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2008年7月22日 (火)

空母による防空(空母保有論議 その2)

空母を海上の航空基地と考え、尖閣など離島上空での航空優勢確保に使用するという考えている方がかなりいらっしゃるようですが、空母での防空は非常に困難です。それがたとえ軽空母ではなく正規空母でもです。

2ちゃんねる軍事板での論議でも、分かっている方は防空で空母を使用しようとしている段階で否定しますが、空母は攻勢作戦では非常に強力ですが、防空での能力は陸上の航空基地とは比較になりません。

その理由は、一言で言えば、一定時間内にさばける航空機の発進(発艦)、帰投(着艦)処理能力の差です。
発進(発艦)について見れば、陸上基地では、2機編隊での編隊離陸を続けざまに実施できますが、空母では一機づつカタパルトを準備して発艦させなければなりません。着陸(着艦)については、陸上基地では、ブルーインパルスなどのアクロバットチームが最後の演目として見せるコンバットピッチを思い出して頂ければ分かりますが、編隊が一気に着陸できます。方や空母では、アレスティングフックを利用して着艦するため、一機着艦させるたびに着艦機を移動させ、ワイヤーを準備してし直さないとなりません。
それに加えて、空母は甲板上の絶対的スペースが不足しているため、防空では非常に重要な再発進の能力が、陸上基地とは大差があります。具体的には、射耗したミサイルを再搭載し、燃料を補給する作業ですが、陸上基地では広いエプロンを活用して飛行隊ごと作業することも可能ですが、空母では数機の再発進準備だけでも大変な混乱になります。

攻勢作戦では、発艦と予定どおりならば着艦も計画どおりに実行できます。そのため、空母の発着艦能力に合わせて作戦を組むことが可能ですが、防勢作戦では、基本的に敵の侵攻状況に合わせて動かなければならないため、空母の発着艦処理能力がネックとなってしまうという訳です。

敵の規模が、空母での発着艦処理能力の範囲ならば、防勢作戦でも遂行は可能です。しかし、尖閣諸島などで相手をしなければならないと見られる中国空軍は、量だけではなく、今や質においても自衛隊を凌駕しそうな状況です。同じコストをかけるのであれば、先島の戦力発揮基盤を充実させるべきです。

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空母保有」カテゴリの記事

コメント

はじめまして、ミラーと申します。

空母による防空ですが、陸上航空戦力に劣るという点は同意ですが、陸上航空戦力が味方を護れない海域なら話しは違うと思いますよ。

例えば尖閣問題を例にするならば、現状尖閣方面の防空に空自は那覇基地から飛来しますが、昨年の領空侵犯に対処が間に合わなかった事から分かる様に間に合わないのが現状です。下地島の飛行場を使える様にする等して陸上機を運用出来れば一番ではありますが…

また、空母は基本的にAEWとCAPのF/Aを常時飛ばしてますが、これに加えてスクランブル待機の機体もあります。
また、AEWが敵編隊を探知してから艦載機を発艦する時間は充分にあると思いますし、艦載機を着艦後に再び武装させて迎撃に当たらせる程の波状攻撃も米空母並の能力が相手だとなかなか想定出来ないと思います。
軽空母とかは、フォークランド紛争でAEWが無いのも原因でしたが波状攻撃の前に防空網が突破されたのは事実です。
一方で軽空母が無ければ艦隊が壊滅してたとも言われています。

また、防衛作戦も敵攻勢に対して攻勢的な防衛作戦を行う事もあります。
むしろ、航空作戦の基本は攻勢であって、陸上機でもAWACSやAEWで遠距離から敵の接近を探知し、これに対して攻撃をする計画を立てるのが要撃任務な訳で、逆に言えば敵を迎撃するのに必要な戦力が離陸仕切る時間を稼ぐ為に遠距離から探知するのが大切になります。
つまりは空母もAEWによる哨戒で迎撃の為の時間を稼ぎだせば要撃に使えない訳ではないです。

何が言いたいかと言うと、空母も陸上機が使えない環境では防空の要になりますよ、という事です。

ミラー 様
例として挙げられている尖閣防空のための空母の進出ですが、そこまで防空網をかけるということは宮古島あたりまで空母を進出させるということになると思いますが……そんなに前に出したら、直ぐに沈められます。
プレゼンスとして見せるというのはあります……

フォークランド-アルゼンチン本土は、中国本土-沖縄本島程も離れています。
だから、軽空母程度でも戦えました。アルゼンチンがF-22でも持っていたら、状況は全く違いますが。

お気づきの通り、空母を取得するくらいなら下地島の基地化をした方が、遥かにコストは安く、遥かに強力です。

空母も陸上機が使えない環境では防空の要になるとのことですが、それはその通りですが、問題は、日本の防衛に関して、そんな場所はないということです。

過去に何度か書いてますが、日本がアフリカの権益を軍事力で確保するという戦略なら、当然空母は必要です。

宮古島あたりまで出したら直ぐに沈められるといいますが、それを言ったら島嶼に基地を敷設した場合の兵站維持も困難では…

で、フォークランド紛争の例ではAEWが欠けてる訳ですが、AEWが入るだけで大分防空任務の度合いが変わると思います。

また、フォークランド紛争の件はアルゼンチン空軍がSSMの運用能力に制限があったので英軍が軽空母で堪えられたのも事実ですが、無ければアルゼンチン空軍の戦力にすら英軍は撃破されてたと考えられます。
実際にハリアーのCAPをくぐり抜けて幾度も爆撃を受けてます。


尖閣方面に下地島の様な政治的な理由で基地が敷設出来ない場合は空母も選択肢に入れざる得ないのではないでしょうか?
現状ではAEWも迅速に展開出来ない状況ですし…
因みに現状の部隊配置では、空自は尖閣方面に海自が展開した場合に的確なエアカバーは出来ないと言われています。
それはフォークランド紛争でアルゼンチン海軍が出撃出来なかった状況に近いですが…
アルゼンチン海軍の場合はASW能力が致命的に欠如してたのが原因ですから、日本とは真逆ですね。

何はともあれ、航空基地を敷設したりして南方の防空能力確保をして貰いたいものですね。

追伸申し訳ありません。

因みに陸上基地からの一斉離着陸ですが、まず行う事は無いと思いますよ。

攻撃任務の際は空中集合を省略する為にする場合もあるでしょうが、迎撃の場合はまずスクランブル待機または準待機の機体は直ぐに出せますが、他は飛行前点検に一時間は時間が必要になりますし、スクランブル待機には相応の維持要員が張り付くので、敵が攻撃して来るかもと常時張り付けないと思います。
震災の際には滑走路の安全確認も必要でF-2Bが退避出来なかったのは有名だと思います。

また、一斉に着陸するのも損傷機等の危険がありますし、何よりもアクロバット以外では危ないのでまずやりませんよ。

優先順位を付けて順番に着陸が基本ですし、有事なら着陸した処をまとめて叩かれるのを避ける為に尚更やらないと思います。

それでも整備スペース等で陸上基地は有利ですが、島嶼の場合は以外に制限も厳しいですからね…

野外作業は防御面では移動する空母の方が下手すれば安全ですし…
空母は最悪戦闘海域を離れ撤退するという選択も出来ますからね。

ミラー 様
確かに、宮古・下地に対する兵站支援は大変です。
なので、そのためにもナッチャンのような艦艇が必要だと思っています。

私が空母の防空使用に反対する理由は、コストが最大の理由です。
空母を防空のために配備するくらいなら、AEW+空中給油機能の拡大を選択するべきです。

戦闘に備えた航空団と、教育訓練が目的の航空団を一律の論じることは間違ってます。
実際、基地が空爆を受けることが明かな状態では、在地機は空中退避させます。

空母を戦闘海域を離れて退避させるのであれば、そもそも空母の存在自体がムダなのではないでしょうか?
一般的に、対地攻撃より対艦攻撃の方が容易です。

余所でも色々勉強して来ましたが、確かに現状では空自増強を行い、自衛隊版A2/AD戦略を行う方がコスト面で空母より有効みたいですね。
離島への兵站補給もそれによる安全確保が前提になるとは思いますが…

久々に来て、失礼致しました。

ミラー 様
主旨をご理解して頂けたようで、良かったです。
仰るとおり、下地への兵站補給は、かなり困難な問題です。

また、自衛隊が、尖閣を攻められたケースで、南から海南島を攻撃するようなことが、”政治的に”可能なら、空母は攻撃では効果的ですから、それなりに意味を持つとは思います。

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