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2008年7月 4日 (金)

戦車無用論

戦車が必要のないものだとする戦車無用論(不要論)は、いろいろなところで語られています。今更と思われるかも知れませんが、「日本海クライシス2012」の中でも触れたので、簡単に解説したいと思います。

戦車不要論には、大きく分けて2つの流れがあります。
一つは、歩兵が携行したり、装輪戦闘車などに搭載される対戦車ミサイルや対戦車ヘリなど、戦車の防御力を絶対のものではなくする兵器の登場によって、金のかかる戦車のコストパフォーマンスが相対的に低下したことによるものです。
この論理には、もちろん一理あるのですが、攻撃力、防御力、機動力を兼ね備えた戦車は、現在でも大規模な陸戦の主役です。
多くの軍隊で、陸戦の主役として装備されていることからも分かりますが、感覚的に理解したい方は、是非、陸自が一般にも公開している「総合火力演習」を見に行ってください。
チケットが入手困難ですが、親戚の高校生をダシに使えば自衛隊地方協力本部(昔の地連)で用意してくれるかも。
総合火力演習は、毎年富士山の山麓にある演習場で実施されています。今年は8月24日の予定のようです。
その火力演習のなかでは、戦車砲の実射も対戦車ミサイルの実射も見ることができます。百聞は一見にしかずですが、戦車砲と対戦車ミサイルの最大の違いはその速度です。
戦車砲の砲弾(ちゃんと目で見えます)と比べると、対戦車ミサイルの飛翔速度は、まるでスローモーションです。両者が対峙した状況を想像してみれば良いのですが、たとえ双方が同時に射撃しても、戦車は射撃後に物陰に身を隠すことができますが、戦車砲を撃たれた側は、そんな余裕はありません。おまけに多くの対戦車ミサイルは、射撃後も誘導の補助をしてやる必要があります。
なんにせよ、とにかく一度ご覧下さい。チケットが手に入らない方は、DVDも出てます。

戦車不要論のもう一つの流れは、地理的・政治的環境を考慮すると、「日本には」戦車は不要だとするものです。
日本には大規模な戦車戦が行えるような場所は、北海道くらいです。冷戦時代には、ソ連の侵攻を食い止めるという、それなりに納得のできる理由があったのですが、現在は・・・・
またそもそも、日本の防衛のために戦車が戦闘を行う状況では、航空自衛隊も海上もほぼ壊滅状態のはずです。太平洋戦争でさえ本土決戦を回避したのに、現代で本土で戦車戦が生起するでしょうか?

ここまでの書きぶりで分かるとおり、私の考えは陸戦における戦車の有用性は認めるが、日本には必要ないというものです。
陸上自衛隊の装備は、領土的紛争がある離島での戦闘や対テロ、対ゲリコマ戦に有効に対処できるものにすべきだと思っています。
また、これらに対処するための武器は、将来的なPKO、PKFにおいても使いやすい兵器でしょう。
現在、次期戦車TK-Kの開発が大詰めになってますが、いままでの開発費を無駄にすることになっても、戦車の更新は避け、近接戦闘車の開発などに資源を集中するべきだと思います。

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陸戦」カテゴリの記事

コメント

私個人といては、戦車は必要だと思います。
例えば、雨天の際、日本の空軍基地が
狙われた場合は戦車が役に立つでしょう。
 戦車は動く要塞であり、重要拠点を守るため
に使うことができます。
 
 それに、海軍、空軍ともに日本が優勢な場合でも
少数の相手上陸軍が生き残ってしまった場合、戦車で
包囲網を作りつつ、壊滅させることを狙った方が賢いと思われます。
 戦車は正直、それほど重要だと思いませんし、そこまで資金をかける
必要があるとは思えませんが、それでもないよりはあった方がはるかに
ましだと思われます。

名無し 様
>雨天の際、日本の空軍基地が狙われた場合は戦車が役に立つ
と仰ってますが、正直何の事だか意味不明です。
迎撃機が上がれない場合に敵の爆撃機を戦車が落とせるなんて言いたいわけではないですよね?

>海軍、空軍ともに日本が優勢な場合でも少数の相手上陸軍が生き残ってしまった場合、戦車で包囲網を作りつつ、壊滅させることを狙った方が賢い
その状況であれば別に戦車でなくても良いとも言えますが……
記事を読んでいただければ分かると思いますが、私は戦車の有用性を否定するつもりは全くありません。
必要かという点で否定的なだけです。
それも今後数十年内に生起がが予想される事態において、ということです。
情勢を考えない一般論、つまりあらゆる事態を想定するなら戦車はあった方が良いということになるでしょうね。

数多久遠様が戦車不要論者だとは存じませんでした。
また、一つ後の記事では自衛隊内でもそうした意見が散見されるとのこと、大変驚きました。

さて2点、質問があります。
まず一つめ。
我が国では太平洋戦争の際は本土決戦を避けましたが、それは本土決戦を行っても敗戦を先延ばしにすることしかできないからだと理解しています。
しかし自衛隊、特に陸自のドクトリンは遅滞戦術であり、敵の侵攻を食い止めつつ同盟国であるアメリカの援軍を待つことでもあるはずです。
朝鮮戦争の折、韓国軍は一時北朝鮮に相当に押されましたが結局は米軍の増援まで持ちこたえて押し返しています。

また東京はどの国からも攻めづらい位置にありますし、首都機能が集中していますから、多少地方を取られたところで米軍の支援を受けて奪還することは可能ではないかと思います。
以上を考えると、本土で戦車戦を行うことも十分想定されうると思いますが、いかがでしょうか。

もうひとつは抑止についてです。
もし日本が全ての戦車を廃し、機動戦闘車などへ移行した場合、侵攻側は空挺戦闘車などでも対抗可能になり、侵攻側のコストが下がってしまいます。
現状のように戦車があれば着上陸のコストが高いですから、その蓋然性は低いのですが、戦車を廃することにより情勢そのものが変化してしまい、結局は蓋然性が上がってしまうのではないか、と言うことです。
この点についてもどのようにお考えか、お聞きしたいです。


個人的にはもうひとつ、戦車の装備をやめてしまった場合、その開発・運用ノウハウが失われてしまうのでは、と言う懸念があります。
太平洋戦争までは数々の名機を生み出した日本が戦後の航空禁止で技術が断絶してしまい、正直素晴らしいと絶賛できる機体は今回のXC-2やXP-1からではないでしょうか。
国産旅客機のYS-11も機体の出来や開発経緯はともかく、商業的には大成功ではないですし、そもそも後に続く機体は出てきませんでした。三菱のMRJはまだ出来ていませんし。
既にアメリカは通常潜を作れないとも聞きますし、一度失われてしまった技術を取り戻すのは容易ではないと思われます。
ですので、もし日本が戦車は概ね不要との国防方針を採るとしても、北海道に限定するなど、規模を極小化してでも装備は続けるのが最良と考えています。

藤宮 直樹 様
遅滞のことも重々承知しております。
記事中でも書いてますが、ソ連が北海道に侵攻するという事態想定していた冷戦期であれば、間違っていないと思ってます。

中国との間で島嶼が問題になることはあっても、九州に侵攻するなんてことは日本の国力が相当に低くなっても、すくなくともあと30年は考える必要がないのではないかと思ってます。
北朝鮮が日本に侵攻するなんてことは言わずもがなです。

私は東京の防衛とかになる前に、物流が止まり、上空に敵機が飛ぶ状況で日本の国民が窮乏に耐えて陸戦を選択できるとは思ってません。
国民にそんな根性はないでしょう。残念ながら。
自衛隊が戦うというだけでなく、そう言う点も考慮する必要があると思ってます。

上にも書きましたが、九州が戦場になるなんていう想定は後30年はしなくても良いと思ってます。
むしろ警戒すべきは島嶼に急襲(航空戦力や海上戦力が壊滅させられなくても隙をついて実施されるような作戦)されることですが、そういった事態を警戒するなら、容易に空輸できる装備の方が良いと思ってます。

もちろん戦車もあるにこしたことはないですが、結局次年度の予算でも少数の配備になるように、戦車も機動戦闘車もとなると予算面で苦しいです。

説明不足かもしれませんが私が戦車無用論をとるのは、事態対処計画の作成なんかにも関わり、一般論での装備検討するほどお金はなく、想定される戦場に持ってこれる戦力を効率的に調達することを考えたときに、戦車よりも他に予算を振り分けた方が良いと思ってるからです。

上でも書きましたが、あと30年使わない技術なら、20年後くらいにまた始めれば良いことではないでしょうか。

北海道に限定してとのお話ですが、中国の島嶼侵攻にもロシアの北海道侵攻にも耐えられる防衛力の構築は無理じゃないでしょうか。
少なくとも能力はあってもロシアにこれ以上の侵攻を行う意図は当面ないはずです。
なら中国の島嶼侵攻に備えるべきではないでしょうか。

ですよね。現役自衛官/OBの方が遅滞を知らないとは思えなかったので、それでも不要論を採るのにはそれなりに理由があるのだと思い、質問させていただきました。
なるほど、一つにはお金がないから戦車はあきらめましょう、と言うお話なのですね。
悲しくなる話ではありますが。

あとはやはり「大規模着上陸の蓋然性が低い」でしょうか。

私も実は島嶼防衛を考えるならば、実際に有効な装備は空輸可能な物だと思っています。米軍で中止してしまったMCSのような物があれば良かったのですが。
戦車不要論に反対の方は、戦車枠を削ってまで機動戦闘車を導入するのなら機動戦闘車が不要と主張されていますが、実際に使うのは機動戦闘車になるわけですから、
そちらを優先した方が良いですよね。

それに仰るとおり、島嶼侵攻に備えつつ北海道にも十分な防衛力を構築するのは難しいですし、不可能かと思います。
ですので、最低限とは真に戦車の装備と運用ノウハウ維持を目的とし、ロシアの侵攻に耐える程の数を揃えません。
と言っても名目上ロシアの侵攻に備えるとは言わざるを得ないでしょうけど。

私は技術系の仕事をしているため、技術の断絶という物にはかなり過敏に反応していると思います。
実際、古くなって使われなくなった機械、それもたかだか5年前には自分も使っていた物を全て破棄してしまった結果、そのノウハウがある日必要になった時(自分の記憶も含めて)探り出すのには
かなり苦労をした覚えがあるからです。
公開情報のある民生品や、自社開発のハード/ソフトでもその有様なのですから、機密の多い軍用品ではなおのこと、10年、20年のブランクの後にしかもその発展系を作り出すなど、正直考えたくありません。

このように技術者というのは基本的に技術の断絶を恐れる物ですが、戦争に負けてしまえば結局は技術の断絶が起こってしまう訳ですから(上のコメントでも書きましたが、実際日本はそれを経験してきているわけですし)、技術基盤の維持のために効率的な防衛力整備が行えないのでは本末転倒です。
そう考えると、これもなかなか難しい問題ですね。

防衛費がもっと増えると良いのですけど。

藤宮 直樹 様
私が言いたかった事を的確にまとめて頂けましたね。
まさに「お金がないから戦車はあきらめましょう」ということです。
実際他にも諦めなければならない点は多いと思うのです。
自衛隊の場合、「基盤的防衛力の整備」という呪文のおかげで何でも手を出し過ぎなんです。

技術系の方でしたか、私は運用の方でしたので、技術には無理ばかり言っていたかもしれません。
ただ後発者利益を狙うというのも、お金のない中では選択肢としてアリなんじゃないか、とは思います。

仰るとおり技術と整備は卵と鶏かもしれませんね。
ホント難しいです。

MHIの方が、常にボヤいてました。 最初は夢のような話を持ってきて、
実際に量産になる直前に、「お金が無いから調達数減らすネ♪ でも
量産単価だから、安くなるよねぇ~」と無茶苦茶な話になる。。。って

こんな話でも、この不況のお蔭で注目のプロジェクトになってるらしいです。
長い年月の間には良いこと悪いことと、いろいろなことが起きますネ。

やん 様
確かにそのあたりに対する多くの自衛官の感覚はおかしいと思います。
しかし、思い返すと、私も民に出たからこそ言えるだけで自分が現役の時にまともな認識を持っていたという自信はありません。
もっと出向とかさせた方がいいのかもしれません。

不況のおかげで注目プロジェクトですか……、確かに民間は不況になると一気に落ち込みますから、低空飛行でも安定的な官需は魅力もあるんでしょうね。

戦車なかったら空挺で重要拠点抑えられて瞬殺にならんか。
そりゃあ日本に空挺降下してくる国は今んとこないが、今までなかったからこれからもないだろうって油断が、防災にしろ国防にしろ被害を拡大するわけで。

空挺降下を心配するんだったら、
戦車よりも地対空ミサイルを配備した方が良いんじゃないんですかねぇ・・

シリア内戦の市街地戦術を
自衛隊は研究してはどうか?

シリア内戦の市街地戦術を
自衛隊は研究してはどうか?

ひろし 様
防衛省・自衛隊は、シリア内戦だけでなく、世界各地の戦争、紛争を研究していますよ。

それらをふまえての防衛政策です。

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