F-X選定における対地攻撃能力
「次期F-Xについて考えるスレ」で敵地での対地攻撃能力について話題が出てました。
ところが、F-Xについて考えるスレのはずなのに、敵地を攻撃するべきか否かというところにばかり論点が行っており、そのためならF-Xには何が良いかという方向に行っていなかったため、次の通りコメントしました。
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このスレでは空対空戦闘能力に論議が集中しますが、敵地攻撃を考えた場合、ラプターは他の機種に比べて抜きん出た能力があります。
搭載量が少なく、1ソーティで破壊できる目標数は限られるが、敵がS-300クラスの高性能長射程SAMを保有していても、高高度でスーパークルーズしつつ回避機動をすれば、命中弾はまず発生しません。
速度は少し下がるが、LO能力を高めたSR-71のような機体は、防空側からすれば極めてやっかいになります。
コストも考えた時、必ずしもラプター選定には賛成しませんが、敵地攻撃を行うつもりならば、ラプターは最良です。
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航空戦力の意義は、攻撃にこそあるんですが、航空ファンの興味は、空対空戦闘にあるようです。
SAMについてあまりにも知られていないということもあると思いますが、知らず知らずの内に専守防衛的な発想になっているという側面もあるように思えます。
また、この書き込みに対して、
スーパークルーズでSAMの無効化ができるのか?
という点と、
SAM撃たれている点でステルス能力が低いということなのでは?
という疑問が出されていました。
簡略化し過ぎて誤解を与えたようでしたので、次のとおり答えました。
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言葉足らずでゴメンなさい。
スーパークルーズだけでSAMの命中率を下げられるわけではありません。
高高度の高速旋回、退避がミサイル回避に有効と言いたかった訳ですが、 ラプター以外はこれを行うためにAB使用を余儀なくされます。
普通は残燃料との関係で無制限でABを使用するわけには行きません(防空側からすれば、撃墜でも燃料切れの墜落でも効果は同じ)が、ラプターでは必ずしもABを使う必要が無いってことです。
それとステルスについて
もちろんSAMを撃たれる時点で発見されているわけですが、ステルスの基本がレーダー反射を無くすわけではなく、反射方向を限定することが大きな要素なので、SAMの発射後でも、機体の姿勢を変化させるだけでも、SAM側は目標をロストする可能性があります。
(おまけに普通はチャフなどのECMも併せて実施されます)
レーダー反射波の強度も、(SAMレーダーと目標間の距離+目標とミサイル間の距離)の二乗に比例して低下するので、ミサイルから距離をとるように機動すれば、ミサイルシーカーのロックが外れる可能性も高くなります。
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SAM回避については、もう少し詳しく書きたかったのですが、スレ趣旨とは外れて来そうなのでこの程度に止めてます。
この後、スーパークルーズの意義について、板内で多少議論になってましたが、ちゃんと分かっている人も居たので安心しました。
が、????な意見も結構多く、航空雑誌もこういう観点のことをしっかり書いてほしいものです。他の能力と相まって、大きなアドバンテージとなるスーパークルーズなどについては、あまり書かれていないように思います。
そりゃ空戦能力や、相手の能力をゼロにもするステルスは、耳目を引きやすいんでしょうが・・・・
最後に、スレ趣旨と外れそうなので書かなかったSAM回避についての詳述部分を、せっかく書いたのにもったいないので載せておきます。
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高高度の高速旋回、退避がミサイル回避に有効ということには幾つかの理由がありますが、原理としてはSAMのロケットモーターが発生させるエネルギーを、効果的に消費させられるということです。
まず、高高度だと、高度を上げるだけでエネルギーを大幅に使用せざるを得ません。
次に高速度の旋回だと、たとえ角速度は小さくても、SAMにとっての予想要撃点は大きな距離を移動します。
逆に角速度は大きくても速度を大きく落とす高G旋回だと、機体の速度低下のためにSAMの予想要撃点はそれほど移動しません。
どの程度の旋回が良いのかは、航空機やミサイルの機種、速度、位置(距離)などによって異なるため、細かいことまでは言えませんが、コーナー速度を下回ってくれればSAMにとってありがたいこと間違いありません。
SAM(というよりミサイル全般)は、重量に対する翼面積の率が低いので、旋回による(速度)エネルギーのロスが大きいです。
ロケットモーター停止後に機動を続ければ、SAM(ミサイル一般ですが)を回避できる可能性は急激に高くなります。
(逆に言えば、ロケットモーターが燃焼中のミサイルを、機動で回避することは困難)
一応参考に
http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/9578/hum/hum5.html
ところが、F-Xについて考えるスレのはずなのに、敵地を攻撃するべきか否かというところにばかり論点が行っており、そのためならF-Xには何が良いかという方向に行っていなかったため、次の通りコメントしました。
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このスレでは空対空戦闘能力に論議が集中しますが、敵地攻撃を考えた場合、ラプターは他の機種に比べて抜きん出た能力があります。
搭載量が少なく、1ソーティで破壊できる目標数は限られるが、敵がS-300クラスの高性能長射程SAMを保有していても、高高度でスーパークルーズしつつ回避機動をすれば、命中弾はまず発生しません。
速度は少し下がるが、LO能力を高めたSR-71のような機体は、防空側からすれば極めてやっかいになります。
コストも考えた時、必ずしもラプター選定には賛成しませんが、敵地攻撃を行うつもりならば、ラプターは最良です。
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航空戦力の意義は、攻撃にこそあるんですが、航空ファンの興味は、空対空戦闘にあるようです。
SAMについてあまりにも知られていないということもあると思いますが、知らず知らずの内に専守防衛的な発想になっているという側面もあるように思えます。
また、この書き込みに対して、
スーパークルーズでSAMの無効化ができるのか?
という点と、
SAM撃たれている点でステルス能力が低いということなのでは?
という疑問が出されていました。
簡略化し過ぎて誤解を与えたようでしたので、次のとおり答えました。
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言葉足らずでゴメンなさい。
スーパークルーズだけでSAMの命中率を下げられるわけではありません。
高高度の高速旋回、退避がミサイル回避に有効と言いたかった訳ですが、 ラプター以外はこれを行うためにAB使用を余儀なくされます。
普通は残燃料との関係で無制限でABを使用するわけには行きません(防空側からすれば、撃墜でも燃料切れの墜落でも効果は同じ)が、ラプターでは必ずしもABを使う必要が無いってことです。
それとステルスについて
もちろんSAMを撃たれる時点で発見されているわけですが、ステルスの基本がレーダー反射を無くすわけではなく、反射方向を限定することが大きな要素なので、SAMの発射後でも、機体の姿勢を変化させるだけでも、SAM側は目標をロストする可能性があります。
(おまけに普通はチャフなどのECMも併せて実施されます)
レーダー反射波の強度も、(SAMレーダーと目標間の距離+目標とミサイル間の距離)の二乗に比例して低下するので、ミサイルから距離をとるように機動すれば、ミサイルシーカーのロックが外れる可能性も高くなります。
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SAM回避については、もう少し詳しく書きたかったのですが、スレ趣旨とは外れて来そうなのでこの程度に止めてます。
この後、スーパークルーズの意義について、板内で多少議論になってましたが、ちゃんと分かっている人も居たので安心しました。
が、????な意見も結構多く、航空雑誌もこういう観点のことをしっかり書いてほしいものです。他の能力と相まって、大きなアドバンテージとなるスーパークルーズなどについては、あまり書かれていないように思います。
そりゃ空戦能力や、相手の能力をゼロにもするステルスは、耳目を引きやすいんでしょうが・・・・
最後に、スレ趣旨と外れそうなので書かなかったSAM回避についての詳述部分を、せっかく書いたのにもったいないので載せておきます。
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高高度の高速旋回、退避がミサイル回避に有効ということには幾つかの理由がありますが、原理としてはSAMのロケットモーターが発生させるエネルギーを、効果的に消費させられるということです。
まず、高高度だと、高度を上げるだけでエネルギーを大幅に使用せざるを得ません。
次に高速度の旋回だと、たとえ角速度は小さくても、SAMにとっての予想要撃点は大きな距離を移動します。
逆に角速度は大きくても速度を大きく落とす高G旋回だと、機体の速度低下のためにSAMの予想要撃点はそれほど移動しません。
どの程度の旋回が良いのかは、航空機やミサイルの機種、速度、位置(距離)などによって異なるため、細かいことまでは言えませんが、コーナー速度を下回ってくれればSAMにとってありがたいこと間違いありません。
SAM(というよりミサイル全般)は、重量に対する翼面積の率が低いので、旋回による(速度)エネルギーのロスが大きいです。
ロケットモーター停止後に機動を続ければ、SAM(ミサイル一般ですが)を回避できる可能性は急激に高くなります。
(逆に言えば、ロケットモーターが燃焼中のミサイルを、機動で回避することは困難)
一応参考に
http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/9578/hum/hum5.html
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