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2008年9月24日 (水)

PAC-3実射試験 その実効性は?

前回の予告通り、今回は先日行われたPAC-3ミサイルによる弾道ミサイル迎撃試験の実効性について考えてみます。

まず報道されている実射試験の内容をまとめると、次のとおりです。
・模擬ミサイルは、南側、距離120kmの地点から発射された。
・模擬ミサイルの発射2分後に、迎撃ミサイル2発が発射され、その約30秒後、迎撃に成功した。
・模擬ミサイルは、PAC-2ミサイルである。
・PAC-3ミサイルを発射した機材は、発射機2基のほか、レーダーと管制装置などである。
・PAC-3ミサイルによる目標の迎撃高度は10数キロだった。

これに加えて、空自が公開した写真から読み取れる情報を列挙してみます。なお、以下の写真は全て航空自衛隊提供です。
・模擬ミサイルとなったPAC-2は、試験用に改造されている。
(迎撃した瞬間の写真が公開されているが、航跡が写っており、試験の評価用にスモークを引くように改造してある。PAC-2にせよPAC-3にせよ、ロケットモーターの作動時間は10数秒と言われており、インパクト時には、両ミサイルともロケットモーターは燃え尽きているため。なお、スモークを焚くという方法は、ミサイル試験を可視画像で評価する際、よく行われる方法です)
10095508437

・同一発射機から2発のミサイルが発射された。
(1発目の噴煙とおもわれる煙の中で、ミサイルが発射される写真がある)
(もう1機の発射機は、おそらく予備)
10095508441

・模擬ミサイルは、急角度で接近(落下)している可能性が高い。
(PAC-3ミサイルの発射直後の写真に、姿勢制御用サイド・スラスターが下方に2度噴射されていることが写っており、発射直後のプリプログラム誘導で、飛翔方向を上に(急角度に)変更していることが分かります。なお、パトリオットミサイル発射機の発射時の角度は、60度程度の固定式です。(基地祭などで確認できる)試験の安全確保上、展開している試験部隊を飛び越える模擬ミサイルの飛翔は行わないはずなので、部隊直前に急角度で落下している可能性が高い)
10095508450
10095508456
10095508459

以上を踏まえるとともに、必然と思われる要素を加味して推論すると、今回の試験で使用された模擬弾道ミサイルのプロファイルなどは次のとおりです。
・標的の模擬弾道ミサイルとなったPAC-2ミサイルは、通常の目標を迎撃する際と異なり、高い弾道軌道を飛翔した。
(PAC-2ミサイルは機動を操舵翼で行っており、宇宙環境に近い高高度では旋回できないため、通常目標の迎撃ではそれほど高い弾道軌道は採らない(エネルギーロスを防ぐため、弾道に近い軌道ではある))
・模擬ミサイルの速度は、マック3を超えていた。
(模擬ミサイルは、試験部隊に向けて発射されたはずであり、インパクト時、両ミサイル(PAC-3と模擬ミサイル)はほぼ正対(ヘッドオン)状態だったと思われる。両ミサイルは、水平距離120kmを約150秒で飛翔しており、平均水平速度は800m/秒程度となる。模擬ミサイルは高い弾道を飛翔しており、インパクト時の垂直速度は水平速度と同等以上と推測でき、水平垂直成分を合成した実際の速度は、1140m/秒以上=約マック3強となる。この数値は最低限のもの。おそらく模擬ミサイルは150秒で100km程度しか飛行していないと思われるため、実際の速度はもっと遅い)
・模擬目標は、ミサイル本体と中間の指令誘導を行うプログラムの変更により、飛翔プロファイルを弾道に近いものに変更した。
(PAC-2自体は、プログラム中に模擬目標を作成し、これに向けて飛翔させたと思われる)

一言で言えば、マック3以上の弾道軌道だったということです。
模擬弾道ミサイルなので、弾道軌道なのは当たり前ですが、速度はマック3以上という程度です。
空自が迎撃しなければならないノドンは、IRBMに区分されるミサイルで、速度はマック9を超えると言われています。
模擬ミサイルの速度がマック3強程度だったとすると、スペックとしてはSRBMでしかなく、ノドンの原型となったスカッドの中でも最も古いスカッドA程度だったとことが分かります。

一部新聞紙上でも、今回の試験では、模擬ミサイルの速度がノドンの半分以下でしかなく、実効性には疑問があるような記事がありました。
しかし、公表されているデータを元に分析すると、半分以下どころか1/3程度だったことが分かります。
防衛省は、「数値を入れ替えれば対応できる」と意味不明なコメントをしているようですが、迎撃目標の速度に関する限り、率直に言ってノドンに対する実効性は疑問と言わざるを得ないでしょう。

ですが、今回の試験は第1歩です。
最初からノドン並を狙って外れた場合、失敗の原因分析が難しくなります。第1ステップとしては、弾道軌道を飛翔するミサイルの迎撃が可能だということを確認した、という所でしょう。おそらく来年予定されている試験ではもっと高速の目標を迎撃するはずです。

また、レーダーの小型目標探知能力については、今回の試験で確認できたかどうかは分かりません。目標が1/3程度の速度だったこともあり、リアクションタイムの余力は、相当にあったと思います。
ですが、目標が今回の3倍の速度だったときにも十分だったか否かについての判断材料は、残念ながら公開されていません。試験を実施した部隊では、データが取れた筈ですので、今後は製造元の三菱電機とともに解析し、検討するでしょう。

今回の試験については、個人的にも非常に興味があった事項です。
これからも関連の情報をウォッチするつもりです。

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