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2008年9月17日 (水)

潜水艦の領海侵犯 ウソくさい政府発表

またしても潜水艦による領海侵犯が発生しました。


政府発表を一言で言えば、「一生懸命対処しましたが見失いました」というものですが、どうにもウソくさく、穏便に済まそうとしている節が強いように思えます。
以下では、政府発表にない部分を推測し、事案の真相を推測してみます。
なお、事案の概略は、末尾に産経新聞の記事をコピーしているので、参照して下さい。


まずは、潜水艦の目的ですが、考えられるものは海底地形や海流・水温などの海洋調査か電子情報の収集活動でしょう。ですが、電子情報は国内に潜入した工作員が実施できるので、まず間違いなく海洋調査と思われます。


工作員の潜入・回収という可能性も考えられなくはないですが、能力の低い北朝鮮潜水艦が足摺岬に居たとは考えにくい。国交のある中国なら、どうどうと空港を使うでしょうから、やはり工作員の潜入ではないと思われます。


そして目的が海洋調査であるとするならば、あたごが潜水艦を発見できた理由も納得ができます。
ニュースでは、「あたご」は潜水艦の潜望鏡らしきものを発見したと報じられています。確かに衝突事故を起こした「あたご」は、見張りを厳重にしているでしょう。水上レーダーに映った目標(潜望鏡)を漁船ではないかと思い、必死で海上を見つめていたかもしれません。それにしても、偶然近くを航行していて見つけたというのは、可能性としては考え難いものです。

やはり、潜水艦が海底探査のために打ったアクティブソナー音を聞きつけ、駆けつけた結果なのではないかと思われます。
曳航式ソナーは常時使用されていませんが、バウソナーは常時モニターされていると思われます。海底探査のために微小で出力されたピンガーを、あたごのソナーマンが捕捉したのではないでしょうか。


なお、発見直後の追跡にP-3が加わっていた様子はないので、やはりあたごが第1発見したものと思われます。
発見が早朝なので、その後は洋上監視のための任務飛行準備をしていたP-3が加わったものと思われます。
新聞報道では、P-3が毎日行っているパトロール網をかいくぐり、潜水艦が太平洋側に居たことを驚くようなものもありますが、定期的なパトロールでは発見できなくとも不思議はありません。
P-3が本格的な潜水艦探知を行うためにはソノブイの投下が必須ですが、通常の監視活動ではそこまでする費用(ソノブイは使い捨て)がないからです。


発見後、中央への報告はまたしても遅れたようです。どの段階で遅れたのかは明確ではありませんが、どうせ内局が「らしきものとはなんだ?」とか言っていたのでしょう。


発見後5分後(7時1分)には領海外に出たということですので、大臣への報告時は、既に領海外に出ているとの内容だったと思われますが、領海外に退去後でも追跡件があるため、海上警備行動の発令は可能だったはずです。
やはり新任の上、国防族でもない林大臣には決断しきれなかったのでしょうか。


潜水艦の国籍は確認されていませんが、可能性があるのは中国とロシアくらいです。状況を鑑みれば、十中八九中国でしょう。

海警行動も発令されないまま、追跡だけ続けた「あたご」ですが、足摺岬から南、南海トラフ方向に逃げる潜水艦を約1時間半後に見失っています。深度を下げた潜水艦が、変温層の下に逃げたのでしょう。
それ以降も追跡するとなると潜水艦が必要ですが、運悪く(あたりまえですが)近くには居なかったようです。


今回の領海侵犯は、石垣島での領海侵犯と同じように海上警備行動を発令して対応が出来たはずです。ですが政府はそれをしませんでした。それも、潜水艦の領海侵犯時には海警行動を発令すると決めていたにもかかわらずです。
防衛省は、理由というより言い訳を並べています。林防衛大臣が、親中国の福田総理に気兼ねしたのか、中国の顔色を窺ったのか定かではありませんが、穏便に済まそうとしたように見受けられます。
おそらく海幕は忸怩たる思いがしているでしょう。林大臣の省内での信用も落ちたのではないでしょうか。


また仮に、海警行動が発令されていたとしても、国際法的には可能でも国内法上は退去勧告しかできない状況は、いい加減に改めるべきではないでしょうか。潜水艦による潜没領海侵犯なんて悪意があるとしか思えないわけですから。


こんな対応を続けている限り、中国は更に増長するでしょう。


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潜水艦が領海侵犯か 海自イージス艦が発見 高知沖
産経新聞 2008.9.15 01:12
14日午前6時56分ごろ、高知県足摺岬沖の豊後水道周辺の領海内で、潜水艦の潜望鏡らしきものを、周辺海域を航行していた海上自衛隊のイージス艦「あたご」が発見した。あたごは潜水艦の可能性が高いと判断し、ソナーによる捜索を続けたが、約1時間半後に見失った。防衛省は国籍不明の潜水艦による領海侵犯の可能性があるとしてP3C哨戒機や護衛艦などを出して捜索を続けている。

 海上自衛隊や米軍に該当する潜水艦はなく、あたごが発見した5分後には南側へと航行し、領海外に出たという。あたごは追尾を続けたが、午前8時39分に追尾不能となった。

 防衛省によると、発見水域は、足摺岬の南南西約57キロで、日本領海の内側約7キロ。あたごの艦長らが約1キロ先にある潜望鏡のようなものを目視で確認した。外国の潜水艦は領海内では浮上航行が国連海洋法条約で決められており、潜望鏡を出して航行していたとすれば、意図的な領海侵犯だった可能性が高い。

 福田康夫首相は14日、防衛省に「追尾、情報収集を徹底して、万全の態勢をとるように」と指示した。政府は、潜水艦の国籍が判明すれば、相手国に抗議し、再発防止を求める方針だ。ただ、防衛省関係者は「クジラや魚群を潜水艦と誤認するケースは多い。潜水艦でない可能性も含めて慎重に調べている」と語った。米軍から事前の情報提供はなく、潜水艦を目視したというのは、あたごからの情報だけとなっている。

 外国潜水艦の領海侵犯事件では、平成16年11月に中国の潜水艦が沖縄県石垣島周辺の領海を侵犯し、政府が海上警備行動を発令したケースがある。政府は中国海軍の原子力潜水艦と断定し、中国側に抗議した。

 防衛相は警察機関では対処が不可能と認められる事態が発生した場合、首相の承認を得て自衛隊部隊に海上警備行動を発令することができる。今回は潜水艦と判断した時点ですでに領海外に出ており、再び領海内に引き返す可能性が低いことから発令を見送った。

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