないでしょうか。
そして、そのためには航空観閲式の場所を入間に変更すべきだと思います。

まもなく11月3日に行われる入間基地の航空祭は、毎年イモ洗い状態になっていますが、航空観閲式を入間で実施し、予行を含めて公開すれば、見学者も分散され、良いことずくめではないでしょうか。(入間基地の勤務者を除く)

2008年10月23日 (木)

海自空母に対する攻撃 (空母保有論議その6)

大分間が開いてしまいましたが、空母保有についての続きです。


残りの話題は、艦隊の自己防御能力ですが、想定脅威をはっきりさせないと議論が空論になってしまうため、今回は多少将来のことまで含めた艦隊に対する脅威について書きます。


日本が空母を保有する場合、想定される戦場で最も可能性の高いものは、尖閣や中台危機がらみの東シナ海における対中国戦です。

その際の空母に対する脅威は、やはり対艦ミサイルです。


先日の潜水艦騒ぎのおかげで、海自の対潜能力について、疑問が呈されることもありますが、こと対中国を考えた場合、ヘリを搭載した多数の護衛艦と世界最高水準にあると言われる通常動力型潜水艦を備えた艦隊が、空母に対する中国潜水艦の接近を許すとは到底思えません。


そんなわけで、以下では中国の対艦ミサイルの運用能力について、まとめてみました。


まず対艦ミサイル運用可能な水上戦闘艦を見てみると、小はミサイル艇から大は駆逐艦まで、総数136隻にも及びます。搭載される対艦ミサイルは、亜音速のYJ-83などの他、超音速の3M80MBEなども運用されています。
当然、これらの全てを東シナ海に集められるわけではありませんが、いざ日本と事を構えるとなれば、集中させてくることは当然でしょう。
この中で、他の方の論中ではあまり言及されていませんが、ミサイル艇にはもっと注意すべきです。沿岸防衛用と言われていますが、東シナ海であれば、十分に活動できます。

駆逐艦
・Luda級×10隻以上
  HY-2×6orYJ-83(C-803)×16
・Luhu級×2隻
  YJ-83(C-803)×16
・Luhai級×1隻
  YJ-83(C-803)×16
・Luyang級×2隻
  YJ-83(C-803)×16
・LuyangⅡ級×2隻
  YJ-62(C-602)×8
・Luzhou級×2隻(建造中?)
  YJ-83(C-803)×8
・ソブレメンヌイ級×4隻
  3M80Eor3M80MBE×8

フリゲート
・JianghuⅠ~Ⅱ級×19隻
  SY-1×4
・JianghuⅢ~V級×9隻
  YJ-8orYJ-81orYJ-83×8
・JiangweiⅠ級×4隻
  YJ-8×6
・JiangweiⅡ級×10隻
  YJ-83(C-803)×8
・Jiangkai級×3隻
  YJ-83(C-803)×8

ミサイル艇
・037-II型×24隻
  YJ-8×4
・520T型×6隻
  YJ-8×6
・022型×40隻(一部建造中)
  YJ-83×8


次に対艦ミサイルを運用すると思われる航空機を見てみます。

ただし、対艦ミサイルを運用可能な機種、機数はもっと多いものの、任務が別と思われる機体や退役している可能性が高いものは除外しました。
以下に上げた航空機は、全て海軍所属機です。防空任務が付与されていないこともあり、要時には戦略機動で集中されると見る方が妥当です。全てが投入されれば、亜音速ミサイルだけでも360発も撃てることになる他、Su-30MKK2が運用する超音速ミサイルも相当数になることが分かります。

爆撃機
・H-6×約30
  YJ-83×4

攻撃機
・JH-7×約60
  YJ-83×4
・Su-30MKK2×24機
  YJ-91×不明


艦艇、航空機とも、中国による戦力集中の問題だけでなく、日本側もミサイルが撃たれるまで座して見ているわけではないにせよ、これだけの戦力があるという点は、最も注視すべき点です。更に、これらは極めてハイペースで増加中です。
数的には、一部に留まりますが、迎撃が難しい超音速ミサイルにも留意しなければなりません。

また、ミサイル艇やJH-7は、ミサイルプラットフォームとしての能力(防御力など)が低く、脅威でなはいと見る向きもありますが、私はむしろ重要視しています。
確かに、艦隊中の空母を狙い撃ちすることは難しいでしょうが、衛星などで艦隊の位置が分かっていれば、搭載レーダーでの目標補足することなしにミサイルを発射すれば、YJ-83であれば十分な射程があることもあり、艦隊中のいずれかの艦艇にはミサイルを指向させられます。
人権意識がなく伝統的に人海戦術を採用する中国の場合、被害発生をためらわないということも重要です。022型ミサイル艇やH-6、JH-7などは、必ずしも帰還を考慮していない可能性もあります。


さらに、日本の空母保有を考えた場合、ここに現れていない最大の脅威があります。
それは、中国がTu-22M3バックファイアを輸入することです。
現在は、まだロシア側が輸出に難色を示しているようですが、日本が空母を保有するとなれば、ロシアもそのあたりは考慮するでしょう。そして、バックファイアの戦力化にはある程度時間がかかるとしても、日本が空母を戦力化するよりは早いと思われます。

2008年10月22日 (水)

アフガンに自衛隊派遣

10月19日付読売新聞は、アメリカが自衛隊のヘリコプターなどをアフガンに派遣することを打診していると報じています。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20081018-OYT1T00700.htm


理由としては、道路整備が遅れており、輸送の中心となるヘリの数が不足しているとの事ですが、間違ってはいないものの、ウソのように思えます。
もちろん道路事情は悪いのでしょうが、タリバンの活動が活発になってきており、地上のコンボイは危険性が高いことが最大の理由ではないでしょうか。


ですが、空輸の比率を高めれば、今度はヘリが狙われるようになるでしょう。
実際、昨年(2007)のイラクでは、輸送に占める空輸の割合を高めたため、ヘリに対する攻撃が増えたとする情報があります。
08年3月号の軍事研究誌(元はJDW)では、イラクでの07年のアメリカ軍の飛行時間が05年のおよそ倍にあたる40万時間と見積もられており、敵との遭遇率も上がっていると書かれていました。
07年1月頃にバクダッド郊外でヘリが墜落し、12名が死亡した事故も、肩撃ち式のSAMによる攻撃だった可能性が高いとも報じられています。
http://www.kojii.net/news/news070126.html


ニュースは淡々と報じていますが、もし実施することになれば、C-130型機がイラクで行っている輸送任務以上に危険なものになるかもしれません。


また、この件については、報道よりもかなり以前から話がでているのでしょう。
21年度の概算要求に、多様な環境下での活動を可能とするためのヘリコプターエンジンの能力向上というものが盛り込まれていました。
(機種は明示されていませんが、「陸自輸送ヘリコプター」としてCH-47の写真が付けられています)
概算要求についての報道が出てきた時点で報じられていましたが、これは標高が高いアフガンでは、現在のエンジンでは出力不足になるからだと言われています。


現時点でこういった情報が流されることは、日本の世論がどう反応するかを見るための観測気球だと思います。
インド洋での給油や海賊対策以上に危険性が高いと思われるのですが、あまりにも簡単にスルーされているように感じます。
もちろん私は、概算要求資料でも書かれているとおり、「平和協力国家」の実現のために、積極的に実施すべきだと思っているのですが、この見事なスルーっぷりは、自衛官の生命に対する国民の無関心のように感じられてなりません。

2008年10月19日 (日)

危険な事業

防衛省のサイト内で、「防衛省政策評価に関する有識者会議その他の情報」というものが公開されています。
http://www.mod.go.jp/j/delibe/seisaku/sonota/index.html


公開されている資料は、その名の通り、政策評価に関する有識者会議にどのような案件が提示されたかを示す資料です。
有識者会議自体はどうでも良いのですが、案件のなかには、ダクテッドロケットやAAM-4など、耳目を引きやすい項目に隠れて、危険な項目が紛れています。


それはズバリ、総合評価の12番、「周辺財産管理」です。
タイトルだけでは、なんのことだか分からないと思うので、紹介されている概要を要約すると、「飛行場などの周辺で、騒音被害の発生防止などを目的として整備・管理している緑地帯などを、公園などとして地方公共団体などに使用を許可していることの効果を検証・評価する」と言うものです。


ほとんどの方は、「これのどこが危険なんだ!」、「遊休地の活用は結構なことじゃないか!」と言うでしょうし、有識者会議でも諸手を上げて歓迎される項目だと思います。


ですが、航空基地の地上脅威からの脆弱性を懸念する者としては、この事業には全面的に反対します。


必ずしも自衛隊基地に限ったことではありませんが、ランウェイなど基地の重要な部分が、基地外の民間人がいる地点から十分な縦深が確保できないというケースは、こと自衛隊基地にあっては、むしろ普通です。
それでも、従来は騒音被害の拡大を防ぐという名目で、緑地帯などが設けられていた場合があるわけですが、ここまで公園などになってしまえば、唯でさえ少ない縦深が更に減少します。
それも、公園など地方公共団体が使用する場所となれば、不特定多数が時間を問わず利用する可能性があるわけです。


もちろん防衛省は、有事にはこれらの場所を使わせないつもりでしょうが、現代のように非対称脅威が顕在化した時代にあっては、ゲリラ的に襲われることこそ警戒すべきです。


効果の検証を行う評価要素の中に、基地警備がどの程度の比重で盛り込まれているかは分かりません。
ですが、事業の趣旨などを鑑みれば、財務省や内局が主導している事業であることは間違いないでしょう。
制服組(特に基地警備担当部署)の意向が無視されないことを祈るばかりです。

2008年10月17日 (金)

撤収専門部隊

少々前の話になりますが、10月6日付産経新聞が、「空自、イラクへ撤収専門部隊を派遣へ」という記事を掲載しました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081006-00000503-san-pol


ミリタリー系ブログも数あれど、こういう地味な記事はどこでも取り上げません。
と、言うわけで、あえて取り上げてみます。


産経の記事は、12月に輸送任務を終え、帰国するクウェートへの派遣部隊(イラク領内での輸送任務を実施するので「イラク派遣部隊」と表記されていることが多いが、根拠地としている基地はクウェートにあります)の撤収に際して、大量の荷物を送り返すための通関・検疫業務や現地に建設した施設をクウェートに譲渡する業務を実施するため、空自が後方支援業務に特化した要員を部隊として派遣する、というものです。


新聞記事では具体的な職種には触れていませんが、多くは補給と会計でしょう。
どちらも、華々しい活躍の場はほとんどありませんが、重要であることは言うまでもなく、こういうケースでは往々にして激務だったりします。
後方業務は、ルーチン的な仕事が多く、規則どおりに仕事を流せば良いと思われがちです。確かに、既に確立された業務はそういった性格が強くなりますが、始めての仕事や、今回のような規則で細部を決められていないケースでは大変な苦労を強いられるようです。
その理由を簡単に言うと、発生する様々な問題について規定した下位規則がないため、逐一上位規則と照らし合わせて問題がないかどうか検討しなければならないからです。


と言っても、彼らの苦労はなかなか理解できないと思いますので、補給職種について一つネタを紹介します。
防衛省のサイト内にある資料ですが、「航空自衛隊物品管理補給規則」と言うのがあります。ちょっと見ていただければ分かりますが、まるで魔法の呪文のようです。
http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/g_fd/1968/gy19681225_00035_000.pdf
(PDFで71ページあります。重いです)


さらに、実際の業務はこんな程度で済むはずはなく、彼らは「航空自衛隊物品管理補給手続」(通常は「JAFR-125」と呼ばれています。)という分厚い辞書のような物を見ながら仕事をしています。正直、マネは出来ないなと思ったことを覚えています。

自衛隊の扱う物品は、全て国民の血税で賄われています。防衛調達に関しては、いろいろとニュースになってますが、末端は結構しっかりやっていると思います。(某社○庁などとは違います)


撤収業務部隊は、12月上旬に派遣され、輸送部隊が年内に撤収した後も、引き続き数ヶ月は現地で撤収業務を行う予定とのことです。


ご苦労様です。

2008年10月15日 (水)

特別警備課程での死亡事故について

取り上げたい話題ではないのですが、自衛隊の話題を中心にしたブログでありながら、無視してよい話題でもないと思うので、今回は海上自衛隊第1術科学校での死亡事故について書いてみます。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200810130062.html


まずはニュースの概要です。
「海自特別警備隊の要員を養成する第1術科学校の特別警備課程において、課程を途中でやめ、部隊に戻る予定の隊員1名に対して、15人が次々に戦うという徒手格闘の訓練を実施し、訓練を受けた隊員が急性硬膜下血腫により死亡した。」


ニュース自体が、訓練と銘打った集団暴行だったのではないか、とするものであり、その可能性も含めて、現在警務隊が調べているようです。
ニュースを見る限り、私も良からぬものを感じますし、課程をやめる隊員に過酷な訓練を実施する必要性が理解できないのですが、憶測で書くことは避けたいと思います。


事故は、特警隊の要員養成を行う課程教育の中で発生しました。特警隊は、不審船事案を受け、海自が編成した組織で、海上警備行動などの際、船舶の臨検などを行う部隊です。

臨検などの際、彼らの相手は、北朝鮮の特殊部隊かもしれませんし、逆になんら罪のない民間人である可能性もあります。そのため、特警隊の要員は、高い戦闘能力を持つだけでなく、高い状況判断能力が必要であり、相手を無闇に殺せばよいというものではありません。
その要員候補者が、訓練で相手を死なせるというなどと言うことは、決してあってはならない事態です。


語弊のある言い方かも知れませんが、今回の訓練が、あくまで正当な指導だったのなら、訓練を行った側(指導者だけでなく)は、怪我をさせないやり方をすべきだったし、特警隊要員とすれば(相手を殺せば良いという部隊ではないのだから)、それが出来なければならないし、また出来る筈だったと言うことです。(厳しい訓練自体を否定するつもりはない)
言い方を変えれば、今回の加害者は、間違って殺してしまったという言い訳が出来ないはずの人間ということです。加えて、リンクを張っている中国新聞の記事が事実なら、ボクシングならばTKOとなるような状況になった以後も殴り続けたようです。
法律的に言えば、少なくとも未必の故意はあったと言わざるを得ないでしょう。(過失致死ではなく、傷害致死になるということ)
そのため、今回の事故については、刑事的にも部内的にも厳しく処罰されることになると思います。


また、その後の処置にも問題があったと思われます。
死亡された隊員は、事故の際、意識を失ってから、江田島市内の病院に搬送されるまで45分もかかっています。ある程度の規模のある基地ならば、基地内に救急車があり、道路の混雑で現場到着が遅れたなどということも考えられません。おそらく、救急車は通報から5分もかからずに到着したのではないかと思います。その後の搬送に40分も要したとは到底考えられません。
訓練の指導者は、この点でも過失があると言わざるを得ないでしょう。


今回の事故は、メディアでも大きく取り上げられているようですし、現時点の情報は、かなりの異常性を感じさせるものです。
海自のリクルートにおいては、相当なダメージとなるのではないでしょうか。

2008年10月13日 (月)

基地司令 ?

ここ数日、このブログに「基地司令」の検索結果で訪れてくれた方が、かなり多数いらっしゃいます。


このブログ、特殊なワードでは検索上位に来ることもあるのですが、「基地司令」と言った一般的なワードではそれほど上位に来るわけではありません。また、基地司令にまつわる大きなニュースが流れたわけでもないので、「なぜ?」と言うのが感想です。


もし、なにかリクエストがあれば、コメントして下さい。

答えられる範囲で記事を書きたいと思います。

2008年10月11日 (土)

PAC-3はノドンを撃墜できるか? オブイェクト記事 その4

前回の続きです


さて、ここまではPAC-3の飛翔速度と誘導精度についてだけ言及して来ましたが、ここからは別の観点からノドン迎撃の可能性について検討してみます。


パトリオットシステムが、ミサイルを目標に誘導するためには、RSと呼ばれるレーダーが目標を捕捉し、正確な目標位置情報を得ている必要があります。(理論上、不正確な位置情報でも指令誘導までは可能ですが、終末期のアクティブレーダーホーミング時の軌道修正が大きくなり命中率は極端に落ちる。最悪シーカーが目標捕捉できない。)


RSの捜索範囲は、距離180kmと言われていますが、この距離は水平距離ではなく、レーダーからの直線距離です。(どんなレーダーでも同じです)パトリオットのレーダーは方位を固定した運用なので、レーダーの捜索範囲は、半径180kmの球体を、中心から四角錘型に切り出したような形ということです。(上方の角度限界はシステムによって異なる。弾道ミサイルを迎撃するパトリオットは当然に高い角度まで捜索しているはず)


問題は、目標がこのレーダー捜索範囲に突入し、レーダーが目標を捕捉するまでの時間と、地表に着弾するまでの時間です。


レーダーについて詳しくない方は、目標が捜索範囲に入れば直ぐに捕捉できると思っている方が多いですが、たとえRCSが十分に大きくとも、直ぐに目標を捕捉できるとは限りません。
従来の機械的に回転するレーダーは、RCSが十分にあり、シグナルがノイズから区分できれば、ファンビームをゆっくりと横に駆動していたので、目標を1回のスイープで捕捉できました。(ただし、次のスイープまで目標のシグナルを捕らえられないので、高速目標を単一の目標として確立するには時間を要した)
フェイズドアレイレーダーは、目標捕捉後に直ぐに次のビームが打てるため、一度捕捉してしまえば、直ぐに安定追随できますが、最初の捕捉までは、広い範囲に細いビームを何本も打たなければならないため、捕捉までにはある程度の時間を要します。(当然ながら、総合的にはフェイズドアレイレーダーの方が能力が高い。以前はオペレーターの能力にも影響を受けた)
航空機ならば、水平線上から立ち上がってくるため、水平線上を集中的に監視(ビームを集中させて捜索するということ)すれば比較的早く目標を捕捉できますが、弾道ミサイルの場合は、捜索範囲内のどこに飛び込んでくるか分からないため、捕捉までに時間を要する場合がありえます。(運にもよる)

この事が、弾道ミサイル防衛ではキューイングが重要となってくる理由です。

どの程度の時間を要するかはもちろん秘密なので知る事はできませんが、ある程度必要なことは間違いありません。ただし、ターミナルフェイズでの迎撃であるパトリオットの場合、JADGEやイージスからキューイングデータを受領できる可能性が高く、それを前提とすれば、弾道ミサイルが捜索範囲内に入った直後に捕捉できると仮定しても問題ないでしょう。


たとえRSが目標を直ぐに捕捉したと仮定しても、弾道ミサイルが着弾するまでに、システムのリアクションタイムを消化し、PAC-3を発射し、目標と会合させなければなりません。
リアクションタイムもゼロと仮定したとしても、ICBMでは再突入速度がマック20にも達するため、180kmを26秒で落下してしまいます。つまりは、PAC-3ミサイルの命中精度がたとえICBMにも対応していたとしても、目標との会合はほとんど望めないということです。


では、どの程度の弾道ミサイルにまで対応しているかとなると、上記のリアクションタイムなど情報のない部分からの制限になるため、公開情報を信じるしかないということになります。


しかし、ICBMとノドンでは、速度は極端に異なります。日本に向けて飛翔させた場合、ノドンは最大でもマック10強と予想されます。(極端なロフトで飛翔させれば突入速度は更に速くなるが、日本に届かなくなる)パトリオットの捜索範囲に突入してから、パトリオットの前方20kmに着弾するまででも50秒程度かかる計算です。
前述のとおり、PAC-3ミサイルが20kmを飛翔する時間は15秒程度程度であるため、35秒も余裕がある計算となります。これだけあればおそらく対応は可能でしょう。


少々乱暴ですが、目標の補足とリアクションタイムについての結論としては、パトリオットのレーダー捜索範囲は、ノドンにPAC-3を会合させるために、十分な能力があると推定されるということです。
なお、この検討ではRCSに触れませんでしたが、パトリオットが自らの捜索範囲にミサイルを飛翔させる時、ノドンよりはるかに小さいパトリオット弾を自身で捕捉追随している訳ですので、S/N比の問題に関する限り、パトリオットのレーダーは、十分な能力を持っていると思われます。(弾道ミサイル相手では、クラッターもウェザークラッターぐらいしかないため、目標捕捉はそれほど難しくない)


最後にまとめです。

ずいぶんと長い記事になってしまいましたが、結論としては、PAC-3はノドンを目標とした場合、少なくとも20km程度の射程がある(迎撃し、命中させられる)と思われるということです。


意図したのか否かは分かりませんが、JSF氏は、交戦可能という微妙な表現を用いています。


ここでは、20km程度までは撃墜可能と言っておきましょう。
ただし、実証されてはいません。やはり同程度のスペックを持つ目標を使って実験されるべきだと思います。


注:記事中に書いたパトリオットや弾道ミサイルのスペックなどについては、主に「Weapons School」を参考にしています。
http://www004.upp.so-net.ne.jp/weapon/

2008年10月 8日 (水)

PAC-3はノドンを撃墜できるか? オブイェクト記事 その3

前回の続きです


次に、弾道ミサイルをヘッドオンで迎撃できる範囲はどの程度でしょうか。
SAMに限らず、一般にミサイルのロケットモーター燃焼時間は十数秒です。パトリオットPAC-2(GEMなどを含む)の燃焼時間も12秒程度だと言われていました。PAC-2とPAC-3のミサイルサイズを比較すると、径は異なるものの、全長はほぼ同じ、ロケットモーター部の長さは、PAC-3が若干長くなっています。
ミサイルのロケットモーター断面は、初期加速を高く(特にSAM)するため、後端部のみ円あるいは星型などでくりぬいてありありますが、それより前は推進剤が目いっぱい詰まっている状態です。早い話、後ろから徐々に燃えて行くと言う事です。


そこで、PAC-3のロケットモーター燃焼時間を15秒と仮定します。そして、PAC-3の飛翔速度がマック5超と言われているため、平均速度をマック5と仮定すると、ロケットモーターの燃焼中に、PAC-3ミサイルは25.5kmを飛翔することになります。
計算を単純化するため、PAC-3の飛翔経路を直線とし、上昇角度を45°とすると、飛翔距離の水平成分(射程)、垂直成分(射高)とも18kmとなります。
これは、よく言われるPAC-3の射程15~20km、射高15~20kmと合致します。


ということは、通常射程、射高と言われているものは、ロケットモーターが作動中、または燃焼終了直後で、ヘッドオン迎撃ができる範囲ということです。
なお、計算上では、近距離での射高を更に高くできそうですが、空気密度の減少から、20km以上では操舵が困難になるのでしょう。
逆に、低高度では射程を延ばせそうですが、濃密な大気での空気抵抗でエネルギーロスが大きいものと思われます。


この範囲(射程20km、射高20km)ではヘッドオン迎撃が可能ということですから、この範囲内でのPAC-3での迎撃確率は、パトリオットシステムというよりシーカーの捕捉範囲など、PAC-3ミサイルの性能だけで決まって来るものと思われます。(連続発射による迎撃試行回数による差は当然に生じる)
ということは、この範囲では他のボトルネックが無い限り、特定の目標に対する迎撃確率は、大きく異なることはないということになります。よって、ノドンに対処可能な範囲がこれより小さいと言うことはないと思われます。
分かり難い表現になってしまいましたが、PAC-3によるノドンの迎撃確率をグラフにした場合に、20kmまではほぼ一定の数値を示すだろうということです。


よって、JSF氏が言及していたwikiの記事、ノドンに対する射程が20kmという点については正しいだろうと思われます。(PAC-3は、多少なりともノドンを迎撃できるという前提の元)


そして、これよりも遠方、つまりヘッドオンではなく弾道軌道でPAC-3が誘導される範囲では、ミサイルが持つ速度エネルギーが急速に減少するため、対処可能な弾道ミサイルの速度も急速に減少してくることになります。
先日のPAC-3実射試験における、PAC-3の飛翔時間として防衛省が発表している約30秒という時間について、JSF氏は間違いだろうと述べています。しかし迎撃時には、目標となったPAC-2ミサイルは約2分30秒も飛翔しているわけですから、その時点の目標速度はマック5を相当に下回っていたと思われます。
であれば、迎撃するPAC-3の速度もそれなりに低下していても迎撃は可能だったと思われます。
別の言い方をすれば、先日の実射試験では、PAC-3は模擬ミサイルとなったPAC-2を20kmをかなり上回る射程で迎撃していた可能性があるということです。


また論点がちょっとずれてしまいましたが、迎撃対象がSRBMなら、PAC-3はより広範囲の射程を持ち、wikiの記述も誤りではない可能性もあるということです。
(ただし目標がたとえSRBMであっても、ヘッドオンで迎撃できる範囲は、やはり20km程度しかありませんので、それ以上での迎撃確率は?)


次回に続く

2008年10月 6日 (月)

PAC-3はノドンを撃墜できるか? オブイェクト記事 その2

前回の続きです。


もう一つのプロファイルは、弾道軌道に近いものです。もちろん、弾道ミサイルのように下方に向かっているという意味ではありません。迎撃ミサイルのロケットモーターの燃焼終了後、既に空気密度の薄い高空に到達していれば、この後は、慣性に従って上昇を続けながら、もしくは水平に近い状態で、自由落下状態となる弾道飛翔が最もエネルギーを喪失しないプロファイルとなります。
「ミサイル入門教室」でも書かれている通り、速度エネルギーは、目標の動きに合わせて迎撃ミサイルを機動させ、誘導を行う上での重要な要素です。この点から、ヘッドオン迎撃ではない場合のプロファイルは、弾道軌道に近いものになる訳です。
この時、濃密な大気のある低空では、空気抵抗によるエネルギー損失を防ぐため、より鉛直に近い方位にミサイルを飛翔させていると思われます。重力ターンを行う弾道ミサイルや宇宙ロケットと同じ理屈です。
また、弾道プロファイルによる迎撃の場合、目標の追尾方式は、「ミサイル入門教室」で長い記述がなされている増強比例航法になります。(増強比例航法については、「ミサイル入門教室」を見てください。)
なお、先日のブログ記事で簡単に書きましたが、先日行われたPAC-3による弾道ミサイル迎撃訓練では、迎撃ミサイルの飛翔時間の長さ及び発射直後のプリプログラム誘導時の上方へのミサイル機動から、この弾道プロファイルにより、比較的遠距離での迎撃が行われたものと思われます。
(今回記事を書きながら計算しなおしてみると、先日の記事に誤りがあったということです。細部は後で書きます。)


まとめると、PAC-3は、近距離ではヘッドオン迎撃を行い、遠距離では増強比例航法による弾道プロファイルを採っていると思われるということです。


プロファイルが一つでないことに違和感を覚える方もいるかと思いますが、このことはパトリオットの開発経緯をみても不自然はことではありません。
パトリオットは、長射程のナイキミサイルと中射程のホークミサイル双方の後継として、開発されました。ナイキ、ホークとも航空機への誘導方式は比例航法ですが、短距離でも動作するホークは、目標に対して直進するプロファイルであることに対して、長射程のナイキはブースターがあることもあり、ほぼ垂直に上昇した後、切り離された先端部のみが目標に降下しながら飛翔します。
ナイキ、ホーク双方の能力を代替するため、パトリオットは近距離でも遠距離でも効率的な飛翔をすることを求められました。そのため、柔軟にプロファイルを変えられる必要性があった訳です。また、それを実現するために、中間誘導が指令誘導となっています。このあたりの技術的な傾向は、AAMでも同様です。


話が脇に逸れました。
パトリオットには2種類のプロファイルがあり、近距離ではヘッドオン迎撃するということから、誘導精度に関して言えば、PAC-3が迎撃可能な弾道ミサイルの種別は、一般に言われている以上に長射程である可能性があると言えます。先に書いたとおり、中間誘導の段階で高精度な誘導が出来、ヘッドオンコースに乗せられれば、終末段階のアクティブ・ホーミング時に、全く機動する必要がない可能性もあるからです。
極論すれば、中間段階の誘導精度さえ高ければ、誘導精度に関しては、ICBMにさえ対応できる可能性があるということです。(別のボトルネックがあるため、当然不可ですが、これについては後で書きます。)
誘導精度については、レーダーの分解能やコンピュータの処理速度によって決まってきますが、これについてはデータがないので何とも言えません。
ですが、ノドンの迎撃に関しては、少なくともこの点は十分な性能があるはずです。全く別の方向からの話になってしまいますが、ヘッドオンによるノドンの迎撃が不可能ならば、財務省が3個高射群分以上のPAC-3の予算化を許すはずがないからです。
米軍も実験は行っていないため、シミュレーション上のことになりますが、レーダーの分解能などから可能性のあるミスディスタンス(誘導誤差)は、「ミサイル入門教室」での計算と同様のシミュレーション結果から、終末段階のミサイルシーカーでの目標捕捉距離、搭載誘導部のリアクションタイム、姿勢制御用のサイドスラスターによる機動能力を考慮して、PAC-3ミサイルが反応可能な範囲にあると結論されているでしょう。
この辺の理論限界は興味のあるところですが、当然秘密になっています。(財務省の役人が羨ましい)


次回に続く

2008年10月 4日 (土)

PAC-3はノドンを撃墜できるか? オブイェクト記事

ミリタリー系ブログの筆頭とも言える「週間オブイエクト」に「PAC-3はノドンを撃墜できるか?」と言う記事が出ていました。
http://obiekt.seesaa.net/article/107398010.html


JSF氏の記事では、「ミサイル入門教室」
の記事を引きながら、「PAC-3はノドンに対し「交戦可能」である」としています。
「ミサイル入門教室」
http://homepage3.nifty.com/kubota01/
http://homepage3.nifty.com/kubota01/BallisticMissile03.htm


今回は、先日の実射実験にも触れながら、ノドンの撃墜可能性について書きます。
ただし、書いてみた結果、めちゃくちゃ長くなってしまったため、4回に分けてUPします。
なお、このブログでは、数式などは使用せず、なるべく多くの方に理解してもらえるように書いておりますが、今回は内容上、かなり専門的にならざるを得ないことをご承知下さい。


まず最初に、一つ重要なことがあります。それは、PAC-3の飛翔プロファイル(飛翔経路)については、公表されているデータがないと言うことです。
ですが、理論上ありうるプロファイルは2種類です。


一つは、「ミサイル入門教室」でも迎撃性能を上げる上で最良のプロファイルとされ、「日本海クライシス2012」の中でも言及したヘッドオン迎撃です。
ヘッドオン迎撃とは、弾道ミサイルの正面から迎撃ミサイルを当てる方法で、単純なモデルとしては、迎撃ミサイルの発射地点に直線的に落下する弾道ミサイルを、ランチャーから直線的に飛翔する際に生起するパターンになります。「ミサイル入門教室」第3章「ターミナル・フェーズにおける迎撃」の図3-12-1がこれに当たります。
ターミナル・フェイズでの弾道ミサイルのプロファイルが、「ミサイル入門教室」で言う「著しい直線性」を持つ(上記サイトの図3-5-2参照)ため、原理的には、迎撃ミサイルを中間誘導段階でヘッドオン迎撃コースに乗せてしまえば、迎撃ミサイルの終末誘導段階で全く機動させなくとも命中させられることになります。
この場合、弾道ミサイルの速度が速ければ速いほど直線性が保たれるため、長射程のミサイルほど命中させやすいという、一般に考えられていることと逆の現象が発生します。
ただし、迎撃ミサイル側も直線的に飛翔している必要があるため、迎撃ミサイルに十分な存速があることが重要です。
つまり、ヘッドオン迎撃は、比較的近距離でしか実現できないということです。
また、上記の理想的な場合と異なり、普通は弾道ミサイルの落下地点が迎撃ミサイル発射位置とはずれています。その場合、迎撃ミサイルをヘッドオン迎撃コースに乗せるためには、落下地点の下方に迎撃ミサイルを潜り込ませる必要が生じ、ミサイルの飛翔としては余分なエネルギーを使用しなければならないことから、なおのこと近距離でしか実現できないということになります。
なお、探しきれませんでしたが、湾岸戦争時にPAC-2がアル・フセインなどを迎撃した動画の中には、ヘッドオン迎撃コースで飛翔するPAC-2の映像があったと思います。


次回に続く

2008年10月 2日 (木)

副官のお仕事 その4

前回の続きです。


視察先部隊に着くと、指揮官が辞退しない限り、栄誉礼が行われます。
栄誉礼と言うと普通は首相や国務大臣が受けるものと思われるでしょうが、自衛隊の礼式に関する訓令において、部隊等の長である将または将補も、指揮下部隊等を就任後初めて又は離任に際して公式に視察する場合などには栄誉礼を行うこと、と定められています。


この時、指揮官は部隊正面の受礼台に立ちます。副官は、台には上がらないものの、台の横で部隊に対して正対して立ちます。ただし捧げ銃(つつ)の敬礼の際には、指揮官の方を向きます。その時は部隊に対しては横を向くということです。


引き続き訓示が行われる場合などは、副官は台の横で部隊に対して正対したままです。明確な決まりは無いと思いますが、訓示を受ける部隊が「休め」の号令を受けている場合も、正面に立っている副官は姿勢を崩せません。気をつけの姿勢のままということです。まさか貧血で倒れる訳にも行きませんから、この辺りも結構大変かも知れません。
ある意味、副官自体が指揮官の権威を表す飾りのようなものです。


栄誉礼や訓示以外は、副官は基本的に司令官に付いているだけです。
視察スケジュールとしては、状況説明と呼ばれるブリーフィング後、装備や訓練風景などを視察する事になります。この時、自衛官であっても普通は目にすることが出来ないような変わった装備や訓練を目にすることが出来ます。副官の仕事の中で、数少ない役得の一つでしょう。


予定が2日以上に及ぶ視察の場合、宿泊をすることになりますが、高級幹部の場合は大抵基地の外部で宿泊することになります。(基地司令以上の階級の者が基地内に居続けると、なにかと迷惑するため)
宿泊費用は旅費として支給されるのですが、これは階級によって異なります。それなりの宿に泊まるなら良いのですが、緊急対応の必要もあり、副官は司令官と同じ宿に泊まらざるを得ません。そのため、宿泊代が旅費を上回ってしまうケースもあります。


司令官の視察に同行する場合、分刻みのスケジュールで行動する他、何かと目立つ位置に居続けなければならないため、何かと気疲れするものです。
ですが、貴重な体験もできるケースも多く、副官にとっては良くも悪くも非日常な日となります。


副官については、番外編としてもう1回、副官の服装について書くつもりです。

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