トマホークでノドンハントができるか?
ミサイル総合スレに、巡航ミサイルでノドン(スカッド)ハントを行うという議論がでてました。
タクティカルトマホーク+センサーという論も出てましたが、誤解に基づく意見も多かったので、次の通り書き込みました。
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スカッドやノドンが、発射の直前に燃料注入しなければならないというのは間違いです。
燃料がケロシンなのかジメチルヒドラジンなのかは見解が分かれているようですが、スカッドは燃料を注入したまま保管、運用できました。
当然スカッドをベースとしたと見られるノドンやテポドンも、同じであると推測されてます。
参考:軍事研究07年9月号掲載の野木恵一先生の論考
(防衛省、自衛隊の中でさえ間違えている人が多数いるので、無理も無いですが・・・)
そのため、書かれている通り、タクティカルトマホークでなければ、ノドン(スカッド、テポドン)ハントには使えません。
おまけにタクティカルトマホークのコストだけでなく、ニアリアルタイム以上のデータリンクと偵察能力がなければTELは攻撃できません。
いくら数を増やしたところで、間隔をおいた偵察しかできない偵察衛星では、攻撃が間に合いません。
DSPやSTSSの早期警戒衛星は、ミサイルの発射後に赤外線を捕らえるものなので、こちらも当然間に合いません。
ノドンハントをするには、高精度なセンサーと指揮統制機能が必要になります。
できればE-8を使いたいところですが、防空機能が生きている状況では使えない(北朝鮮は山間地が多いので、洋上では無理)ので、グローバルホークの情報をAWACSで中継するなどして、航空機かタクティカルトマホークで攻撃するしかないでしょう。
おそらく一刻を争うことになるため、タクティカルトマホークの飛翔時間さえもどかしいのではないでしょうか。
先の話になりますが、完成さえすれば、センサーも攻撃能力も自前で持っているF-35がベスト
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これに対して、酸化剤が液体酸素なんじゃないか→発射直前の注入が必要なんではないかという趣旨のレスがあったので、次のように書きました。
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酸化剤は、抑制赤煙硝酸が使われます。
硝酸、四酸化二窒素、フッ化水素を加えたもので、酸化剤として機能する成分は、四酸化二窒素と硝酸になります。
金属腐食性、毒性があるため、扱いやすい物ではありませんが、常温保存可能でミサイルに注入したまま運搬できます。
当然、液酸ほど効率はよくありませんが、ケロシンの酸化剤としても使用可能です。
北朝鮮が輸入、リバースエンジニアリングしたとされるスカッドはCタイプで、
燃料・酸化剤は非対称ジメチルヒドラジン+抑制赤煙硝酸です。
スカッドを原型とするノドンでも同様だと見られています。
ちなみにケロシンを使用していたものはAタイプのみで、酸化剤は硝酸?(by Wiki、確かに硝酸だけでも酸化剤になりますが)だったようです。
http://www004.upp.so-net.ne.jp/weapon/irfna.htm
冷戦初期のICBMなどでは、ケロシン+液体酸素が使用されていたため、発射直前に注入作業が必要だったことは確かです。
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ノドン(スカッド)は発射直前に燃料注入するという誤解は、まかりとっているというよりも、大勢を占めているような気がします。(液酸について書かなければならないとまで思ってませんでした。)
余談ですが、数多くいる軍事評論家の中で、野木恵一先生はハードや理論をちゃんと分かっている数少ない方です。
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