PAC-3の実射試験はどんな試験?
さる9月17日、空自は初となるパトリオットPAC-3ミサイルの実射試験を行い、弾道ミサイルに見立てた模擬ミサイルの迎撃に成功したそうです。
この関連ニュースがさまざまに報じられましたが、今回はこの試験内容について書いてみたいと思います。
試験場所は、アメリカ、ニューメキシコ州のホワイトサンズ射場です。
「ミサイル射場なんて知らないよ!」という方がほとんどでしょうが、実はこの場所、日本人にも結構良く見られている場所でもあります。
サンズとは砂の複数形で、要は砂漠のこと。つまりホワイトサンズとは白い砂漠という意味です。
最近はあまり見られなくなった気がしますが、真っ白な砂が広がる砂漠は、CMの撮影場所などとしてよく使われました。私が覚えているシーンとしては、何のCMだったか忘れましたが、白い砂の上でスティービー・ワンダーが歌っていたCMを覚えています。
(最近は、気候の変動で雨が増え、以前ほど美しくないようです)
CMとして使われているくらいなので、一応観光地となっています。ところがこの観光地、ミサイル射場があるため、機械部品を見つけても手を触れないようにと書かれた注意書きが立っています。
なにせミサイル射場ですから、破片であっても爆発性のものが無いとは限りません。それに宇宙開発関連の試射が行われることもあり、毒性のある燃料などが付着している可能性もあります。
ちなみに、このホワイトサンズ射場の直ぐ近くに、F-117が配備されていたホロマンAFBがあるので、上空にあの特徴的な黒いシルエットを見ることができたこともあります。
今回の試験を行った部隊の編成ですが、ニュースを見ておや?と思った点が2点ほどあります。
本来、この種の試験を行うべき部隊は、パトリオットを保有する高射部隊に技術的な指導をしたり、運用法の研究を行う高射教導隊(静岡県浜松)なのですが、ニュースでは第1高射群(埼玉県・入間基地)と高射教導隊(浜松基地)の隊員約80人が試験を行ったと報じられています。
PAC-3は、2007年の3月に入間基地に所在する第1高射群第4高射隊配備されたのを皮切りに、その後第1高射群の第1、第2、第3高射隊にも配備されました。高射教導隊には今年度中の配備予定となっています。以前のニュース記事で、使用される機材は高射教導隊のものとなっているため、配備されたばかりの機材をアメリカに持ち込んだのかもしれません。
今回は、本来試験を行うべき高射教導隊の隊員が機材に不慣れなため、第1高射群との混成部隊で発射試験が行われたものと思われます。
もう一つ?だった点は、メンバーのトップが飛行開発実験団司令だと報じられている点です。高射教導隊にせよ第1高射群にせよ、空自のパトリオット部隊は全て航空総隊隷下であるため、飛行開発実験団司令が試験部隊の指揮官とは考え難いのです。もっとも、日本のメディアはその辺に無頓着なため、指揮官ではなく単に視察に行っていただけの可能性もあります。
試験の内容については、以前のブログ記事でターゲットとなる模擬弾道ミサイルが何であるのかが問題になると書きました。
弾道ミサイルに近いプロファイルで飛行させることが可能なターゲットドローン、AQM-37Cかもしれないと書いていたのですが、なんと今回使用されたターゲットはパトリオットPAC-2ミサイルだったそうです。
各紙が報道している中、模擬弾がPAC-2だと書いていたのは中日新聞だけなので、誤報の可能性もありますが、一応信用しましょう。
模擬弾のプロファイルは、試験の実効性を図る重要な点です。
次回の記事では、模擬弾がPAC-2であることを前提に、試験の実効性について分析してみたいと思います。
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