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2008年7月

2008年7月30日 (水)

那覇基地での空中給油機運用可能に

那覇基地でKC767運用が可能となるよう、エプロンの強化が決まったようです。

那覇空港と共用のため、ランウェイはもともと大型機が運用できるスペックを持っていますが、エプロンは大型機の駐機に対応できる強度がありませんでした。
報道では、コンクリートの嵩上げ工事が行われることしか書かれていませんが、空中給油機として運用可能とするためには、エプロン内に給油用のホース接続口も設けられるのでしょう。

そして、報道では言及されていませんが、KC767が運用可能となるということは、E767AWACSが運用可能になるという事でもあります。
防空では、長期に渡って警戒態勢をとり続ける必要があります。AWACSとKCを運用できるようになることで、南西航空混成団は非常に喜んでいるでしょう。F-15の配備に加え、これによって、先島や尖閣周辺での航空機運用能力が強化されます。尖閣上空での航空優勢確保がずいぶんとやり易くなるはずです。

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航空自衛隊那覇基地 給油機飛来へ駐機場強化
7月29日9時45分配信 琉球新報

 【東京】防衛省は28日までに、航空自衛隊那覇基地で空中給油・輸送機KC767の着陸、給油を可能にするため、既存の駐機場を補強整備することを決めた。同日、沖縄防衛局が県と那覇市に説明した。9月ごろから測量などの調査を始め、2009年度末までに完成させる。同基地は本年度からF15戦闘機が配備される予定で、空中給油機の飛来にも対応できるよう整備することで、基地強化がさらに進むことになりそうだ。
 空自は、07―09年度にかけ、愛知県の小牧基地を母基地にKC767の配備を進めている。現在、同基地に2機配備されており、4機まで配備を増やす予定。那覇基地に訓練で飛来する際に、給油が行えるようにする。
 防衛省は、那覇基地を整備する理由について「当該航空機は小牧基地を母基地とするが、南北に長い国土の中央に位置する母基地のみで運用することは、不経済・非効率だ。運用のために必要最低限の整備を行う」と説明している。北海道の千歳基地も同様に整備する。
 総事業費は3億円。那覇空港にある既存の空自駐機場を重い航空機でも対応できるようコンクリートで舗装する。
 那覇基地所属のF4ファントム戦闘機は老朽化のため、08年度中に百里基地(茨城県)のF15戦闘機部隊と入れ替える。空自は「F15航空部隊の展開と今回の空中給油機の整備とは関係ない」と否定している。

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後は、下地島空港、宮古島空港の基地化ですね。

2008年7月28日 (月)

自衛官の結婚式

先日、知人(自衛官ではない)の結婚式に出席しました。
そこで、突然ではありますが、今回は自衛官の結婚式について書いてみます。

自衛官の結婚式の中で、一般の方と最も異なる点は、やはり制服です。別に決められているわけではないですが、制服を着る者がほとんどのような気がします。

最大のメリットは、やはり目立つ事です。普通の方には出来ないことなので、着ているというだけで非常に目立ちます。
花嫁さんの服装が、白無垢、十二単、ウエディングドレスであれ、なんであれ、合わせる必要がないということもメリットです。
親戚一同にめったに見せられない自衛官としての姿を見せられる機会という事もあるでしょう。
一方デメリットは、やはり目立ってしまう事です。
結婚式の主役は2人ですが、やはり見せるという点ではふつう花嫁さんを立てるものです。しかし、制服を着ると花嫁さんを食ってしまいかねません。そのため、花嫁さんの方で、着てほしくないという方も居るようです。

制服にも、着方がいくつかあります。結婚式の場合、自衛隊の式典などでする通常の礼装で済ます事もありますが、多くの場合は儀礼用の服装を着ます。飾りの付いた階級章に、肩にはモールを付け、サーベル(儀礼刀)を下げます。制帽もモール付きです。
通常の礼装は、単に白手袋をはめるだけなので、自衛官全員が持っていますが、儀礼用の服装は、将官か副官でもなければ持っていません。
(音楽隊も似たような服装ですが、あちらは音楽服(演奏服?)と言うようです。)

そこで普通はレンタルすることになります。
レンタルは、市ヶ谷駐屯地内に売店を構え、私物の制服販売なども行っている美玉(みたま)さんという業者さんが独占的に行っています。一式10万円ほどだったでしょうか。サーベルなどの小物を含めての値段なので、妥当なとこだと思います。
美玉さんは、基地などにある厚生施設にパンフレットを置いているだけで、HPもありません。確認したわけではないですが、一般の方への貸し出しはしてないのでしょう。

ちなみに私も美玉さんから借りました。
この時にモールを付けた経験などは、その後もちょっぴり役立ちました。

制服の他には、自衛官だからといって特別な点はあまりありません。
入隊直後の教育課程同期などとは、非常に濃密な付き合いをしている場合が多いので、スピーチなどで強烈な暴露があったりする程度でしょうか。
余興などが下品になりがちなのは、K官やS官も同じかもしれません。

最近では、現職のまま結婚する女性自衛官も多いですが、結婚式に制服を着た女性自衛官という話は聞いたことがありません。
美玉さんでもレンタルの品があるのかないのか、現役時に聞いてみれば良かったとちょっぴり後悔しています。

2008年7月26日 (土)

陸上基地は脆弱か?(空母保有論議 その3)

陸上基地は、開戦劈頭に弾道ミサイルや巡航ミサイルによる攻撃によって使い物にならなくなるため、空母を保有すべきだという論があります。
攻撃を受ける可能性があることは当然ですが、自衛隊とて座して見ている訳はありません。艦隊が防空能力をもっていることと同様に、弾道ミサイルや巡航ミサイルに対する防御力を備えるとともに、損害を受けた施設を復旧させる能力を持っています。

弾道ミサイル攻撃に対しては、ご存じの通りイージスとパトリオットが対処します。沖縄に所在し、パトリオットを運用する第5高射群には、現在のところPACー3が配備される予定はありませんが、先島や那覇を弾道ミサイルから防衛する必要が発生すれば、PACー3を運用する高射群が展開することになるでしょう。高射群は各5個の発射機を運用する4個の高射隊から構成されるため、PACー3ミサイルを最大限調達保有したとすれば、極めて短時間に集中して発射された弾道ミサイルに対して、1個高射群が320発のPACー3ミサイルをもって迎撃できることになります。(また当然、ミサイルの再搭載も可能)

中国は、先島を攻撃できる弾道ミサイルとして、東京までも射程に入る中距離弾道ミサイルのDF-21を百基以上保有している他、主に台湾用と言われるものの、海岸近くに配備すれば先島まで到達させられると思われるDFー11AとDFー15を千基前後保有しています。
さすがに、これだけの数をすべて先島に投入されたら、イージスやパトリオットがあっても、基地は相当の被害を受ける可能性がありますが、日本がノドンやテポドンに備えるためにすべてのイージスやパトリオットを投入できないのと同じように、台湾が中国に併合されない限り、すべてを先島に振り向けることはできないでしょう。
先島に対する弾道ミサイル攻撃については、いずれもっと突っ込んだシミュレーションをしたいと思います。

巡航ミサイルに対しては、パトリオットに加えて、陸自の中SAM、そして次期基地防空火器も対処にあたります。
防衛省がどの程度の脅威評価をし、どれだけの部隊を先島や那覇に展開させるかは分かりませんが、1個護衛隊群が有するよりもはるかに濃密な防空火網を構成できます。

ミサイルが防空火網を突破し、被害が発生した際には、施設隊を中心とした被害復旧が実施されます。飛行運用に最も支障の発生するランウェイが損傷した場合には、3Rマットなどを使用した応急措置が講じられることになります。また一部の特殊な飛行場を除けば、それまでの間も、タクシーウェイを利用した離着陸は可能です。
修復に要する時間は、損傷の度合い次第ですが、離着陸を可能にするだけなら、かなりの短時間で復旧します。施設隊は、模擬の滑走路を実際に爆破し、修復する訓練を毎年実施しています。

「日本海クライシス2012」で描いたような地上の脅威、対物狙撃銃、対戦車ミサイル、ロケット砲や迫撃砲での攻撃はやっかいです。しかし、陸自による対処が可能であれば、潜入できる兵力規模には限りがあるでしょうから、それほど時間を用さずに排除できるはずです。
場所が先島であれば、潜入自体が極めて困難ですし、離脱はまず不可能の決死任務になります。さらに下地島の場合は、民家も少ないため、攻撃可能位置に接近することさえ不可能でしょう。
逆に那覇の場合は、飛行場を見下ろす位置に多くのマンションなどがあるため、排除には少々てこずるかもしれません。

陸上基地が敵の攻撃に対して脆弱か、あるいは抗たん性が高いかという問題は、敵が基地を攻撃できるミサイルをどの程度保有しているか、また空母保有論議を前提とした場合、艦隊の防空能力とも関わってくるため、一概に述べることは困難です。ですが、攻撃する側からすれば、陸上基地への攻撃は、艦隊を攻撃するよりもはるかに高いコストをかけなければならないことは確かです。

2008年7月22日 (火)

空母による防空(空母保有論議 その2)

空母を海上の航空基地と考え、尖閣など離島上空での航空優勢確保に使用するという考えている方がかなりいらっしゃるようですが、空母での防空は非常に困難です。それがたとえ軽空母ではなく正規空母でもです。

2ちゃんねる軍事板での論議でも、分かっている方は防空で空母を使用しようとしている段階で否定しますが、空母は攻勢作戦では非常に強力ですが、防空での能力は陸上の航空基地とは比較になりません。

その理由は、一言で言えば、一定時間内にさばける航空機の発進(発艦)、帰投(着艦)処理能力の差です。
発進(発艦)について見れば、陸上基地では、2機編隊での編隊離陸を続けざまに実施できますが、空母では一機づつカタパルトを準備して発艦させなければなりません。着陸(着艦)については、陸上基地では、ブルーインパルスなどのアクロバットチームが最後の演目として見せるコンバットピッチを思い出して頂ければ分かりますが、編隊が一気に着陸できます。方や空母では、アレスティングフックを利用して着艦するため、一機着艦させるたびに着艦機を移動させ、ワイヤーを準備してし直さないとなりません。
それに加えて、空母は甲板上の絶対的スペースが不足しているため、防空では非常に重要な再発進の能力が、陸上基地とは大差があります。具体的には、射耗したミサイルを再搭載し、燃料を補給する作業ですが、陸上基地では広いエプロンを活用して飛行隊ごと作業することも可能ですが、空母では数機の再発進準備だけでも大変な混乱になります。

攻勢作戦では、発艦と予定どおりならば着艦も計画どおりに実行できます。そのため、空母の発着艦能力に合わせて作戦を組むことが可能ですが、防勢作戦では、基本的に敵の侵攻状況に合わせて動かなければならないため、空母の発着艦処理能力がネックとなってしまうという訳です。

敵の規模が、空母での発着艦処理能力の範囲ならば、防勢作戦でも遂行は可能です。しかし、尖閣諸島などで相手をしなければならないと見られる中国空軍は、量だけではなく、今や質においても自衛隊を凌駕しそうな状況です。同じコストをかけるのであれば、先島の戦力発揮基盤を充実させるべきです。

2008年7月21日 (月)

自衛隊広報施設 渋谷 「自衛館」

今回は、少し趣を変えて、自衛隊の広報について書きます。

広報に力を入れている防衛省では、練馬(陸)、呉(海)、浜松(空)の3箇所に大掛かりな広報施設を作っている。
だが、これだけではありません。
渋谷の街中に自衛隊の広報施設があることをご存知でしょうか。
その名も「自衛館」という。
今回、その「自衛館」を訪れてみたので、そのレポートをまとめる事にしました。

場所は、渋谷駅から徒歩1分ほど、東口前の宮益坂交差点を宮益坂方面に10mほどの位置にある。
センター街などとは向きが異なるものの、渋谷駅至近だ。
良くこんな場所に土地を借りる資金があったもんだと思う。
ただし、面積は非常に狭いし、入り口も目立たないので、探しながら歩かないと通り過ぎてしまう。
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宮益坂から駅方面を見た写真。小さな袖看板、しかも白で目立たない。

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近づくとこんな感じ。

外から見ると、制服を着たマネキンが目立つが、ぱっと見た感じでは「自衛隊」という雰囲気はない。
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自衛隊オフィシャルスペースだそうだ。
ドアは開け放しだし、明るい雰囲気。
このへんもアウトソーシングしたことがプラスになっている。自衛官が作ったら絶対にこんな雰囲気にはならないだろう。

中に入ってみると、模型やDVDを展示したショーケースに、ビデオを流すディスプレー、自衛隊のサイトにつないだパソコンなどが置いてある。
ラックには入隊案内などが入っている。
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ここに置いてある制服は、自由に着ることが出来るようで、制服を着て撮影した記念写真が張ってあった。
子供以外は、みんな少し気恥ずかしそうだ。
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やっぱり最も多いポーズは敬礼だった。素人の敬礼でも、制服を着るとそれなりに見える。
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撮影用の各種服装。迷彩服なども用意されていた。
ここの目玉は、やはりこの服を着て写真を撮れるという点だろう。
単に服を着せるだけでなく、背景用のシートを用意したスタジオを併設するくらいすれば、かなり受けると思う。
小道具のモデルガンなども置いておけば良いのに。

正直言って、これと言ったモノはないが、これだけのスペースでは仕方なかろう。
奥のカウンターに2人のお姉さんが居たので話を聞いてみた。
まずは、観客の入りを聞いてみると、平日で30から40人、休日では100人近くになることもあるそうだ。予想よりは多い。
7月1日にオープンし、その時のセレモニーがニュースになったので、それを見て来た人が多いと言っていました。
この数を維持するには、定期的に展示物を入れ替えるなどしないと、難しいんじゃないかな。
(上に書いた、スタジオ案なんか悪くないと思うが)

若者が多いと言われる渋谷に設置したという点から、この広報施設の主目的が、新隊員のリクルートだろうと思っていたのですが、2人のおねえさんに聞いたところ、そうではないらしい。
自衛隊の活動を広く知ってもらうためという、極めて一般的な目的だそうです。
まあ、確かに、練馬(朝霞)、呉、浜松の広報施設は、地元民でない限り、興味のある人しか行かないだろう。
ブログで取り上げられるなど、口コミで話題になれば、渋谷に遊びついでに寄る人も多いかもしれない。

2人のお姉さんを一見して分かったが、ここの施設は、維持管理をアウトソーシングで部外に発注しているようだ。
確かに、日に数十人しかない来客の相手に、専門的教育の必要な自衛官を貼り付けておくのはもったいない。
マニアが来ることを考えた広報施設ではないようなので、これでも十分なんだろう。

自衛隊の制服を着てみたい!
という方は、是非一度行って見てください。
もちろんタダ(カメラは持っていけば撮り放題)
自衛隊を就職先の候補に自衛隊と考えているけど、地方本部(昔の地連)に行くのはちょっと・・・と尻込みしてしまう人も、専門のリクルーターが居るわけではないので、気軽に足を運べると思います。

2008年7月19日 (土)

空母保有論議 その1

以前に一度書きましたが、「しらね後継は軽空母」スレで空母保有についてたびたび話が出ています。スレッド名がスレッド名なので当然かもしれませんが、時に空母厨と呼ばれるような、とにかく空母欲しい!という方が多いようです。

何度かレスを付けているのですが、スレッドの流れの中での話で、そのまま転記しても良く分からないと思います。
なので、要点を抜き出して、要点毎に何回かに分けて書こうと思います。

第1回目は、いきなり結論から書きます。
現状の防衛環境では、当面の空母保有については反対です。
日本が湾岸戦争のような戦争に積極的に関っていくのなら、空母は戦力の投射のために非常に有効なので、空母保有も検討すべきでしょう。ですが、そこまでしなくても有効な国際貢献はいくらでもできます。

それよりも、中国が異常とも思える急速な軍拡を進めている以上、日本はそれを押さえ込むために有効な戦力を効率的に整備すべきです。
具体的には、中国による台湾や尖閣への侵攻、日中中間線を越えた場所での強引な油田開発など、日本を含む周辺国との問題を中国が軍事力によって解決しようとする場合の対応力の整備ということです。

これらの事態に対して、空母が役に立たないというわけではありません。
ですが、空母による効果と、空母を整備するためのコストを、これらの事態により有効に対処できる能力の整備に当てることを考えた場合、空母の保有は非効率だと言うことです。

これらの事態が発生した際、日本が対処しなければならない中国の戦力は、空軍と海軍、そして中国では第2砲兵と呼ばれる弾道ミサイル、加えて尖閣に上陸する小規模な陸上戦力です。

この中で、弾道ミサイルは、沖縄本島を含む日本本土に使用することはないでしょうから、先島諸島に対する攻撃だけ考慮しておけば大丈夫でしょう。もし那覇に弾道ミサイルを撃ち込むようなことをするならば、アメリカに大々的な攻勢をかけてもらう必要が生じ、中国もそれは望まないはずだからです。

日本は、対潜能力については相当な能力を持っていますから、これら事態に対処するためには、防空と対水上攻撃能力を強化してゆかなければならないでしょう。そして、日本が防衛力を行使したい範囲を考えると、そのための戦力発揮基盤としては、どうしても宮古島、下地島が必要になります。

下地島と宮古島の空港がどうしても使えないとなれば、空母の保有も考えて行かなければならないでしょうが、今は沖縄の人も、自衛隊に対しては相当理解して頂いてます。
詳しくは別の機会に書きますが、下地島と宮古島を戦力発揮基盤とすることは、理解して頂けるだろうと思います。

台湾や尖閣などの問題から中国と衝突することになる場合、この2島を基点に、強化した航空戦力を展開できれば、空母を保有するよりも余程効率的に活動できるでしょう。

2008年7月16日 (水)

アメリカが北朝鮮のICBM開発に備えてMD強化

今日もニュースねたです。(読売新聞配信)
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米国防総省ミサイル防衛局のオベリング局長は15日の記者会見で、北朝鮮やイランが米本土に到達可能な大陸間弾道弾(ICBM)を保有した場合に備え、ミサイル防衛網を強化する考えを表明した。 イランについては、情報機関の分析として、早ければ2015年にも米本土を射程に収める大陸間弾道弾を開発するとの見通しを示した。

 具体的なミサイル防衛網強化策として、アラスカ、カリフォルニア両州に配備済みの計24発の地上配備型迎撃ミサイルを、年末までに30発に増強。また、海上配備型迎撃ミサイルSM3を搭載できるイージス艦も、年末までに15隻から18隻に増やすという。
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アラスカ、カリフォルニアのGBIと言ったら、どちらかというと位置的に北朝鮮に対する警戒です。
イランと海の位置関係を考慮すると、イージス艦にしても、対北朝鮮を意図している可能性が高いと思えます。
普段のアメリカの行動は、比較的イランに目が行っているように見えるのですが、今回のニュースは北朝鮮警戒のようです。
こんなニュースが流れるところを見ると、北朝鮮のICBM開発について、アメリカは何か情報を掴んだのかもしれません。

いよいよ、「日本海クライシス2012」で描いたことが、現実化してきているのかもしれません。

日本政府 F-35の情報照会 F-X選定問題

F-X選定問題で、日本政府がF-35の情報照会をするだろうという米軍高官の見通しが記事になってました。ここのところ、F-35に限らず、タイフーンなどの観測記事も多いので、この記事の信憑性などについては、コメントしてもしょうがないでしょう。
ただし、F-35の名前が上がってくるとなると、他の機体と違って疑問符が付きます。

F-35は、JSFとして開発されている機体で、攻撃機に区分される機体です。もちろん、現在F-X候補に上がっている機体は、全てマルチロール性があるため、従来の機体に比べたらはるかに高い対地攻撃能力があります。それにしてもF-35はその性格が強すぎるのです。
今選定中なのはF-Xだったはずなのですが、いつのまにかFSX選定になってたのでしょうか?
もし、本当にF-35を候補にするとしたら、空幕は自衛隊が軍隊ではないという証明と同じような作業をしなければならないでしょう。

F-35は、F-22と同様に第5世代機なので、強ければいいんじゃないかと思う人もいるかもしれません。しかしF-35は、日本が必要としている能力の一つが、非常に欠けているのです。
日本がF-XをFI(迎撃機)として選定してしている以上、侵攻機を迎撃するため、そしてその会敵のためには、それなりに速度性能が必要です。ところが、まだ開発中のため、最終的にどうなるかは未確定なものの、F-35は音速を超えられない亜音速機になるかもしれないと言われるほど鈍足です。スクランブルしたものの、間に合わなかった、という事態になりかねないというこことです。

もともとF-4型機の後継ということですし、現在F-4を運用している飛行隊にはFS任務の部隊もあるくらいなので、FSとして選定してしまっても良いのかもしれません。
しかし、そのためには大綱や中期防も修正しなければならないかもしれない。もし本当にF-35が俎上に上がってくるなら、空幕は本音以上に、建前で苦労することになるかもしれません。
でなければ、F-2にAAM-4運用能力などを持たせて、FI化するのかも・・・

2008年7月14日 (月)

パトリオットPAC-3の弾道ミサイル迎撃実験

先週の金曜日、時事通信にパトリオットPAC-3が弾道ミサイル迎撃実験を行うというニュースが流れた。
まずは、その引用から
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 防衛省は11日、弾道ミサイルを地上で迎撃する地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)の発射実験を9月に米国で行うと発表した。PAC3は、日本の弾道ミサイル防衛(BMD)の要で、既に首都圏などの航空自衛隊基地に配備されている。空自トップの田母神俊雄航空幕僚長は同日、「発射実験により、日本のBMD対処能力を内外に示すことができる」と話した。
 同省によると、発射実験は9月15日の週に米ニューメキシコ州の米軍ホワイトサンズ射場で行われ、空自高射教導隊(浜松市)の機材が持ち込まれる。米軍が撃つ模擬弾を標的にPAC3を2発発射するという。
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昨年、入間基地にある第1高射群の指揮所運用隊、第4高射隊に配備されて以降、順次配備の進むPAC-3ミサイルですが、やっと実弾射撃の運びになったようです。
高教隊が実施するとのことなので、実験というか、運用研究の一環という位置付けですね。
最初の射撃なので、失敗する可能性のある射撃はしないと思いますが、どんな模擬弾をどんなプロファイルで飛行(落下?)させて実験するかが興味の沸くところです。
パトリオットの初期型(スタンダード)でも実験していたくらいなので、ランスミサイルを標的にすればよもや失敗しないと思いますが、米軍もいままでランスは保管していないと思うので、何を標的にするのか?
手軽に使えるとしたらAQM-37Cになりますが、う~ん。
今後のニュースを待ちたいと思います。


AQM-37Cについては、こちらをご覧下さい。

http://www.designation-systems.net/dusrm/m-37.html

2008年7月13日 (日)

日本海クライシスの現実化

イランのミサイル発射などで、アメリカを始めとする世界の耳目が中東に集中している。その一方で、北朝鮮のテロ支援国指定の解除が進められている。

この流れが継続すれば、北朝鮮は確実に力を付けるだろう。
「日本海クライシス2012」に書いた内容が現実化することを願っては居ないが、このままでは本当に現実化してしまいかねない。

実用化、小型化にはまだ難があるはずだが、北朝鮮は核実験を成功させ、核弾頭製造能力の下地があることは証明している。テロ支援国指定が解除されれば、工作機械などの入手は容易になり、ミサイル開発能力は間違いなく進展する。

2012年頃には、本当に米国まで到達するミサイルを製造してしまいかねない。予言的作品を書いたものの、現実化してしまうことはゴメンだ。

それまでに、作品中で描いた自衛隊の弱点だけでも、補強されることを期待したい。

2008年7月12日 (土)

巡航ミサイルを落とせるミサイルなら弾道ミサイルも落とせる?

初心者歓迎スレに、次のような質問が出てました。
>AAM-4は対艦・対地巡航ミサイルの迎撃も重視してると、聞きましたが弾道ミサ>イルはどうでしょうか?
>もし、有効だとしたら弾道ミサイルを迎撃する際にAAM-4を装備したF-15を飛ば>すのも一つの手では?

何人かの方が、弾頭ミサイルは速度が速いので無理と答えていました。
もちろんそのとおりなのですが、あっさり答えすぎで、納得できないのではと思い、次の通りに答えました。

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他の方の回答にあるとおり、AAM-4は弾道ミサイルには対応していません。

対艦・対地巡航ミサイルは、低高度を飛行し、RCSが小さいという特徴はあるものの、プロファイルは航空機と大差ありません。
そのため、AAM-4に限らず射撃可能な体勢に占移できれば、他のミサイルでも対艦・対地巡航ミサイルは迎撃できます。
しかし弾道ミサイルは、プロファイルが航空機と全く異なる(特に速度)ため、通常のAAMでは迎撃できません。

速度が高いだけで迎撃不能になる理由も他の方の回答のとおりですが、若干補足します。
相対速度差が高いとちょっとした誘導誤差でも、最接近時の距離が大きくなってしまいます。
それを解消するため、PAC-3などではヘッドオンで誘導されますが、弾頭の起爆による破片効果での破壊では起爆タイミングがシビアすぎるため、直撃を前提に超高精度、高反応速度に作られます。
結局、通常のAAMとは別物にならざるを得ないということです。

米軍ではMEADS用のミサイルを空中発射に改造したALHTKというものを研究中のようなので、将来的にF-15がBMDの一翼をになう可能性はあります。
>なお、ALHTKに改造するミサイルはMEADS用で、PAC-3には使用できないものです。

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ALHTKが実用化されても、弾道弾を待ち構えてCAPをし続けるのは大変です。

2008年7月10日 (木)

出版:より多くの方に読んでもらうために

サイトで小説を公開し始めてから約2ヶ月になります。おかげさまで累計2千名以上の方に訪れて頂きました。予想以上の方に見ていただいたのですが、一般の方の防衛問題への理解を深めたいという目的からすれば、もっと多くの方に読んで頂きたいと思っています。

そこで、ドリームブッククラブに登録することにしました。ドリームブッククラブとは、読者支援で出版化を目指すオンライン読み物サイトです。
と言っても、なんのことなのか分からないと思います。私も最初にサイトを見た時には、???でした。
アルファポリスという出版社が開設しているサイトなのですが、このサイト内において登録された小説などを公開し、読者からの投票結果などから、紙メディアでの出版化を検討するというものです。(「日本海クライシス2012」は、全く同じ内容で公開しております。)
読者は、作品を気に入った場合、出版化された際に購入することを予約する購入予約、出版化された際に印税の一部を受け取る出資、それに純粋に応援だけを行う携帯投票によって作品を支援し、支援が一定のポイントになると、出版社であるアルファポリスが最終的に検討を行い出版をするというものです。
詳しくは、ドリームブッククラブの利用ガイドをご覧下さい。

アドレスは、こちらです。
http://www.alphapolis.co.jp/dream.php?ebook_id=1012082

価値観が多様化し、出版社としても何が売れる作品なのか判断が難しいところを、読者投票で可視化し、出版化しようという試みのようです。出版社としては、いろいろな作品を掘り起こしたいが、リスクは回避したいということでしょう。
そういう意味では「日本海クライシス2012」も、一部の方(ミリタリー・ファン?)には読んで頂けている作品なので、方向性は合致していると思います。

白状をしますと、オンラインで公開する前にも、実は何社かの出版社に持ち込んでおります。今流行の協同出版をする出版社だったのですが、作者である私も費用負担を求められるわけです。もちろん、多少は負担しても良いとは思っていたものの、もっとも少ない負担額提示をしてくれた出版社でも100万ほど必要だったため、断念しました。(個人的にそれほど経済的余裕がなかったので・・・)
ただし、作品の分量も勘案すると、100万という金額はかなり少ない負担額だったようです。全く偶然ですが、その会社の社長さんが自衛隊OBだったのです。そのため、一定数の販売は見込めるだろうということで、私の負担分を少なくしてくれたということでした。負担額の多い出版社では、なんと250万円以上の金額が提示されてました。

「日本海クライシス2012」を気に入ってくれた方は、是非ドリームブッククラブで応援をよろしくお願いします。

ブログの方は、これからも防衛問題の理解に役立つ記事を書いていこうと思います。

2008年7月 8日 (火)

F-22ラプターなら20機で十分か?

次期F-Xについて考えるスレで、20機(人によっては10機)のF-22を導入すれば、中国のSu-27を壊滅させられるから、20機で十分という意見が出てました。
その辺を理解しない空幕はバカだとまで言われてます。
約200機のSu-27に対して、F-22とSu-27の戦力評価が10:1だからという理屈なのですが、先日のブログ記事にも書いたとおり、交戦条件が全く考慮されていない意見だったので、次の通り書きました。

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10機や20機で十分という話になってますが、F-22と言えども20機では足りませんよ。

空幕は、基本的に今の防衛政策の中で検討をしているので、中国相手でも防空を基本で検討しているでしょう。スホーイが増強されているので、翼下にミサイルを付けないステルス形態で出撃するとすれば、アムラームCでも6発しか携行できません。
百発百中だったとしても1ソーティで120機しか落とせません。

中国も200機同時は無理としても、防空で何度もターンアラウンドするのは無理です。
となると、こちらもF-15があるとは言え、中国もMig-21やJ-10なんかを混ぜて攻撃されたら、F-22は間違いなく地上で破壊されます。

米軍みたいに、基本的に攻勢で作戦をするつもりなら、リスクが高い際は逃げればOKなわけですから、それこそ20機でも敵軍を壊滅させられるでしょうけど、防空では10:1だから大丈夫というわけにはいきません。

空幕はそんなにバカじゃないですよ。
でも、購入できるのなら、20機だけでもF-22という案自体は良いと思います。下地島にF-15を置いて、F-22は那覇に置けば、こちらもうまく戦力の集中ができます。

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20機は、十分な戦力ではありませんが、十分に戦力になります。
この論議の発端は、とりあえずタイフーンを購入しておいて、アメリカ議会の承認が下りたらF-22を20機購入というものでした。
戦力を考える上では、案自体は悪くないと思いますが、タイフーンとF-22の両方導入は実現性が薄いように思えます。まあ20年も先の話ならわかりますけどね。

2008年7月 7日 (月)

北朝鮮特殊部隊の隠密潜入用航空機

初心者歓迎スレに、An-2についての質問と思しきものが出てました。

>北朝鮮空軍の作戦機は概して旧式で中には複葉機まで存在し
>これは飛行速度が非常に低速なのでレーダーで探知できずミサイルも当たらい
>と聞いたのですが本当ですか?
>これに攻められたら(主に輸送機として使う模様)韓国はひとたまりもないとか・・

ところが、
「嘘、レーダーにも映るし、ミサイルも当たる」
というような、かなり乱暴な答えがされてました。
また、当該機体がAn-2であることや、最近まで製造されていたことは書かれていたのですが、それだけだったため、次のように補足してます。
An-2について詳しいスペックなどを知りたい方は、Wikiにも情報があります。。

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全く探知されないわけでも、ミサイルのロックオンができないわけでもないのはその通りですが、
レーダー波を反射する部分がエンジン部分くらいしかない(他は木や布なので反射率が低い)ため、機体サイズに比べてRCSが小さいことは事実

非常に低速なためドップラーレーダーではクラッタと誤認されて消去される可能性があるため、対空レーダーでは探知困難なことも事実
(逆に対地上レーダーや対水上レーダーは捕捉しやすい)

また、農業用としても使用(日本国内ではヘリが行っている農薬散布など)されるほど、それこそ地を這うように飛行できるため、レーダーマスクに入りやすく、探知困難なことも事実

というわけで、危惧されているように、開戦劈頭にゲリコマの侵入用として使われると、かなり厄介な存在です。

ついでに、 離着陸性能は1次大戦時の航空機と同等なので、 道路はおろか、牧草地などでも離着陸可能、というわけで、多少の重火器も携行させられます。

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乱暴な回答は要注意です。
今後もウォッチしてゆきます。

2008年7月 6日 (日)

単純なシミュ結果でF-X選定はできない

「次期F-Xについて考えるスレ」に各候補機の戦闘シミュレーションの結果が転載されていました。


>米国が実施したSu-27/Su-35との戦闘シミュレーション結果(被撃率)
>U.S. F-22 10.1 : 1 (10.1 Su-35s lost for each F-22)
>European Typhoon 4.5 : 1
>French Rafale 1.0 : 1
>Russian Su-35 1.0 : 1
>U.S. F-15C 0.8 : 1
>U.S. F-18D 0.4 : 1
>U.S. F-18C 0.3 : 1
>U.S. F-16C 0.3 : 1


>イギリス防衛評価研究所(DERA)の試算
>---------------------------------
>改良型Su-27(Su-35相当)との性能比較
>F/A-22 "Raptor"        9:1 - 10:1
>Eurofighter Typhoon       3:1 - 4.5:1
>F-15 modernisiert(J改相当) 1.5:1
>F-15E "Strike Eagle"     1.2:1
>Rafale               1:1
>F-18E/F "Super Hornet"   1:1.2 - 1:3
>F-15C "Eagle"(pre相当)   1:1.3
>Gripen               1:1.5
>F-18C "Hornet"         1:3.8
>F-16C "Falcon" (Block 40)  1:3.8


ソースはコチラ
http://www.airpower.at/flugzeuge/eurofighter/faq.htm
http://www.eurofighter-typhoon.co.uk/Eurofighter/tech.php


妥当性が怪しいことは、みなさん分かっているのですが、議論の大勢は、概ねこんな所だろう、という感じでした。
加えて、正確な型(A型とかC型という型の種別、型が違うと戦力は全く別物ということがよくある)が分からないと、比べられないと言う意見と、交戦条件も分からないと、という書き込みがありましたが、詳しくは言及されていなかったので、次の通り書き込みました。


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型の事は別の方が書かれている通りだと思いますし、それ以上に交戦条件が重要でしょう。
仮にデータが正しいとしても、基本的に次の条件下でのことだと思います。
・同数
・同高度
・残燃料共に十分
・管制支援共になし(or共にあり)
・許容リスク同等(どれだけ危険を冒して敵を撃墜しに行くかということ)


で、当然ですが実際にはこんな戦闘は起こらないでしょう。
自衛隊は基本的に防空なので、仮に中国が相手だとすると、中国がAWACSの運用をてこずっている(いろいろ購入したり開発したりしているが苦しんでいる模様)間は、GCIやAWACSの支援を一方的に受けられることになります。
一方、状況としてはストライクパッケージのスウィーパーやエスコートを相手にしていることが予想され、当然早く攻撃機の対処に向かわざるを得ないため、リスクの高い戦闘を強要されます。


とすると結論は、
防衛省が持っているシミュレータとかで実際に敵の侵攻シナリオを流さないことには、サッパリ分からない
となってしまうように思います。
シミュ結果は当然秘密なんでしょうが、F-Xの選定問題は、今後の防衛環境のカギになるはずです。


防衛省には、ある程度の条件と結果を公開して機種選定をする義務があると思います。


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これに対して、「本土防衛なら異論はないが離島防衛となるとどうだろうか。」という疑問が出されていました。
良い質問だと思います。
で、次のように回答しました。


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条件が異なるので、当然結果は違ってくると思います。


たとえば尖閣を巡る争いのシナリオにしても、飛行場が那覇なのか、あるいは下地島なのかでは、航続性能や巡航性能まで結果に関ってくるため、全く異なる結果になると思います。
基地が那覇なら、F-22かせめてタイフーンでないと、とてもまともな結果は出ないような気がします。


単純に尖閣上空の航空優勢確保が目的なら、リスクを犯す必要性は低いですから、防空以上に機体の性能差が極端に出るように思います。
しかし、上陸した陸上部隊や、海自艦隊が近くにいるケースでも、また結果は異なるのではないでしょうか。
海自艦隊の護衛ならば、それこそ中国沿岸まで接近しなければならないかも知れません。


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防衛省自衛隊の中には、「防衛問題の細かいところは専門家に任せろ」的な雰囲気が強いように思います。
もちろん、本当に専門的な部分はそうなるのですが、F-X選定は日本防衛のドクトリンを如何するかにも関ってくる重要な問題です。(これからも防空オンリーを続けるか否かなどの点)
広報は、装備や訓練風景を見せるだけでは不足なハズです。
そういう思いもあって「日本海クライシス2012」を公開しています。


また、このレスポンスに対して、「離島はイージス艦を派遣しておけば簡単に制空権を確保できる」という書き込みがされてました。基本的に知識不足だと思いましたが、多数の方から「そんなの無理」的な書き込みがあったので、私自身は何も書きませんでした。
ご要望があれば、ブログの中ででも書きます。
また、「日本海クライシス2012」の中でも、イージスの防空能力について、いくらか触れています。

2008年7月 5日 (土)

自衛隊内における戦車無用論

前回のブログで、戦車無用論とは何かという点と、私見について書きました。
今回は、自衛隊の中で戦車無用論がどの程度勢力を持っているかについて書いてみます。
まず、最もかかわりのある陸自ですが、私が見てきた限り、陸自においても既に戦車無用論はタブーではありません。
雑談レベルならば、機甲科の人間がいても話されることがあります。
その方向性は、私の考えとほぼ同じで、陸上戦力としての戦車は認めているものの、果たして日本の国防に役立つ場面がどの程度あるのか疑問とするものです。
大規模な機甲戦力による衝突よりも、市街地内でのテロ、ゲリコマ対処の蓋然性の方が高いことから、世界的にもストライカーなど装輪戦闘車が脚光を浴びています。
日本でも機動戦闘車や近接戦闘車など将来装輪戦闘車の開発が進められていますが、その背景には戦車無用論が少なからずあります。
(もっとも、議論はされながらしっかりTK-Xが開発されるなど、日本は思想を切り替えることが非常に下手です。これは別の機会に書きたいと思っていますが、自衛隊が持っている組織的弊害の一つでしょう。)
また、方面隊毎に雰囲気も違うようです。多くの機甲科を抱える北方では、あまり表立って語られることは少ないですが、離島における対処などに軸足を移す西方では、図上訓練などでも機甲の出番があまりないことから、戦車に対する風当たりは強いようです。
次に海自ですが、残念ながら海自についてはそこまで承知していませんので、パスします。
で、最後に空自ですが、基本的に空自では、他幕(陸自、海自)のことが話題になることは少ないのです。
なぜなら、大規模な戦闘が発生する場合、最初に戦闘になるのは空自だという、自負も含んだ認識があります。
言い換えると、特に陸自は、空自が壊滅してからしか出番がなく、空自として助けてもらう部分はほとんどないと認識していると言えます。
(この点について、空自の認識が危険であることは「日本海クライシス2012」の中で指摘しています。)
大規模な戦闘では、たしかにそう言った可能性は高いでしょう。空自が壊滅し、敵がSu-25などの攻撃機で戦車狩りをする状況になれば、90式であっても射撃訓練の標的と化すしかありません。
そのため、大きな声では言わないものの、空自内では戦車に限らず、機甲、特科などは無用の長物の見る雰囲気が強かったと思います。
空自としては、(陸自の本格的活躍は航空自衛隊が壊滅した後なのだから)戦力の発揮基盤である基地をゲリコマなどから守って欲しいという希望があります。
その時にも、防御力は魅力であるものの、コラテラル・ダメージを考慮すると、とても戦車などは使えません。
この場合では、近接戦闘車クラスが最も使い易い車両になるため、戦車よりも装輪戦闘車が開発されることが望まれる所です。

2008年7月 4日 (金)

戦車無用論

戦車が必要のないものだとする戦車無用論(不要論)は、いろいろなところで語られています。今更と思われるかも知れませんが、「日本海クライシス2012」の中でも触れたので、簡単に解説したいと思います。

戦車不要論には、大きく分けて2つの流れがあります。
一つは、歩兵が携行したり、装輪戦闘車などに搭載される対戦車ミサイルや対戦車ヘリなど、戦車の防御力を絶対のものではなくする兵器の登場によって、金のかかる戦車のコストパフォーマンスが相対的に低下したことによるものです。
この論理には、もちろん一理あるのですが、攻撃力、防御力、機動力を兼ね備えた戦車は、現在でも大規模な陸戦の主役です。
多くの軍隊で、陸戦の主役として装備されていることからも分かりますが、感覚的に理解したい方は、是非、陸自が一般にも公開している「総合火力演習」を見に行ってください。
チケットが入手困難ですが、親戚の高校生をダシに使えば自衛隊地方協力本部(昔の地連)で用意してくれるかも。
総合火力演習は、毎年富士山の山麓にある演習場で実施されています。今年は8月24日の予定のようです。
その火力演習のなかでは、戦車砲の実射も対戦車ミサイルの実射も見ることができます。百聞は一見にしかずですが、戦車砲と対戦車ミサイルの最大の違いはその速度です。
戦車砲の砲弾(ちゃんと目で見えます)と比べると、対戦車ミサイルの飛翔速度は、まるでスローモーションです。両者が対峙した状況を想像してみれば良いのですが、たとえ双方が同時に射撃しても、戦車は射撃後に物陰に身を隠すことができますが、戦車砲を撃たれた側は、そんな余裕はありません。おまけに多くの対戦車ミサイルは、射撃後も誘導の補助をしてやる必要があります。
なんにせよ、とにかく一度ご覧下さい。チケットが手に入らない方は、DVDも出てます。

戦車不要論のもう一つの流れは、地理的・政治的環境を考慮すると、「日本には」戦車は不要だとするものです。
日本には大規模な戦車戦が行えるような場所は、北海道くらいです。冷戦時代には、ソ連の侵攻を食い止めるという、それなりに納得のできる理由があったのですが、現在は・・・・
またそもそも、日本の防衛のために戦車が戦闘を行う状況では、航空自衛隊も海上もほぼ壊滅状態のはずです。太平洋戦争でさえ本土決戦を回避したのに、現代で本土で戦車戦が生起するでしょうか?

ここまでの書きぶりで分かるとおり、私の考えは陸戦における戦車の有用性は認めるが、日本には必要ないというものです。
陸上自衛隊の装備は、領土的紛争がある離島での戦闘や対テロ、対ゲリコマ戦に有効に対処できるものにすべきだと思っています。
また、これらに対処するための武器は、将来的なPKO、PKFにおいても使いやすい兵器でしょう。
現在、次期戦車TK-Kの開発が大詰めになってますが、いままでの開発費を無駄にすることになっても、戦車の更新は避け、近接戦闘車の開発などに資源を集中するべきだと思います。

2008年7月 3日 (木)

空母と下地島

しらね後継は軽空母スレにおいて、尖閣などを理由に中国とぶつかった場合に下地島を活用する話題が出てました。
ただし、下地島空港が作られた本来の目的である民間機操縦者向けの訓練が多く、自衛隊が使えないのではという意見でした。また、種子島近くの馬毛島を使用する話題が出ていたので、次のように回答してます。
なお、もともと空母スレなこともあり空母の話題がかなりでてましたが、いろいろな面で現状では不毛な論議なので、ヘリ空母と言って差し障りのない「ひゅうが」についてのみ言及してます。

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下地島は、民間航空機の訓練需要がシミュレーターの発展などで伸び悩み、当初予定されたほど使用されていなかったはずです。
そのおかげで、補助金を当て込んだ自衛隊訓練誘致の話も出ていたはず。

種子島沖では、航空機の作戦基盤としては遠すぎると思います。
空軍力で比較すると、既に中国には量的にも質的にも負けている状況なので、作戦空域までの距離はせめて同程度でないと苦しくなります。
尖閣中国本土間と尖閣先島間の距離が同程度なので、下地、宮古、石垣を使うのがベストではないでしょうか?
(石垣は滑走路長を延長したいけど、環境問題などで難しそう)

ひゅうがが有効に機能するとすれば、先島、那覇(あるいは九州)間の輸送護衛ではないでしょうか。
先島を使うとすれば、補給線が生命線になるように思えます。

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下地島のことを知っている人も多少はいました。
その点では安心しましたが、空母保有が現実的だと思っている方が多いことに、ビックリしました。
下地島については、別の機会に詳しく触れたいと思います。

2008年7月 2日 (水)

トマホークでノドンハントができるか?

ミサイル総合スレに、巡航ミサイルでノドン(スカッド)ハントを行うという議論がでてました。
タクティカルトマホーク+センサーという論も出てましたが、誤解に基づく意見も多かったので、次の通り書き込みました。

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スカッドやノドンが、発射の直前に燃料注入しなければならないというのは間違いです。
燃料がケロシンなのかジメチルヒドラジンなのかは見解が分かれているようですが、スカッドは燃料を注入したまま保管、運用できました。
当然スカッドをベースとしたと見られるノドンやテポドンも、同じであると推測されてます。
参考:軍事研究07年9月号掲載の野木恵一先生の論考
(防衛省、自衛隊の中でさえ間違えている人が多数いるので、無理も無いですが・・・)

そのため、書かれている通り、タクティカルトマホークでなければ、ノドン(スカッド、テポドン)ハントには使えません。
おまけにタクティカルトマホークのコストだけでなく、ニアリアルタイム以上のデータリンクと偵察能力がなければTELは攻撃できません。
いくら数を増やしたところで、間隔をおいた偵察しかできない偵察衛星では、攻撃が間に合いません。
DSPやSTSSの早期警戒衛星は、ミサイルの発射後に赤外線を捕らえるものなので、こちらも当然間に合いません。

ノドンハントをするには、高精度なセンサーと指揮統制機能が必要になります。
できればE-8を使いたいところですが、防空機能が生きている状況では使えない(北朝鮮は山間地が多いので、洋上では無理)ので、グローバルホークの情報をAWACSで中継するなどして、航空機かタクティカルトマホークで攻撃するしかないでしょう。
おそらく一刻を争うことになるため、タクティカルトマホークの飛翔時間さえもどかしいのではないでしょうか。

先の話になりますが、完成さえすれば、センサーも攻撃能力も自前で持っているF-35がベスト

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これに対して、酸化剤が液体酸素なんじゃないか→発射直前の注入が必要なんではないかという趣旨のレスがあったので、次のように書きました。

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酸化剤は、抑制赤煙硝酸が使われます。
硝酸、四酸化二窒素、フッ化水素を加えたもので、酸化剤として機能する成分は、四酸化二窒素と硝酸になります。
金属腐食性、毒性があるため、扱いやすい物ではありませんが、常温保存可能でミサイルに注入したまま運搬できます。
当然、液酸ほど効率はよくありませんが、ケロシンの酸化剤としても使用可能です。

北朝鮮が輸入、リバースエンジニアリングしたとされるスカッドはCタイプで、
燃料・酸化剤は非対称ジメチルヒドラジン+抑制赤煙硝酸です。
スカッドを原型とするノドンでも同様だと見られています。
ちなみにケロシンを使用していたものはAタイプのみで、酸化剤は硝酸?(by Wiki、確かに硝酸だけでも酸化剤になりますが)だったようです。

http://www004.upp.so-net.ne.jp/weapon/irfna.htm

冷戦初期のICBMなどでは、ケロシン+液体酸素が使用されていたため、発射直前に注入作業が必要だったことは確かです。

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ノドン(スカッド)は発射直前に燃料注入するという誤解は、まかりとっているというよりも、大勢を占めているような気がします。(液酸について書かなければならないとまで思ってませんでした。)
余談ですが、数多くいる軍事評論家の中で、野木恵一先生はハードや理論をちゃんと分かっている数少ない方です。

2008年7月 1日 (火)

F-X選定における対地攻撃能力

「次期F-Xについて考えるスレ」で敵地での対地攻撃能力について話題が出てました。
ところが、F-Xについて考えるスレのはずなのに、敵地を攻撃するべきか否かというところにばかり論点が行っており、そのためならF-Xには何が良いかという方向に行っていなかったため、次の通りコメントしました。

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このスレでは空対空戦闘能力に論議が集中しますが、敵地攻撃を考えた場合、ラプターは他の機種に比べて抜きん出た能力があります。

搭載量が少なく、1ソーティで破壊できる目標数は限られるが、敵がS-300クラスの高性能長射程SAMを保有していても、高高度でスーパークルーズしつつ回避機動をすれば、命中弾はまず発生しません。
速度は少し下がるが、LO能力を高めたSR-71のような機体は、防空側からすれば極めてやっかいになります。

コストも考えた時、必ずしもラプター選定には賛成しませんが、敵地攻撃を行うつもりならば、ラプターは最良です。

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航空戦力の意義は、攻撃にこそあるんですが、航空ファンの興味は、空対空戦闘にあるようです。
SAMについてあまりにも知られていないということもあると思いますが、知らず知らずの内に専守防衛的な発想になっているという側面もあるように思えます。

また、この書き込みに対して、
スーパークルーズでSAMの無効化ができるのか?
という点と、
SAM撃たれている点でステルス能力が低いということなのでは?
という疑問が出されていました。

簡略化し過ぎて誤解を与えたようでしたので、次のとおり答えました。

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言葉足らずでゴメンなさい。
スーパークルーズだけでSAMの命中率を下げられるわけではありません。
高高度の高速旋回、退避がミサイル回避に有効と言いたかった訳ですが、 ラプター以外はこれを行うためにAB使用を余儀なくされます。
普通は残燃料との関係で無制限でABを使用するわけには行きません(防空側からすれば、撃墜でも燃料切れの墜落でも効果は同じ)が、ラプターでは必ずしもABを使う必要が無いってことです。

それとステルスについて
もちろんSAMを撃たれる時点で発見されているわけですが、ステルスの基本がレーダー反射を無くすわけではなく、反射方向を限定することが大きな要素なので、SAMの発射後でも、機体の姿勢を変化させるだけでも、SAM側は目標をロストする可能性があります。
(おまけに普通はチャフなどのECMも併せて実施されます)
レーダー反射波の強度も、(SAMレーダーと目標間の距離+目標とミサイル間の距離)の二乗に比例して低下するので、ミサイルから距離をとるように機動すれば、ミサイルシーカーのロックが外れる可能性も高くなります。

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SAM回避については、もう少し詳しく書きたかったのですが、スレ趣旨とは外れて来そうなのでこの程度に止めてます。
この後、スーパークルーズの意義について、板内で多少議論になってましたが、ちゃんと分かっている人も居たので安心しました。
が、????な意見も結構多く、航空雑誌もこういう観点のことをしっかり書いてほしいものです。他の能力と相まって、大きなアドバンテージとなるスーパークルーズなどについては、あまり書かれていないように思います。
そりゃ空戦能力や、相手の能力をゼロにもするステルスは、耳目を引きやすいんでしょうが・・・・
最後に、スレ趣旨と外れそうなので書かなかったSAM回避についての詳述部分を、せっかく書いたのにもったいないので載せておきます。

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高高度の高速旋回、退避がミサイル回避に有効ということには幾つかの理由がありますが、原理としてはSAMのロケットモーターが発生させるエネルギーを、効果的に消費させられるということです。
まず、高高度だと、高度を上げるだけでエネルギーを大幅に使用せざるを得ません。
次に高速度の旋回だと、たとえ角速度は小さくても、SAMにとっての予想要撃点は大きな距離を移動します。
逆に角速度は大きくても速度を大きく落とす高G旋回だと、機体の速度低下のためにSAMの予想要撃点はそれほど移動しません。
どの程度の旋回が良いのかは、航空機やミサイルの機種、速度、位置(距離)などによって異なるため、細かいことまでは言えませんが、コーナー速度を下回ってくれればSAMにとってありがたいこと間違いありません。
SAM(というよりミサイル全般)は、重量に対する翼面積の率が低いので、旋回による(速度)エネルギーのロスが大きいです。
ロケットモーター停止後に機動を続ければ、SAM(ミサイル一般ですが)を回避できる可能性は急激に高くなります。
(逆に言えば、ロケットモーターが燃焼中のミサイルを、機動で回避することは困難)

一応参考に
http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/9578/hum/hum5.html

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