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2008年7月26日 (土)

陸上基地は脆弱か?(空母保有論議 その3)

陸上基地は、開戦劈頭に弾道ミサイルや巡航ミサイルによる攻撃によって使い物にならなくなるため、空母を保有すべきだという論があります。
攻撃を受ける可能性があることは当然ですが、自衛隊とて座して見ている訳はありません。艦隊が防空能力をもっていることと同様に、弾道ミサイルや巡航ミサイルに対する防御力を備えるとともに、損害を受けた施設を復旧させる能力を持っています。

弾道ミサイル攻撃に対しては、ご存じの通りイージスとパトリオットが対処します。沖縄に所在し、パトリオットを運用する第5高射群には、現在のところPACー3が配備される予定はありませんが、先島や那覇を弾道ミサイルから防衛する必要が発生すれば、PACー3を運用する高射群が展開することになるでしょう。高射群は各5個の発射機を運用する4個の高射隊から構成されるため、PACー3ミサイルを最大限調達保有したとすれば、極めて短時間に集中して発射された弾道ミサイルに対して、1個高射群が320発のPACー3ミサイルをもって迎撃できることになります。(また当然、ミサイルの再搭載も可能)

中国は、先島を攻撃できる弾道ミサイルとして、東京までも射程に入る中距離弾道ミサイルのDF-21を百基以上保有している他、主に台湾用と言われるものの、海岸近くに配備すれば先島まで到達させられると思われるDFー11AとDFー15を千基前後保有しています。
さすがに、これだけの数をすべて先島に投入されたら、イージスやパトリオットがあっても、基地は相当の被害を受ける可能性がありますが、日本がノドンやテポドンに備えるためにすべてのイージスやパトリオットを投入できないのと同じように、台湾が中国に併合されない限り、すべてを先島に振り向けることはできないでしょう。
先島に対する弾道ミサイル攻撃については、いずれもっと突っ込んだシミュレーションをしたいと思います。

巡航ミサイルに対しては、パトリオットに加えて、陸自の中SAM、そして次期基地防空火器も対処にあたります。
防衛省がどの程度の脅威評価をし、どれだけの部隊を先島や那覇に展開させるかは分かりませんが、1個護衛隊群が有するよりもはるかに濃密な防空火網を構成できます。

ミサイルが防空火網を突破し、被害が発生した際には、施設隊を中心とした被害復旧が実施されます。飛行運用に最も支障の発生するランウェイが損傷した場合には、3Rマットなどを使用した応急措置が講じられることになります。また一部の特殊な飛行場を除けば、それまでの間も、タクシーウェイを利用した離着陸は可能です。
修復に要する時間は、損傷の度合い次第ですが、離着陸を可能にするだけなら、かなりの短時間で復旧します。施設隊は、模擬の滑走路を実際に爆破し、修復する訓練を毎年実施しています。

「日本海クライシス2012」で描いたような地上の脅威、対物狙撃銃、対戦車ミサイル、ロケット砲や迫撃砲での攻撃はやっかいです。しかし、陸自による対処が可能であれば、潜入できる兵力規模には限りがあるでしょうから、それほど時間を用さずに排除できるはずです。
場所が先島であれば、潜入自体が極めて困難ですし、離脱はまず不可能の決死任務になります。さらに下地島の場合は、民家も少ないため、攻撃可能位置に接近することさえ不可能でしょう。
逆に那覇の場合は、飛行場を見下ろす位置に多くのマンションなどがあるため、排除には少々てこずるかもしれません。

陸上基地が敵の攻撃に対して脆弱か、あるいは抗たん性が高いかという問題は、敵が基地を攻撃できるミサイルをどの程度保有しているか、また空母保有論議を前提とした場合、艦隊の防空能力とも関わってくるため、一概に述べることは困難です。ですが、攻撃する側からすれば、陸上基地への攻撃は、艦隊を攻撃するよりもはるかに高いコストをかけなければならないことは確かです。

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